デジタル広告

気づかないうちにハマっている!? 広告主を襲う“負のスパイラル”から抜け出す方法[前編]

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インターネットに広告を出稿していると、多くの広告主がぶつかる壁があります。「CPA(顧客獲得単価)の悪化」です。この問題に悩まされながらも、有効な打開策を見いだせない広告主も多いのではないでしょうか。どの広告主にも起こりえるこの問題の原因を突き止めるためには、これまでとは違うアプローチが必要となります。そこで、どのようなアプローチが可能か、あるデジタルコンテンツサービス企業(以下、企業A)の「クリック課金型広告」の活用例を挙げて見ていきましょう。

クリックは新規顧客、コンバージョンは既存顧客?

企業Aは、以下のような状況に陥っていました:

  1. サイト来訪者に対する「リターゲティング広告」でCPAが継続的に悪化
  2. ターゲットをコンバージョン効率のよい、リーセンシーやフリークエンシーが高い顧客に絞った
  3. 一時的にコンバージョン効率が改善したが、再びコンバージョン数が減少し、効果が上がらなくなった

図1 負のスパイラル
前述の企業Aの状況を表す図

そこで、この“負のスパイラル”を打破するべく、パフォーマンス悪化の原因を特定するために、クリックとコンバージョンを新規顧客と既存顧客に分けて分析してみました。

すると、クリックの大半は新規顧客によるものだったにもかかわらず、コンバージョンに至っていたのは主に既存顧客だったことが判明しました(図2)。

図2 クリック数とコンバージョン数の割合比較
前述の内容を表す図

Yahoo! JAPAN調べ(2015年10月1日-2015年10月31日)

つまり、リーセンシーやフリークエンシーが高い顧客に絞り込んだことで、コンバージョン効率がよい既存顧客に絞られてしまっていたのです。そのため、一時的にCPAは改善しましたが、新規顧客の流入が減り、さらに商品を買いつくした既存顧客が徐々にいなくなってしまったことが原因で、CPAが再び悪化していたのです。

このように訴求対象を一元的に捉えると思わぬ逆効果を招いてしまうため、広告訴求のプランニングはコンバージョンの確率が大きく違う既存顧客と新規顧客は、分けて考える必要があります(図3)。“既存顧客”と “新規顧客”(潜在と顕在)で分けて考えることで、コスト効率の悪化や広告効果の低下を防ぐことができるのです。

図3 顧客の構造図
前述の内容を表す図

売り上げへのインパクトに着目する

では、既存顧客と新規顧客に対して、それぞれどのようにアプローチすればよいのでしょうか。まずは既存顧客へのマーケティング施策を実践する上で、ポイントとなる切り口をみていきましょう。

まず、既存顧客の売り上げ(課金総額)への貢献度を詳しく知るために、企業Aの既存顧客を課金額(月額)によって上位からヘビーユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザーとランク分けし、各層の課金総額における比率を比較しました。すると、全ユーザー数の20%を占めるヘビーユーザーが、課金総額の70%を占める結果となりました。その一方で、全ユーザー数の半数を占めるライトユーザーは、課金総額においてはわずか7%でした(図4)。そのため、売り上げにインパクトが大きいヘビーユーザーを獲得し、育成することがいかに重要であるかがわかります。

図4 ユーザー数と課金総額における顧客ランク別比率
前述の内容を表す図

Yahoo! JAPAN調べ(2015年10月1日-2015年10月31日)

例えば、キャンペーンなどを行ったときに、特売品のみに興味を示す客層(チェリーピッカー)を獲得したのか、リピーターになり得る顧客を獲得できたのかを見極めるためにも、既存顧客はコンバージョン単体ではなく、十分な計測期間を取ってLifetime Value(LTV)で広告効果を計測する必要があります。

広告効果の高い顧客を識別する

次に、企業Aの広告訴求において、「広告のクリック前後1カ月で課金額がどのように変化したか」について見ていきます。図5は広告のクリック前後の課金額の増減を表しており、黒い線は増減ゼロのラインです。そのラインより上の部分に散在しているのが、クリック後に課金額が増加した──つまり、広告効果があったとみなされる顧客群です。

赤い線は全体傾向を見るために引いた近似直線ですが、クリック前の金額が高いゾーンほど「増減なし」の分岐ライン(黒い線)とのかい離が大きく、クリック後の課金額はクリック前よりも少ないことがわかります。

反対に、クリック前の課金額が低くなるほど「増減なし」ラインに近づき、その金額が6,000円を下回るあたりで逆転していることがわかります。つまり、クリック前の課金額が6,000円以下の顧客群は、「広告に接触することで課金額が増えた可能性が高い」と推測できるのです。

図5 クリック前後の課金額
前述の内容を表す図

Yahoo! JAPAN調べ(2015年10月1日-2015年10月31日)
※各点:クリックユーザーのクリック前後の課金額をプロットしたもの

既存顧客に対するプロモーション効果を計測する場合、広告接触後の売り上げのみを成果とすると、広告効果がある顧客を見誤る可能性があります。1人の顧客に対し、広告接触前の一定期間の売上高と広告接触後の売上高を比較し、効果の上がりやすい顧客群を見極めてターゲティングすることが、効率のよい出稿へつなげるためには重要です。

ここでは、「CPAの悪化」という課題に対する解決策について、既存顧客へのアプローチという観点から述べてきました。後編では、既存顧客の存在を意識してCPAを改善しつつ、並行して新規顧客を獲得するために必要なアプローチについて考察します。

後編に続く

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著者プロフィール

寺本 伸行(テラモト ノブユキ)

2009年1月、ヤフー株式会社に入社。ニュースやGYAO! などのヤフーサービスのユーザー分析、DMP活用コンサルティング、プロモーション広告の改善提案などに携わり、現在、マーケティングソリューションズカンパニーマーケティング本部リサーチアナリシス部にて、広告やインターネットユーザーに関する調査・分析を担当。

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