マーケティング戦略

CLUB PanasonicのCRM戦略[後編]~来場者の7割強が“商品を購入したい”と回答、O2O施策成功の裏側~

記事内容の要約

  • CLUB Panasonicファンフェスタへ数千人規模の「優良顧客」を集客
  • ファンフェスタ来場者の7割強が「体験商品」の購入に意欲
  • 愛用者の感動を実需・ファン層の拡大へつなげる
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国内最大級のメーカー系CRMサイト「CLUB Panasonic」。同サイトでは現在、「販売への貢献、販売機会の創出」という主目的を達成するための重点施策として、会員データをリアルな「商品体感イベント」の集客に活用し、実需に結びつける取り組みを推進している。820万人強ものオンライン会員を擁し、月間2億2000万ものPVを稼ぎながら、なぜリアルイベントでの顧客体験にこだわるのか。また、リアルイベントでの顧客の体験を、販売の増進やファン層の拡大にどのようにつなげているのか。CLUB PanasonicのO2O(オンライン・トゥー・オフライン)戦略をひもとく。

体感イベントの参加者7割強がCLUB Panasonic会員

2007年に開設された、パナソニックが運営するCRM(顧客関係管理)サイト・CLUB Panasonic(*1)。同サイトでは2013年から「顧客による“商品体験(商品の実体験)”」にマーケティング施策の重点を置きはじめた。その大きなきっかけをつくったのは、商品レンタルキャンペーンの成功である。この成功を皮切りに、CLUB Panasonicでは、パナソニック製品の体感イベントに対する会員の誘導施策を本格的に始動させた。

すでにターゲットの異なる商品の体感イベントを70件以上実施し、延べ数万人の会員誘導に成功している。「最近では、体感イベントに参加されたお客さまの7割以上がCLUB Panasonic会員で占められるケースも珍しくなくなっています」と、クラブパナソニック運営部プランニング課 主務の森亮二氏は話す。

O2O施策の主要な流れ。会員ごとに番号が付与されたクーポンを使い、実際のイベントに赴く。

資料提供:パナソニック株式会社

このO2O施策で特徴的なのは、集客だけではなく、実需につなげる仕掛けが施されている点だ。例えば、イベント告知の段階で会員に購入特典を告知し、事前に「商品を体感して気に入ればすぐに購入する」という意識を高める工夫を凝らしている。

そのうえで、当日の会場で来場会員全員に記念品や当該商品のキャンペーンチラシを手渡し、さらにイベント後にはサンクスメールを送付することで、体感した商品とそのキャンペーンをあらためて訴求する。これにより、来場会員の満足度を高めながら、その購買行動を促しているのである。

ファンの熱気をリアルで増幅

こうしたO2O施策の効果に一定の手応えを得たことで、会員限定の商品体験イベント「クラブパナソニック・ファンフェスタ」を都内で2日間にわたり開催することが決定。同イベントのターゲットをメインで展開する商品に合わせて、首都圏に住む30~40代のファミリー世代に設定。集客においては、CLUB Panasonicの会員データベースのなかからターゲット層のアクティブ会員を抽出し、ダイレクトメールを郵送。また、全世帯にメールマガジンでの告知も行った。

結果、実来場者数は2日間合計で3500人強に達し、来場者の75%以上がメインターゲットに定めた30~40代のファミリー層。「これもCLUB Panasonicを通じた集客が有効に機能した証明といえます」と、森氏は話す。

ファンフェスタでは、商品説明会に多くの聴衆が集まり、熱心に聞いていた

ファンフェスタの来場者は、パナソニック製品を愛用する会員が中心。そのため、来場者の多くは、説明担当社員が驚くほどの熱心さで商品説明に耳を傾け、数多くのレベルの高い質問を投じてきたという。つまり、夢中で商品を体験する来場者で会場が埋め尽くされたのだ。

「とりわけ、調理器具や炊飯器を使った試食体験には、お客さまから『普段できない充実した体験ができた』と大満足・大好評の感想をいただきました」(森氏)。

後述のクラブパナソニックコインの入手方法

こうした体験が来場者の購買意欲を喚起し、来場した会員の実に73%が「イベントを通じて(パナソニック商品を)購入しようと思った」と回答。さらに、来場会員の購買意欲を後押ししたのが、2015年からサイト内で始まった「CLUB Panasonicコイン」のサービスだ。これは、パナソニック製品の購入やアンケート回答、ショッピングモールでの買い物時にコインがたまる仕組み。このサービスを活用し、「コインのキャッシュバックキャンペーンをイベント来場者限定で打ったことで、数多くのお客さまが商品を実際にご購入されました」と、森氏は説明を加える。

ロイヤルカスタマーの感動が新たなファンを呼ぶ

近年、ソーシャルメディアでの口コミ情報など、インターネット上の情報だけで商品購入の意思決定を下す消費者が増えているとされている。だが、森氏によるとパナソニック製品の場合は、逆の傾向が強く見受けられるという。

「例えば、CLUB Panasonicの『みんなのレビュー』(*2)は、商品購入者・愛用者限定の口コミ情報であることから信頼性も高く、お客さまの支持を集めています。しかし、それでも実際に商品を手にとって見てみないと購入に踏み切れないお客さまも相当数います。また、体感イベントに来場された方からは、『オンラインでは、この商品の良さは絶対にわからなかった』との声もありました」

ファンフェスタで来場者が家電のある生活を体験する様子。ターゲットとなるファミリー層が多く集まった

このように、ユーザーの購買決定プロセスに「リアルな商品体験」が大きくかかわる以上、体験イベントに顧客を誘導するのは当然のマーケティング施策といえる。その施策遂行において、CLUB Panasonic会員という、自社商品に興味を持つ消費者や商品の愛用者(ファン層)をターゲットにできる点にパナソニックの強みがある。

実際、ファンフェスタのような限定イベントへの招待や金銭的なインセンティブの提供は、会員にとっては“ファンサービス”だ。そのため、招待状を受け取った愛用者が会場におもむく可能性はおのずと高くなる。また、イベントでの体験や会場でのケアが特別なものであったり、体験した商品の性能が一定以上の評価ができるものであれば、パナソニックに対するロイヤルティーが上がるばかりか、商品をすぐに購入したり、自身の体験・感動をソーシャルメディアで伝えようとする意欲も強まる。

その結果、新たに商品を購入した愛用者やその口コミが増え、それが潜在顧客の関心を誘いパナソニック・ファンを増やす好循環が生まれることになる。

実は、多岐にわたるコンシューマープロダクトを手掛け、各商品の担当事業部の独立性が強い大メーカーがクロスブランドでのマーケティング施策や体験イベントを展開するのは、そう簡単なことではない。しかし、クロスブランドの膨大な顧客データを持ち、その活用によって相応のマーケティング実績をあげてきたCLUB Panasonicは社内の信頼が厚く、他部門からさまざまな相談が持ち込まれるという。

そのため先に触れたファンフェスタでも各商品事業部が一致協力し、来場会員に対して良質の顧客体験を提供している。「販売への貢献、販売機会の創出」という大目標の達成に向け挑戦を続けるCLUB Panasonic。同サイトのO2O施策の拡大によって、パナソニックの「ロイヤルカスタマー」が増え続ける可能性は高い。

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注釈:
(*1)CLUB Panasonic(外部サイト)
(*2)みんなのレビュー(外部サイト)

プロフィール

パナソニック株式会社 コンシューマーマーケティング ジャパン本部 デジタルマーケティングセンター クラブパナソニック運営部 プランニング課主務 森 亮二氏

2008年 パナソニック株式会社入社。コンシューマーマーケティング ジャパン本部において、国内のエアコン、空気清浄機のマーケティング企画を担当。その後、大手家電量販店、通販業態店本部に向けた商談および販促企画を担当。2014年より現職。会員サイトCLUB Panasonicにおける、デジタル販促企画を担当。

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