マーケティング戦略

純利益前年比160%! すかいらーくの「実利直結型」ビッグデータ活用術[前編]

記事内容の要約

  • データ分析業務をコア事業と位置づけ、他社との差別化を推進
  • 10億件を超える膨大なデータを高速に処理し、メニュー開発やプロモーションに活用
  • ビッグデータの分析結果を、アプリを活用したマーケティング施策にも効果的に活用
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外食産業の市場規模が減少傾向にあるなか、業績を堅調に伸ばしている企業がある。ファミリーレストラン業界の国内最大手、すかいらーくだ。人口の減少やライフスタイルの変化により市場規模の拡大が見込めない中で、なぜ同社のビジネスは好調なのか。その裏側には、ビッグデータを徹底的に分析し、マーケティングに生かす取り組みがあった。

ビッグデータ分析は差別化のコア業務

すかいらーくは、1970年7月にレストラン1号店を開店して以来、半世紀近くにわたって日本の外食産業をけん引してきた企業だ。現在は、「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」「夢庵」といったブランドを全国に展開。業界で唯一47都道府県に3,000店以上の店舗を構え、年間のべ4億人もの来店客があるという。

同業他社を大きく引き離す業界トップの地位を堅持しており、2015年12月期の連結売上高は、前年度比103%の約3500億円。営業利益は約278億円で前年度比129%、純利益にいたっては、前年度比160%となる約151億円に増加している。

売上高と純利益の比較(2014年度~2015年度)
前述の内容を表した棒グラフ

「外食冬の時代」といわれる環境にもかかわらず、すかいらーくが業績を伸ばしている背景には、同社が推進してきたさまざまな改革プロジェクトがあるが、その1つがビッグデータ活用によるマーケティングの強化だ。同社は2013年、データ分析を専門に行う「インサイト戦略グループ」をマーケティング本部内に設置した。

「当社では、販売時点情報管理(POS)システムなどから得られる膨大なデータの分析を、他社との差別化を図るためのコア業務と位置づけています。その分析業務を迅速かつ精緻に遂行し、マーケティングに反映させる組織として誕生したのがインサイト戦略グループです」と、同グループのディレクターである瀬良豊氏は説明する。


インサイト戦略グループディレクター 瀬良豊氏

インサイト戦略グループは、発足後、社内のデータ分析基盤を整備・刷新するとともに、当時は外部に委託していた分析の内製化を進めた。その取り組みは、売り上げ・営業利益などのアップに確実に好影響を与えている。実際、すかいらーくが2016年2月に発表した2015年12月期の決算短信でも、好業績の理由として「ビッグデータを駆使したメニュー開発、販促プランの作成」が挙げられているほどだ。

10億件のデータを、メニュー開発やOne to Oneマーケティングに生かす

では、インサイト戦略グループは、マーケティング強化策として具体的にどのような分析を行い、成果を上げているのだろうか。

同社が分析に利用するデータソースは、POSデータやモバイルアプリのアクセスログ、サーベイデータなど10億件を超えるという。インサイト戦略グループでは、そうした膨大なデータを高速に分析し、プロモーションやメニュー開発に役立てている。

「POSデータからは単純な売り上げや販売数を集計するだけでなく、注文伝票ごとに特徴を見ることで顧客のセグメンテーションなども可能です。たとえば、平日ランチに複数名でご来店され、ドリンクバーとデザートを食べておしゃべりを楽しまれる主婦グループといった具合です。さらに各セグメントの注文商品を分析すれば各ターゲットの嗜好性が見えてきますので、そういった情報をメニュー開発やプロモーション開発につなげていきます」

また、2014年にリリースし、約650万ダウンロード(2016年3月現在)を記録している人気のスマートフォンアプリ「ガストアプリ」を活用したOne to One マーケティング施策にもビッグデータを生かし、大きな成果を上げている。

「データ分析の結果をもとに、お客さまそれぞれのニーズや属性に応じたクーポンを出し分けることで、クーポン利用率が大きく向上することが実証されました。不特定多数のお客さまをターゲットにしたマスアプローチと比較すると、3倍近く数値が改善しています。こういったターゲティングは、従来は勘や経験によるところが大きかった領域ですが、ビッグデータ解析でより精緻・効率的な施策が可能になりました」

プッシュ配信により改善したクーポン利用率
前述の内容を表した図

「ビッグデータ活用」という言葉だけがひとり歩きしている企業・組織も少なくないが、すかいらーくでは、ビッグデータの分析・活用の成果を着実に積み上げている。とはいえ、実際に行っている施策は、まさにマーケティング的には王道ともいえる内容で、ほかの企業と大きく違うものということでもない。ではなぜ、すかいらーくの取り組みは大きな成果を上げているのか ──。実はその背後には、データ分析だけを突き詰めるのではない、すかいらーくならではの意外な分析手法があったのだ。

後編に続く

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プロフィール

株式会社すかいらーく マーケティング本部 インサイト戦略グループ ディレクター 瀬良 豊氏

東京工業大学大学院修了後、コンサルティング会社を経てすかいらーくに参画。すかいらーくでは、マーケティング部門におけるデータ分析から戦略立案を担当し、直近ではビッグデータ解析チームの立ち上げを推進している。

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