マーケティング戦略

三井不動産レジデンシャルの挑戦[後編]~ 「電力の使い方」をマーケティングデータに!

記事内容の要約

  • 電力消費データの特徴は「特定少数のビッグデータ」
  • 定量データに定性データを加味することで、居住者の満足度向上につながる施策を実施
  • 「居住者のライフスタイル分析」により、細やかなニーズに応えるマンション開発
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2020年には、約260億円の市場規模に達するといわれるHEMS(ヘムス: Home Energy Management Systemの略称)。三井不動産レジデンシャルは、住戸内の「エネルギー使用量の見える化」や、「家電の遠隔制御」を実現するHEMSを活用して、居住者のライフスタイルを可視化し、居住者とのエンゲージメント強化に取り組んでいる。具体的に、新たな商品(物件)開発へのフィードバックなど、データ活用によるマーケティング施策の取り組みや課題を聞いた。

通常の「ビッグデータ」とは異なる「電力消費データ」の特徴

「電力消費データ」というビッグデータを、マーケティングに活用している三井不動産レジデンシャル。実は、電力消費データには、マンションならではの特徴があるという。市場開発部 商品企画グループ 主事の町田俊介氏はこう語る。

「『ビッグデータ』というと、ウェブサイトにおける不特定多数のユーザーの行動履歴のような、『広く浅い』ものを想像しがちですが、HEMSの使用電力データはその逆で『狭く深い』ものなのです。たとえば、あるマンションの1住戸の電力消費データであれば、15分ごとに住戸内の各所の10点でデータを計測し、何年にもわたって延々と蓄積していきます。これに住戸数をかけ合わせると、膨大なデータ量になります。対象は決して広くないものの、深く掘り下げられたデータである点が、電力消費データという、ビッグデータの特徴です」

そのような同社の電力消費データは必然的に、マンション居住者という、いわば特定少数とのコミュニケーションのために活用されることになる。その点が、一般的にいわれる「ビッグデータ」とは意味合いが異なる。

HEMSのエネルギーモニターの画面
家の中でどれくらいの電力が使われているか、モニターで確認できる。

提供:三井不動産レジデンシャル株式会社

電力消費データの活用は定量・定性の両面からアプローチ

同社では、新築マンションの企画などに電力消費データを活用するにあたり、その特性を考慮し、定量と定性の両面からアプローチをしている。

定量データについては、たとえばHEMSを通じてマンション全体で電力消費量が低下傾向にあることが確認されれば、新たにマンションを建設する際には、電気周りの設備を小規模にするなど、建設コストの抑制が図れる。

「使用電力に関するデータは、居住者のライフスタイルを把握することに加え、マンション全体の傾向把握に活用することも重要なのです」

一方、定性データについては、HEMSの利用状況に関するアンケートや訪問などを通じて、居住者のリアルな声を収集・分析している。

「たとえば、HEMSのデータを見て、エアコンの使用頻度が減少傾向にあることがわかったとします。その情報に加えて、お客さまのお宅に訪問してお話を伺うと、節電への取り組みが一時的なものではなく、すっかり生活に根付いているとわかることがあります。また、実は健康面にも配慮して、あまりエアコンを使わずに自然の風を取り入れるようにしている、というお話を聞くこともあります。そうであれば、新しいマンションを企画する際に、なるべくエアコンを使わずに快適に過ごせるよう、自然の空気を積極的に取り入れる部屋に設計するという可能性も出てきます。このように、生の声を聞くことで、お客さまの価値観と使用電力の関係をつかみ、次の商品開発や、お客さまに何をレコメンドしていくかを考えるヒントにしていきたいと考えています」(町田氏)


三井不動産レジデンシャル 市場開発部 商品企画グループ 主事 町田俊介氏

顧客をさらに深く知り、長期的な関係構築へ

マンションは、販売、入居して終わりではなく、居住者である顧客と長期的な関係を構築し、強化していくことが肝要だ。町田氏は、「お客さまをより深く知り、長くお付き合いするためのマーケティング手法も、引き続き確立していきたい」と語る。

「定性、定量データ両面のアプローチに加え、三井不動産グループが居住者向けに提供しているメンバーシップサービス『三井のすまいLOOP』の利用履歴など、三井不動産グループが保有するデータを活用することで、お客さまのニーズを先取りしたサービスを提供できると考えています。たとえば電力消費量の減少がわかれば、お子さまが独立した可能性があり、そうすると買い換えの提案にもつなげられる。そのようにデータを追うことでライフスタイルの変化を把握し、効果的なマーケティングが可能になると思います」

HEMSなら高齢者の安否確認も可能に

また、安心・安全領域へのサービス提供も1つの切り口だ。「お客さまにご協力いただくことが前提にはなりますが、たとえばトイレの明かりのオン・オフや、電気ポットの使用・不使用などのデータから、高齢者の方の安否確認ができるようなサービスも検討できると思います」と町田氏は語る。

継続的に居住者の生活パターンを計測、可視化できるHEMSの強みを生かしながら、居住者との長期的な関係を強化し、新たなマンション販売や、入居後のサービス提供につなげていく。電力消費量というビッグデータを活用したマーケティングには、大きな可能性が広がっているようだ。

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プロフィール

三井不動産レジデンシャル株式会社 市場開発部 商品企画グループ 兼 総務部 環境推進室 主事 町田 俊介氏

2007年入社後、新築分譲マンションの開発部門や営業部門を経て、2011年より現職。環境・防災・ICT関連の横断的な商品企画やマンション居住者のライフスタイル調査などのマーケティング業務を担当。

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