マーケティング事例

接客ロボットに機械学習は不要!? 来店客をファンに変えるPepperの技[前編]

記事内容の要約

  • スーモカウンター15店舗に、2015年から接客スタッフとしてPepperを設置
  • Pepper設置後、設置前と比べて、店舗前で足を止める顧客の数が数倍に向上
  • Pepperがトリガーとなって誘客につながり、さらに店舗前交通量の定量分析の自動化も実現
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リクルートグループが運営するスーモカウンターのうち、全国15カ所で、2015年末からコミュニケーションロボットPepperが“接客スタッフ”として勤務している。同グループが開発した独自の会話エンジンを搭載したPepperは、まるで人間と話しているようなスムーズな会話ができるのが特長で、どの店舗でもすぐに人気者になってしまう。そんな接客スタッフPepperがもたらす効果と、その魅力の秘密をひも解く。

Pepperが出迎えるスーモカウンター

一歩店内に入ると、一体のロボットが立っている。「こんにちは」と声をかけると、すぐに「いらっしゃいませ」とあいさつを返し、出迎えてくれる―そんな、未来を先取りしたような体験ができる場所がある。それが、新築マンション購入や注文住宅の建築に関して、物件や建築会社の相談ができるスーモカウンターだ。

全国に94店舗あるスーモカウンターのうち、東京、浜松、名古屋、大阪、福岡などの15店舗では、「Pepper for Biz」が来店者を迎えてくれる。Pepperとは、ソフトバンク ロボティクス株式会社が開発・提供している人型ロボットで、人工知能の搭載により、人とインタラクティブにコミュニケーションできるのが特長だ。「Pepper for Biz」とは、ビジネス使用を目的につくられたPepper(以下、本記事内では「Pepper for Biz」もPepperとのみ表記)を指す。

またスーモカウンター(*1)とは、新築マンションの購入や注文住宅の建築を検討する顧客に向けて、物件や建築会社を中立な立場で紹介する対面型の無料個別相談サービスのことで、住まいに関する疑問や悩みを経験豊かなスタッフに直接相談できることが特長となっている。

スーモカウンター店頭の様子

提供:株式会社リクルートテクノロジーズ

新築、住宅ローンなど、住まいに関するニーズは人によってそれぞれだ。スーモカウンターは、住まいに関するさまざまな相談が気軽にできる場所だが、店舗の存在に気づかない人もいれば、足を踏み入れるきっかけがない人もいる。

店舗の前に立つPepperは、そんな潜在顧客層を店に招き入れる役割を果たしているのだ。子どもが、身長121センチメートルのPepperに興味深そうに寄っていき、そのまま家族で来店するケースもある。「相談は無料ですか?」「はい、住まいに関する相談は無料です」―。こんなやりとりをきっかけに、来店する人が後を絶たないという。

Pepperは優秀なスタッフ兼マーケター

2回の実証実験を経て、Pepperによる“接客”が本格展開をはじめたのは2015年末のことだ。その結果、Pepperを置く前と置いた後を比較すると、その集客効果は確実に出ているという。

たとえば店舗前で足を止める顧客数を見ると、Pepperを置く前に比べて数倍も多くなった。
また、一度Pepperに触れた顧客は、Pepper見たさに再度来店するケースも多く、Pepperの設置効果は想像以上に大きいという。

ではなぜ、Pepperの設置によって効果が出るのか。理由はいくつかある。まず、Pepperがいることで、店舗の存在そのものに気づく人が増えたこと。また、Pepperの胸部にはゲームができるモニターがあるので、子連れ客の場合など、小さい子どもの相手はPepperに任せ、親はゆっくりとスタッフに相談できること。そして子どもがPepperのファンになれば、「また来店しよう」という動機が生まれる。

さらに、Pepperが持つマーケターとしての“才能”も見逃せない。Pepperの「目」は、来店した顧客の性別や年代を判別・推定する。このログデータを分析すれば、いつ、どんな客層が来店したかが把握でき、次の施策につながっていく。

興味深そうにPepperと遊ぶ子ども

提供:株式会社リクルートテクノロジーズ

Pepperは人間とどのように会話をするのか?

Pepperを通じた店舗と顧客との出会いは、Pepperと顧客との“会話”からはじまるが、そのしくみはどうなっているのか。

まず人間がPepperに話しかけると、音声認識機能を通じて発言が文章化され、それがインターネットを通じて、リクルートのクラウド上にある「会話生成エンジン」に届けられる。会話生成エンジンは、文章を自然言語処理(人間が話した言葉の意図を解析)し、内容を把握した後、最適な回答を選び出してPepperに送り返す。こうした処理を経て、Pepperが言葉を返すのだ。

Pepperが会話できるしくみ
前述の内容を表す図

処理の流れを見ると時間がかかるようだが、一連の処理にかかる時間は、わずか0.1秒ほどだという。通常の人間同士の会話スピードとまったく遜色がないため、ロボットと話しているという違和感がないのがポイントだ。

こうした自然な受け答えを実現するため、システム側では、基本的に「1つの質問に対して、1つの回答を返す」という一問一答形式の会話パターンで対応している。とはいえ、会話パターンだけで数万件も登録されているので、バリエーション豊かな会話が楽しめることは間違いない。

この会話パターンのなかから「最適な回答を選び出す」という、すぐれた“頭脳”があるからこそ、Pepperの集客・マーケティング力が発揮されているのだ。

では、その“頭脳”はどのように成立しているのか。後編では、Pepperの会話をつかさどる頭脳の秘密を追っていく。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)スーモカウンター(外部サイト)

プロフィール

塩澤 繁氏

1976年生まれ。大学卒業後、外資系金融機関に勤務後、国内金融機関へ前職の3名と共に新ビジネスを提案、異動後に新ビジネスの立ち上げに従事。2008年に株式会社リクルートのIT部門であるFITに転職。アジャイル開発のマネージメント、海外拠点の立ち上げ、リケジョとのIoT製品開発等を担当。現在は、自然言語会話エンジン(TAISHI)とロボットの開発に従事する。

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