マーケティング戦略

ハロウィンに「ギョーザの皮」が売れる理由: たべみるに見る市場ニーズのつかみ方

記事内容の要約

  • 検索・閲覧、購買などのネット行動は「本当にやりたいこと」の表れ
  • 「スピード」「高度な分析を簡単に」でデータ活用が活発化
  • ウェブの行動データが膨大に蓄積されることで、裏に潜む変化の兆しが捉えやすくなる
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クックパッドの検索は、「この食材/メニューが食べたい」「つくり方を工夫したい」など生活者のニーズにもとづいている。インターネット企業が持つユーザーデータは、ユーザー自身が自発的に「これをやりたい」と思った気持ちの現れなのだ。こうしたデータが日々蓄積されることで、実際のリアルな行動を見ているだけではわからない、市場ニーズの動きが見えてくる。

サンプル調査では見えない「生のニーズ」が見える理由

食品業界において、外部データの活用は1990年代からすでに行われていた。そこでは、世帯のパネル調査として「今日食べたもの」のログを延々と蓄積していた。実際に食べたメニューの記録であるため、POSよりも生活者の実態に近い。これにより、各企業はどんなメニューがどの時期に人気なのかを把握していた。

とはいえ、そこからわかるのは食べられたメニューでしかなく、消費者の食への興味・関心がどこに向いているかはわからない。たとえば「白米に合うおかずの提案」といった、より生活に密着したニーズは捉えられないし、前回の記事で紹介した「ハロウィンの時期に〈ギョーザの皮〉の検索が増える」という兆候もわからない。

たべみるの元となっている、月間ユーザー6,000万人を越える日本最大のレシピサイト「クックパッド」

クックパッド(外部サイト)

たべみるでそれが可能なのは、「クックパッドの検索データ」を基盤とするからだ。

そもそも「検索する」という行為自体、ユーザー自身の強い興味・関心の表れで、さらに世帯パネル調査はコストがかかるため、1,000世帯ほどのサンプルを集められれば良いほうだった。

この点、クックパッドのようなインターネットサービスであれば、全国津々浦々から自発的にデータが集まる。地域や年代、性別に関係なく、「この食材で何をつくればいいだろう」など、さまざまなニーズから検索する。そのニーズを知るには、検索に使われたキーワードを見れば良い。しかもその検索行動データは、日々蓄積されていく。

これがインターネットサービスを提供する企業が持つ「データの強み」だ。検索し、レシピなどの詳細情報を閲覧するというように、ネット上の行動はすべてその人のニーズから生じている。しかも、それが日々蓄積されることで集合知となり、数少ないサンプルでは見えない新たなトレンドの兆しが見えてくるのだ。

データ活用のポイントは「データの使いやすさ」と「処理スピード」

クックパッド株式会社 データビジネスグループ 中村耕史氏は、機会があればデータの持つ可能性を社内で説いてまわり、2013年の夏から秋にかけ、たべみるサービスのリニューアルに向けて経営層の合意を取りつけた。

実は、リニューアル前のサービスでは、蓄積された検索データの更新が年1回だったこともあり、リアルタイム性には乏しい状態だったという。

たとえば「玉子」「卵」「タマゴ」といった同意語を辞書の更新にあわせてデータも更新されるようにしたり、辞書には事前に登録をされていない新しいキーワードについても分析が可能になるように辞書の仕組みも刷新した。こういったバックエンドの刷新とあわせて、利用者がより快適に使えるようにUIも変更を行った。また、処理時間に時間がかかりがちなデータ分析システムのような使い方ではなく、日々利用するウェブサービスのような使い勝手で利用してもらうために、0.5秒以内の応答率を目指してリニューアルを行っている。

季節指標を加えることで、キーワードの変動が明確になる
たべみるですき焼きを検索した際の季節指標の例

提供:クックパッド

また分析結果の表示についても、年・月・週単位での変化や、年代や地域別、季節変動などをランキング形式で出すようにした。なお季節変動とは、季節指標「100」をベースに、ある期間にだけ検索頻度が上がるメニューや食材を把握できる機能だ。単純な検索頻度だけだと、通年食べられるようなメニューだけがランキングの上位になり、季節変化を掴むことは難しい。たべみるでは季節指標を設けることで、集合全体では発見しにくい変化も捉えられる工夫をしている。

生活者のニーズにもとづいた提案が可能に

たべみるのユーザーは、食品卸業者の営業企画担当者の利用が多いという。生活者のニーズに基づき、「この食材と一緒に配置したらどうか」「この食材はこれからの季節人気が高いから、目立つ場所に置いたらどうか」といった具体的な提案を行えるからだ。また小売店の店舗担当者向けには、スマートフォンでトレンド分析結果を閲覧できる「たべみるLite」というサービスを提供している。スマートフォンで手軽に日々の食傾向を把握できるので、店頭に立つ多忙な小売業者に好評だと中村氏は話す。


クックパッド株式会社トレンド調査ラボ たべみる事業責任者 中村耕史氏

また、2015年11月に公開されたばかりの「たべみるニュース」も評判が良い。これはテレビ番組の番組内容を分析しデータ化する企業と協業して、「今日のテレビ番組で紹介されたメニュー」をスマートフォン上で提供するサービスだ。「テレビで紹介されたメニューの食材は、その日の夕方には売り切れる」といわれているが、番組を見て「今日の晩ご飯はこのメニューにしよう」と考える生活者は多い。そんなニーズに、店舗がタイムリーに応えられることを可能にするのがこのたべみるニュースだ。

具体的な効果はどうか。前回の記事で紹介した「ギョーザの皮」と近い例として、ハロウィンの日に検索が増える人気食材のひとつにトマトがある。トマトは色鮮やかでデコレーションにも向いている。それを知った営業企画担当者が、トマトを使った人気料理で「野菜をおいしく食べられるレシピ」をPOPにすることを提案したそうだ。スーパーの方でも、「ハロウィンといっても、生活者はかぼちゃ以外の食材を探したいと思っているはず」ということは、感覚的に理解していても、それが具体的に数値で示されていることに驚きを隠せなかった。

調理器具メーカーにしても、生活者が調理中に行っているさまざまな工夫や課題をたべみるから抽出し、それを商品開発に生かしているという。中村氏は「生活者の動きというインサイトは、クックパッドが持つ膨大なデータだからこそ得られるのです」と胸を張る。

「今後もたべみるは、食のインフラのように、食にかかわるあらゆる企業を支援したいと考えています。ビジネスにおける日々の意思決定や市場動向を把握するインフラを目指して、メーカーや流通業、外食産業といった食品業界の共通言語となるべく、機能改善に取り組みます」(中村氏)

「データで何がわかるのか」という声がある。確かに、過去のデータを見ても未来がわかるわけではない。しかしユーザーが自発的に検索したり、訪れたりしたその行動は、ユーザーが「これをやりたい、知りたい」と思った結果であることは確かだ。こうしたデータが膨大に集まることで、「やりたい、知りたい」という生活者の思いや隠れたトレンドが明確になる。だからこそ、ビジネスにデータ分析は欠かせないのだ。

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プロフィール

たべみるの中村氏

クックパッド株式会社 中村 耕史氏

1983年生まれ、クックパッド株式会社データビジネスグループ。2011年クックパッド株式会社入社。事業部門にてアンケートシステム導入・広告効果測定などの業務を経験。データサービス「たべみる」のリニューアルに取り組む。著書に『「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力』。

たべみる(外部サイト)

 
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