マーケティング戦略

競技人口4.5億人! バスケットボールを盛り上げるB.LEAGUEのデジタルマーケティング戦略

記事内容の要約

  • 男女双方がプレーするバスケットボールの国内競技者登録数は62万人で、サッカーに次ぐ規模
  • バスケットボールをはじめ、各スポーツリーグではリーグと傘下のクラブ間ではデータが別々に管理されてきた
  • B.LEAGUEではリーグとクラブ間の連携だけでなく、協会とのデータ連携を見据えている
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2016年秋からはじまる男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」では、リーグが中心となってデータを活用したデジタルマーケティングを推進していくという。スポーツ業界にとって、データ活用する意義は何かを、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ (以下、B.LEAGUE)事務局長 葦原一正氏に聞いた。

“ファンを増やせばいい”という目的の曖昧さ

「世界でもっとも競技人口の多いスポーツは何?」と聞かれたら、多くの人はサッカーやテニスなどの人気スポーツを挙げるのではないだろうか。

実は、全世界の男女総計競技者人口をみると、最も多いのはバスケットボールで約4億5,000万人ほどだという。ちなみにサッカーは約2億6,000万人、テニスは1億人だ。B.LEAGUE葦原一正氏は「バスケットボールは競技者数が男女ほぼ同じであり、しかも男女共10~30代の若い世代はバスケへの観戦意欲が高いなど、大きなポテンシャルを秘めた競技なんです」と語る。

ところが実際の試合来場者数で見ると、トップが野球の約2,400万人、それに続くサッカーは約900万人で、バスケットボールは約140万人。市場規模でいうとバスケットボールはサッカーの10%程度しかない。バスケットボールの場合、「観戦したい」「応援したい」という来場意向者数と、実際の入場者数の間には大きな乖離があるのだ。

野球とサッカーの入場者数の比較
2015年度の野球の入場者数が2,400万人であるのに対し、サッカーは950万人

一般的に、入場者数を増やすとなると「新たなファンを増やせばいいのでは」と考えがちだが、ファンの増加が入場者数に直接つながるとは限らない。どのビジネスでも同じだが、新規顧客の獲得と、既存顧客のリピート率向上を比較すると、後者の方が低コスト・高効率だからだ。

チケットの売上は「ユニーク数×回転率×ARPU(Average Revenue Per User)」で計算するが、このうちユニーク数だけを見るマーケターは非常に多い。「しかも、ファンだからといって試合に足を運ぶとは限りません。スポーツ業界は“ファン”という言葉で曖昧にしがちですが、お金を払う人は誰で、どんなグッズを購入しているか、きちんと把握しているケースは少ないんです」(葦原氏)

スポーツ振興のためにデータができること

学生時代からスポーツ業界に興味があった葦原氏は、外資系コンサルタントを経て、プロ野球チームのオリックス・バファローズ、横浜DeNAベイスターズの2球団に経営企画、事業戦略担当として参画してきた。大学院時代は統計解析を専攻しており、「データを活用してスポーツビジネスを活性化できないか」という問題意識を常に持ち続けていた。

そんななか、葦原氏は従来のスポーツ業界のしくみに限界を感じるようになった。具体的には、プロチームを統括するリーグと、個々のクラブとの間に距離があることだ。両者とも「このスポーツを振興させたい」という共通の理念を持つにも関わらず、連携ができていない。


B.LAGUE 事務局長 葦原一正氏

「一般的に、観客は必ずしもプレーヤーではありません。たとえばプロ野球チームで熱心な応援をされる方で、かつて高校球児だったという人は少ないんです。しかしスポーツ振興を考えるなら、やはり競技者自身にも熱心な観客になってほしいと思います。自分でプレーして、試合を観戦して、また競技に励むというサイクルをつくる。競技者や観戦者の行動パターンを把握し、『競技者はどこでどのような情報を探しているのか』『それは一般の観客とどう違うのか』『試合に足を運んでもらうにはどのようなアプローチが有効か』など、スポーツを盛り上げるには“データと戦略”が必要です」(葦原氏)

B.LEAGUEだからできること

野球やサッカーでは、観戦者やファンクラブの情報はすべて個別のクラブに集約されている。一方、競技者の情報は協会側にある。協会、リーグとリーグとの連携が取れていれば、バスケットボールの市場規模やポテンシャルの見積もりの精度が高くなるし、またITの整備やコストといった点でも、一括管理すれば、クラブかかる負荷も少なくなる。

実際、米国大リーグと日本のプロ野球を比べると、1990年代前半は両方とも同じくらいの市場規模だったが、現在大リーグは1兆円市場に成長し、大きく水を開けられているそうだ。葦原氏によると、米国はチームではなく、リーグ(MLB ※Major League Baseball)がビジネス全体を統括し、市場活性の戦略を立案していることが大きな要因だという。

2016年3月にはソフトバンク株式会社がB.LEAGUE トップパートナーとなった
B.LEAGUE トップパートナー記者会見

写真提供:B.LEAGUE

これに対し、今秋に開幕するB.LEAGUEは、一からすべてのしくみをつくりあげることができる。前述した通り、バスケットボールというスポーツは世界で最も競技者人口数が多いスポーツであり、競技登録者数や観戦意向者数など国内でのポテンシャルも高い。葦原氏はこのバスケットボール業界で、「デジタルマーケティングの徹底推進」と「代表、リーグ、クラブの権益の統合」の2つを実施することで、ビジネス・競技としての振興を高めていく考えを持っており、その具体策としてバスケットボール界の統合データベース構築を目指している。

プロフィール

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事・事務局長 葦原 一正氏

1977年生まれ。早稲田大学院理工学研究科卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。2007年に「オリックス・バファローズ」、2012年には「横浜DeNAベイスターズ」に入社し、社長室長として、主に事業戦略立案、プロモーション関連などを担当。2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケットボール新リーグ(B.LEAGUE)の立ち上げに参画。

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