マーケティング戦略

リーグ先導でデータを集約、その先にあるBtoBの可能性とは? B.LEAGUEの挑戦

記事内容の要約

  • B.LEAGUEでは、リーグが主導し統合データベースを構築。いずれは競技者やファンと結びつけることも視野に入れている
  • NBAの「TMBO(Team Marketing & Business Operations at National Basketball Assocation)」に相当するマーケティング専門部隊をB.LEAGUE内で育成。デジタル戦略を加速させる
  • “ファン”の定義を明確にして必要な層に対して分析を実施し、効率的に施策につなげることが肝要

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競技者や観戦者のデータを統合したデジタルマーケティングは、試合観戦への来場を促すと共に、スポーツ産業にかかわるすべての企業にとって新しいソリューションになる可能性を秘めている。B.LEAGUEの取り組みがもたらす効果について、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(以下B.LEAGUE)事務局長 葦原一正氏が語る。

デジタルマーケティングの可能性

葦原氏が構想するデジタルマーケティングの要が、「統合DB」と呼ばれるデータベースだ。これは各チームが持っているファンクラブやチケット販売、EC、来場者のデータをリーグ内で統合データベースとして集約するもので、将来的には協会が持つ競技者データベースのデータとも連携させ、「共通バスケID」で競技者やバスケファンを紐付けていくという。

さらに、統合データベースには票券管理データや、グッズ購入などの履歴も取り込み、データを蓄積していく。


ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事・事務局長 葦原一正氏

「ポイントは、すべてのデータを集約することです。こうすることでデータ量も拡大し、さまざまな分析ができるようになります。プロ野球やサッカーではチームごとにデータを持っているので、その量も少ないし、連携した方が良いデータもバラバラで、活用の幅も限られています。しかし、今構想中の統合DBはそんなことはありません。リーグからチームにデータベースを提供するほか、個別のウェブサイトについてもCMSを提供し、工数・コストの負荷をかけない体制を作る予定です」(葦原氏)

分析はどのように進めるのか。葦原氏は、自身が統計解析を学び、プロ野球チームでもデータ分析を進めていた経験を振り返り、「分析から成果を得られるかどうかは、現場から上がってくる仮説が重要なポイントになる」としている。そのため仮説立案はチーム、分析はリーグという体制を考えているそうだ。

B.LEAGUEのマーケティング活動のベンチマークとなっているのが、米国バスケットボール協会(NBA)のマーケティング専門部隊「TMBO」(The Team Marketing & Business Operations)だ。TMBOはNBA機構に所属するコンサルティンググループで、チケット販売戦略やスポンサー戦略、マーケティングに関する専門コンサルティングを手がけるユニークな部門で、将来的にB.LEAGUE内にも同じような部隊を構築していくという。

BtoC、さらにはBtoBへ広がる

葦原氏は、こうしたデジタルマーケティングの取り組みにより、競技の観戦者、競技者の活性化を図り、業界全体を盛り上げていくという。「来場回数に応じてインセンティブを上げてさらなる来場を募るなど、BtoC活性化のための設計がしやすいという利点があります。データを見れば、どんな層にどのようなキャンペーンを提案すれば良いかの戦略も立てやすくなります」(葦原氏)

渋谷モディに設置されたB.LEAGUEのポップアップショップ

B.LEAGUE では2016年3月末から4月頭まで1週間限定で渋谷にポップアップショップをオープン。アパレルやカルチャーの視点でも積極的な活動を行う(写真提供:B.LEAGUE)

さらに、BtoCだけでなくBtoB分野でのデータ活用も期待されている。スポーツアパレルメーカーやスポーツジムなど、スポーツ産業に携わる企業にとって、バスケットボールプレーヤーのライフスタイルや行動傾向がわかれば、効果的なマーケティング展開が可能になる。個人を特定しないことが前提だが、収集した膨大なデータを基にバスケプレーヤーやバスケファンをセグメント化することで、これまで見えなかった新たな市場が見えてくる可能性がある。

BtoC/BtoB共、プレーヤー/観戦して応援するファンの属性と行動履歴がデータとして統合されているからこそ、可能になることだ。

スポーツ振興のために

葦原氏は、「こうしたデータ活用は、一般の事業会社なら当たり前に行われていることでしょう」といいながらも、「それでも、(1)年間5回以上来場するコアファン、(2)年間1回来場するファン、(3)ファン層(観戦意向者700万人)と3種類の層がいる場合、熱心に分析するのは(1)と(2)だけなんです」と指摘する。

「(3)は姿が見えないから、なかなか分析できません。まして、スポーツに興味のない大多数に対し、コアファンを分析した結果をあてはめようとしても、ほとんど意味はありません。『今まで来なかった人を、1回でも試合に足を運んでもらうようにする』より、『これまで年間5回観戦している人に、次年度は6回来てもらうようにする』とした方がずっと効果的なはずです。意外と一般の事業会社でも、コアファンだけを分析してファンでない大多数にアプローチして、ファンを増やそうとするケースが多いのかもしれませんが、やはり『お金を払って来るお客様』と、そうではない『ファン』とを区別してアプローチすることが重要だと考えています」(葦原氏)。

B.LEAGUEは、これまで野球やサッカーという人気スポーツでは成し得なかった統合データベースを確立することで、市場を伸ばそうとしている。実際葦原氏は、B.LEAGUEの取り組みを通じてデータの重要性を実証し、これまで曖昧な“ファン”を頼みにしていたスポーツ業界に一石を投じる構えだ。

実は、統合データベース案は、現在開発が進んでおり、秋のリーグ開幕前には完成する予定だという。その後、B.LEAGUEがどのように発展していくか、将来が楽しみだ。

プロフィール

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事・事務局長 葦原 一正氏

1977年生まれ。早稲田大学院理工学研究科卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。2007年に「オリックス・バファローズ」、2012年には「横浜DeNAベイスターズ」に入社し、社長室長として、主に事業戦略立案、プロモーション関連などを担当。2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケットボールの新リーグ(B.LEAGUE)の立ち上げに参画。

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