マーケティング戦略

純利益前年比160%! すかいらーくの「実利直結型」ビッグデータ活用術[後編]

記事内容の要約

  • 「インサイト戦略グループ」を設置することにより、データ分析の内製化を推進
  • 分析の精度を上げるために必要なのは、“現場感覚”
  • システム強化によりPDCAを高速に回転させ、仮説検証の機会を増やすことで多くの成功事例を生み出す
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ビッグデータ分析・活用を、業績アップへ直結させることに成功したファミリーレストラン業界の国内最大手、すかいらーく。データ分析を担当する専門チーム、インサイト戦略グループを率いる瀬良豊氏によれば、成功に導いた秘訣は「現場の業務を知りつくした自社スタッフによる内製化」と「ITインフラのスピードアップ」にあるという。

なぜ「改革」は必要だったのか

すかいらーくがデータ分析に取り組みはじめたのは、マーケティング本部にインサイト戦略グループが設置される2013年よりも前のことだ。当時行われていた分析業務には多くの課題があったと、インサイト戦略グループ ディレクターの瀬良氏は振り返る。

「当社がデータ分析をはじめた当初は、分析を進めるためのリソースが社内の各部門に分散し、ブランド全体を俯瞰した分析が少なかったのが実情です。また、一部の分析業務を外部の会社に委託していたためにナレッジが社内に蓄積されていませんでした。しかも、委託先の担当者はすかいらーくの実務を深く知らないため、精度の高い分析結果も得られなかったのです」

こうした課題を解決すべく、すかいらーくでは分析組織を抜本的に見直すことにした。その結果誕生したのが、分析できる人財リソース・分析したデータを1つの組織に集約し、さらにブランド全体を俯瞰した分析業務を内製で行う「インサイト戦略グループ」だ。

インサイト戦略グループの最大の特徴は、データ分析の専門家がそろった組織ではなく、レストランの現場でビジネスを体験してきた、いわば「現場スタッフ」が多くそろっていることだ。

「分析の精度を上げるうえで大切なのは現場感覚です。それがないと、たとえば、ある商品の売り上げが落ちた理由の仮説を高い精度で立てることができず、見当はずれのデータ分析に終始しかねません。その点、当社の社員は、新卒入社後店舗の現場で業務経験を積みます。そこで、その経験を分析に生かすため、内部スタッフを中心にインサイト戦略グループを組織し、分析業務をすべて内製に切り替えたのです」と瀬良氏は説明し、こう続けた。

「実は私自身は、店舗の現場で働いたことがありません。そのため、自分も分析で苦労を強いられた経験があります。以前、販売前のモニターテストでは評価の高かったメニューがあったのですが、いざ実販売となったら予想外に苦戦しました。その原因分析に取り組んだのですが、調査データをいくら分析しても苦戦の理由がつかめませんでした」

そこで、瀬良氏はある行動に出る。各店舗を回り、問題メニューの味を確かめるため、計測機器を使って、塩分濃度や糖度をすべてチェックしたのだ。その結果、店舗によってメニューの完成度にブレがあり、それがメニューの評価に影響を与えていることがわかった。

「私が店舗実務を経験していれば、おそらくメニューを見ただけで調理の難易度がわかり、『このメニューでは店ごとの出来栄えに差が出ているかもしれない』といった仮説がすぐに立てられたはずです。ところが当時の私は、現場を知らないので、その仮説になかなかたどりつけませんでした。このように、現場感覚がないと、いくらデータを分析してもわからないことが多くあるのです」

分析基盤の性能アップで“成功”の絶対数を増やす

またインサイト戦略グループでは、データ分析基盤の見直し・刷新も図ってきた。

グループ内の主要ブランドのPOSデータを投入・分析できるようシステム基盤を強化し、さらに2015年には、ビッグデータ解析ツールも導入。これは、「ガストアプリ」などを通じたOne to Oneマーケティングの精度を高めるためのツールであり、結果、10億件にもおよぶPOSデータとスマホアプリのログデータの分析スピードや精度の向上に成功、マーケティングPDCAサイクルの高速化につながった。

ガストアプリ

その結果、たとえば、かつては1~2週間を要していた分析が数時間で処理できるようになり、企画から実行・分析までのPDCAサイクルを1週間で回せるようになったのだ。

このように、分析と仮説検証のスピードが上がれば、たとえ成功率が同じでも、実施できる施策の数は増えるため、結果的に成功事例の数も増加し、その分利益も上げることができる。実際、A/Bテストの結果も迅速に分析できるようになり、クイックヒットが連発できるようになったと、瀬良氏は話す。

PDCAサイクルと分析のイメージ
前述の内容を表すグラフ

そんな、インサイト戦略グループが考える、次なる一手は何か。

「今後は、カスタマーストーリーのさらなる強化・自動化を目指していきたいですね。すかいらーくの店舗への来店数は、年間のべ4億人にもなります。その一人ひとりに対して最適なオファーをするなどのOne to Oneマーケティングを、人の手ですべて実施することは不可能でしょう。しかし、現在のビッグデータ分析の基盤を含めたITを活用していけば、十分に実現可能です。それによって、“ロイヤルカスタマー”をさらに増やせると考えています」

現場感覚を生かした分析と最新のITによるOne to Oneマーケティングの精緻化と効率化、そして自動化──この両輪により、すかいらーくのマーケティングはこれからも進化を続けていく。

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プロフィール

株式会社すかいらーく マーケティング本部 インサイト戦略グループ ディレクター 瀬良 豊氏

東京工業大学大学院修了後、コンサルティング会社を経てすかいらーくに参画。すかいらーくでは、マーケティング部門におけるデータ分析から戦略立案を担当し、直近ではビッグデータ解析チームの立ち上げを推進している。

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