ビジネス創出

マネーフォワードが目指す「金融業界維新」:FinTech企業のAPIエコノミーの形[後編]

記事内容の要約

  • 「マネーフォワードAPI」により、技術とデータのプラットフォーム化を促進
  • FinTech市場の形成に向け、「銀行API」の活用にも取り組む
  • “お金を動かす”銀行APIの活用で、サービスの次なる一手を模索
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この記事の前編を読む

「お金に関するユーザーの不安・課題を解消・解決する」というコンセプトのもと“自動会計簿・資産管理”サービス、マネーフォワード(*1)を着実に成長させる株式会社マネーフォワード。同社は今、APIを通じた金融サービスの、新たなエコシステムの形成に取り組んでいる。その背後には、どのような想い、そして戦略があるのだろうか。

APIによる経済圏形成に向けた自社サービスのプラットフォーム化

マネーフォワード社が推進する「APIによるエコシステム形成」のアプローチは1つではなく、いくつかのアプローチが併存する。そのうちの1つが「マネーフォワードAPI」の提供だ。

「マネーフォワードAPI」は、マネーフォワード社の“自動会計簿・資産管理”アプリ/ウェブサービス「マネーフォワード(以下MF)」が持つデータや機能に、外部サービスがアクセス/利用するためのしくみだ。マネーフォワードAPIを採用した各パートナー企業は、「アカウントアグリゲーション」を通じて収集・集約したユーザーデータ(家計・資産データ)を、ユーザーの承諾のうえ、自社のサービス上で使えるようになる。

マネーフォワードAPIのしくみ。ユーザーから承諾をもらった上で、APIを通じてユーザーのデータとユーザー事業者の持つサービスと組み合わせることができる

(提供:株式会社マネーフォワード)

前編で触れたとおり、MFのアカウントアグリゲーションは、約2,580社もの金融関連サービスに対応したデータ集約エンジンで、対応する金融関連サービスの数についても、アグリゲーションの品質についても「比類なきもの」と、株式会社マネーフォワード 取締役CTOの浅野千尋氏は話す。

APIとして外部のベンダーなどに公開することで、「新たなサービスを生むプラットフォーム」としてMFを機能させ、それによってユーザーの利便性をさらに高めていくというのが、マネーフォワード社のねらいだ。

「MFをプラットフォームとして用いれば、たとえば、就職・結婚・定年といったライフイベントに即した金融商品を知っていただくことができ、ユーザーのお金の悩みを解決できる可能性があります。ただし、そうした可能性を当社だけの力で追い求めるには限界があります。そのため、MFのAPI化でエコシステムを形成し、他社と積極的に組んでいこうと考えました」(浅野氏)

動きはじめるエコシステム

マネーフォワードAPIに対する周囲の関心は高く、すでに同APIを使ったサービス提供に乗り出したところも出はじめている。

その1つがスマートフォン向けアプリ「Yahoo!ファイナンスアプリ(*2)」だ。同アプリでは、マネーフォワードAPIを用いた「資産管理」機能の提供を始動させており、そのサービスでは、銀行預金・株式・投資信託・FXなど、複数の金融機関をまたいだユーザーの、保有資産情報の一元管理が実現されている。

「MFでは、ユーザーが所有する株式の銘柄や株数などのデータは取得できますが、Yahoo!ファイナンスのように、個別銘柄に関するマーケット情報は取得できません。逆に、Yahoo!ファイナンスでは、ユーザーごとのデータは取れません。しかし、それをAPIで結びつけ、足りない部分を補完すれば、ユーザーに大きなメリットをもたらすサービスが形成されるのです。これが、われわれがマネーフォワードAPIの提供で追求している世界です」(浅野氏)

Yahoo!ファイナンスアプリ上でマネーフォワードのデータを閲覧した際の画面サンプル
Yahoo!ファイナンスアプリ上でマネーフォワードのデータを閲覧することで、資産管理に役立てることができる

(提供:ヤフー株式会社)

マネーフォワードAPIは関西電力などでも採用され、そのほかにも多くの企業と水面下で交渉が進んでいる。エコシステムは着実な広がりを見せつつあるようだ。

利便性の高い革新的なサービスが増えてくれば、結果的にMFの価値も高まり、そのユーザー数も増えていく。それがまた、マネーフォワードAPIの魅力の増幅へとつながり、採用サービス/エコシステムの増大/拡大へとつながっていく──。そんな好循環を形成すべく、今後もマネーフォワードAPIの普及を促進していくと、浅野氏は話す。

FinTech市場の活性化をうながす

マネーフォワード社では、いわゆる「銀行API」と自社サービスの連携にも力を注いでいる。

たとえば、同社はすでに住信SBIネット銀行が提供するAPIを採用し、同APIとMFを連携させた「マネーフォワード for 住信SBIネット銀行」(*2)のサービスを始動させている。また、2016年4月からスタートしたNTTデータのインターネットバンキングAPI「AnserParaSOL」(*3)を利用した国内初の自動家計簿・資産管理サービスとして、「マネーフォワード for 静岡銀行」(*4)もスタートさせた。

こうした銀行APIは現状、「残高照会」「入出金照会」など、いわゆる銀行のデータを参照するためのしくみのみが提供されている。同社のアカウントアグリゲーション技術と比較すると、セキュリティーや可用性の部分で利用のメリットはあるが、実は機能面での違いはほとんどない。

それでも銀行APIの採用に同社が意欲を示す理由はどこにあるのか──。この問いかけに浅野氏はこう答える。

株式会社マネーフォワード 取締役CTO 浅野千尋氏

「消費者向けの金融サービスの利便性を向上させるために、銀行のAPI化と、それによるFinTech市場の活性化は金融業界に必要な流れです。それを加速させることは、金融サービス革新の一翼を担うわれわれのような企業にとって大きな使命といえます。しかし、そのミッションは1社では達成できません。ですから、当社が率先して銀行APIに取り組む姿勢を示し、現在注目されているFinTechを流行語に終わらせず、新たな市場をつくりたいと考えたのです」

次なるステップへの布石

もちろん、銀行APIに対する取り組みは、こうした「市場の啓発」だけを目的にしているわけではない。それは、サービス展開の「次なる一手」を見据えた布石でもある。

「銀行APIのもともとの意義は、お金の流れの中心を成す銀行の“お金を動かす”機能のAPI化だと認識しています。ですから、銀行APIの第2ステップとして、振り込み・振替・金融商品売買といった資金移動の機能がAPIとして提供されるようになるはずです。そうなれば、当社も“お金を動かす”という、これまでとは異なるサービス領域に踏み出すことが可能となり、また新たな価値をユーザーに提供することが可能になるはずです」(浅野氏)

銀行のAPI化が浅野氏のいう第2ステップに踏み出す上では、法制上・セキュリティー上の高いハードルがある。

「優れたFinTechを求める顧客のニーズは縮小することなく、企業と銀行によるエコシステム形成の潮流は世界規模で本格化するはずです。そうした将来に向けて、各金融機関とともに業界を発展させていきたい」と、浅野氏はあらためて意欲を示す。

「お金に関する不安の解消」という、消費者の課題解決に向けてまい進するマネーフォワード社。そのノウハウと技術力は今、APIを媒介に、金融業界の革新へと大きくつながりはじめている。

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注釈:
(*1)マネーフォワード(外部サイト)
(*2)Yahoo!ファイナンスアプリ(外部サイト)
(*3)マネーフォワード for 住信SBIネット銀行(外部サイト)
(*4)AnserParaSOL(外部サイト)
(*5)マネーフォワード for 静岡銀行(外部サイト)

プロフィール

株式会社マネーフォワード 取締役CTO 浅野 千尋氏

2008年 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報ネットワーク専攻修了。 2006年 トレード・サイエンス株式会社を設立。数理研究開発部長を経て、チーフアルゴリズムアーキテクトに就任。金融市場分析プラットフォーム開発、アルゴリズム研究開発業務に注力。 2010年 金融市場分析部門を独立させ株式会社インテリジェント・シープを設立。機関投資家向け金融ITコンサルティング業務に注力。 2012年 株式会社マネーフォワードCTOに就任。

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