マーケティング戦略

1つのコンテンツで1万7000件以上シェアされる日経ビジュアルデータの秘密

記事内容の要約

  • 的確な情報伝達のために不必要なデータは捨てる
  • 表現方法もコンテンツによって最適化を図る
  • 先進的なコンテンツで自社のイメージを変える
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自社サイトのコンテンツ訴求力、情報の伝達力を高めたい──。そう考えるマーケターやクリエイターにとって必見ともいえるサイト、それが日本経済新聞 電子版(以下、日経電子版)の「日経ビジュアルデータ」(*1)だ。インフォグラフィック/データジャーナリズムの手法を取り込んだコンテンツのなかにはFacebookのいいね!数が1万7000件強に達しているものもある。そのパワーの源泉は、いったいどこにあるのか。

ユニークな切り口と高度な表現技術の融合

インフォグラフィックが並ぶ「日経ビジュアルデータ」のトップページのキャプチャー

「日経ビジュアルデータ」(以下、ビジュアルデータ)の大きな特徴は、完成度の高さだ。いずれも「表現すべきこと、伝えるべきこと」が考え抜かれたインフォグラフィックや映像表現になっている。なかには、アニメーション効果が用いられているものも少なくないが、それぞれに無駄な動きはない。すべてが、「データの時系列の変化」などを、見る側に効果的に伝えている。必要なデータをそれに適した手法で表現しているから、非常に理解しやすいのだ。

たとえば、「観光だけじゃない!ニッポンに住む外国人の素顔」(*2)というコンテンツがある。このインフォグラフィックを見れば、「観光」ではなく、就労・修学目的で日本に長期滞在している外国人の、特徴的な傾向や経年的な変化が即座にとらえられる。

図1
後述している内容を示したインフォグラフィック

図1は、就業目的で来日したインド人の数、職業を表現している(赤枠「A」の部分)のだが、このように特徴的な職業に絞り込み、グラフィックにすることで「在日インド人のIT技術者の数は、飲食業従事者の数をすでに上回っている」という事実が、直感的に理解できる。

また来日している各国の技術者数を、2004年と2014年とで比較した、横棒グラフのアニメーションも印象的だ(赤枠「B」の部分)。

たとえば2014年には、フィリピンから来日している技術者の数はアメリカの3倍弱にまで伸びているなど、文章では読み流してしまいそうな意外な発見があるのも、データを活用したグラフィックならではだろう。

このコンテンツの意図は、「インバウンドと称して外国人観光客の誘致・増大ばかりに注目が集まるなかで、あえて就労・修学外国人の動向にスポットを当て、日本のグローバリゼーションに関する、読者の新たな発見を促す」点にあったと、日本経済新聞社 編集局 メディア戦略部次長の板津直快氏は言う。

こうした切り口のユニークさとインフォグラフィックの出来栄えが相乗効果をもたらし、このコンテンツは2016年4月19日時点で、Facebookにおいて1万7000件いいね!されている。Facebookによると、日本のFacebookユーザーの平均友だち数は108人(*3)になるので、それを加味すれば、このコンテンツは180万人強のFacebookユーザーにリーチした計算になる。

ビジュアルデータが変える日経のイメージ

動的インフォグラフィックや映像表現の完成度の高さは、当然、情報伝達のスピードアップにつながる。たとえば、TPP(環太平洋経済連携協定)の経済圏がどれほどの規模であり、参加各国の経済力がどの程度なのか、そして、将来的にはどのように変化していくのかは文章では数字の羅列に近いものになってしまい、なかなか伝わりにくい。

だが、「TPP 巨大経済圏の実力」(*4)を見れば、そうしたデータが瞬時に把握できる。このような例が、データの効果的なビジュアル化による、データ・ジャーナリズムの効果といえるものだ。

図2 主要FTAのGDPと人口規模
後述している内容を示したインフォグラフィック。主要な自由貿易協定(FTA)の経済規模について、2014年の国内総生産(GDP)は全体で62.03兆ドル。これを青円で示したTPP(環太平洋経済連携協定)参加予定国のみの国内総生産(GDP)とすると、28.05兆ドルとなる。

図2のインフォグラフィックでは、下の方にある国内総生産(GDP)と人口の切り替えボタンをクリックすることで、各国のGDP/人口を表現する円がスムーズに動き、TPP参加予定国(青円)と、非参加国との経済規模との差が直観的にとらえられる。またそれだけでなく、それらの経済規模が2020年にどうなるかも即座に把握することが可能だ。

こうしたビジュアルデータのコンテンツは、通常のニュース・コンテンツに比べて読者の滞留時間が長く、平均3分間を超える滞留が認められているという。さらに資料性の高さからコンテンツのライフサイクルも長く、コンテンツから他のコンテンツへの回遊率も高いと板津氏は指摘する。

またビジュアルデータのコンテンツには、メディアのコンテンツと読者との関係に変化をもたらす可能性があると、メディア戦略部でデザイン責任者を務める鎌田健一郎氏は話す。

「たとえば、通常のニュース・コンテンツは、読者の行動が“読んで消費”する、あるいは“視聴して消費する”だけで終わってしまう場合もあります。ここに、テキストのみのコンテンツとビジュアルデータの違いがあると思います。ビジュアルデータには、読者が自分の考えを伝えるためにこのコンテンツを活用するなど、現実の行動を喚起できる可能性があります。その点でも一定の波及効果が期待できるのです。」

さらに、先に触れた「観光だけじゃない!ニッポンに住む外国人の素顔」の例からも明らかなように、優れたインフォグラフィックのコンテンツはソーシャルメディア上で話題を呼ぶ。実際、ビジュアルデータのコンテンツには、ソーシャルメディア上で“分かりやすい”、“見やすい”など、評価の声がさまざまに上がっている。

それだけではない。

「ビジュアルデータは、日経のつくったコンテンツとは思えない」との意見があったという。その読者は、ビジュアルデータ に“日経らしからぬハイセンスなコンテンツ”という印象を抱いたのだろう。

「その意見を目にしたときは、悲しさとうれしさが半々の複雑な心境でしたが(笑)、これによって、日経は“新しいことに挑むメディア”とのイメージが徐々に広がり、若い世代の方がわれわれに抱く印象も変わっていくと期待しています」(鎌田氏)

若い世代の間には、日本経済新聞は、難しい経済の記事が多く掲載されているお堅いメディアというイメージがある。ビジュアルデータは、そうしたイメージを変容させることで、新たなファン層を獲得するためのマーケティング施策の一助となっているという側面もあるようだ。

記者と技術者の共通理解が支える高い表現力

ビジュアルデータのコンテンツの完成度は、デザインセンスやインフォグラフィックの出来栄えだけで高められているわけではない。テーマ設定や切り口の鋭さはもとより、テーマに沿って「どのようなデータや映像・画像を、どこで、どう見せるべきか」の判断・シナリオづくりの的確さもコンテンツ全体の仕上がりのよさ、表現力の高さにつながっている。

「テーマによっては、インパクトのある静止画像だけで“われわれが伝えたいこと、伝えるべきこと”を的確に表現できる場合があります。大切なのは、単純にグラフィックや映像、アニメーションを使うことではなく、ストーリーのなかで、どんなデータで、何を、どのように伝えるかです」(板津氏)

必要なデータは何かをしっかりと見極め、ノイズになりかねないデータはばっさりと切る。これは、データを扱う際の基本といえるだろう。

このように、記者が考えたシナリオやアイデアを、デザイナーや技術者がその意図を理解したうえでデザインやインフォグラフィックに落とし込み、無駄を省いた洗練されたコンテンツに仕上げていく──。このプロセスが、ビジュアルデータのコンテンツの完成度と魅力を高める原動力となっているようだ。

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