組織づくり・人材育成

日本ロレアルがCDOを設置した理由:デジタル時代の顧客中心主義とは[前編]

記事内容の要約

  • 日本ロレアルで、国内初となるCDO(Chief Digital Officer)に元Instagramの長瀬次英氏が就任
  • CDOの役割は「最も消費者に近い位置で事業戦略を立てる責任者」
  • 顧客中心の企業を実現するには、組織改編が不可欠
  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

デジタルマーケティングおよび会社全体のデジタライゼーションを主導する役職として、いま世界的に注目されているCDO(Chief Digital Officer)が、国内で初めて日本ロレアル株式会社(*1)に誕生した。就任したのは、元Instagram日本事業責任者の長瀬次英氏だ。日本初のCDOとなった長瀬氏が、美容業界の人気ブランドを多数抱える日本ロレアルがマーケティングをデジタルにシフトした背景と、その実現に向けて構想している施策について語る。

日本ロレアルに国内初のCDOが誕生

いま、CMO(Chief Marketing Officer)よりも注目されている役職がある。それがCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)だ。

コンサルティング会社 PwCの戦略コンサルティング部門・Strategy&が発表した『2015年度 CDO(最高デジタル責任者)の調査』によると、「CDOまたは、それに相当する職位を設けている」という企業は、世界トップ1,500社のうち、わずか6%にすぎなかったという。

CDOまたは、それに相当する職位を設けている企業の数(2015年)
前述の説明を表す図

注釈:売上高世界最上位の1,500社を対象とするStrategy&調査に基づく
出所:フィナンシャルタイムズ、ワンソース/アヴェンション、Strategy&分析

こうしたなか、2015年10月に国内初となるCDO職「デジタル戦略統括責任者」を設けたのが日本ロレアルだ。日本ロレアルは、世界最大の化粧品会社である仏ロレアル社の日本法人で、イヴ・サンローランやランコム、ケラスターゼやラ ロッシュ ポゼ、メイベリンニューヨークなどの著名ブランドを数多く抱えている。このデジタル戦略統括責任者に就任したのが、元Instagram日本事業責任者の長瀬次英氏だ。

CDOは「消費者に最も近い位置」にいる事業責任者

日本ロレアルでは、すでにCMOのポジションは設置されており、ビジネス戦略におけるマーケティングの管轄はCMOだというが、ではなぜCDOというポジションを新たに設けたのか。

長瀬氏は「CDOが象徴しているのは、これまでロレアルが貫いてきた、研究開発を中心にした“イノベーション・セントリック(研究開発中心)”から、“コンシューマー・セントリック(顧客中心)”なマーケティングへの転換です」と説明する。実はロレアル社は、日本を含む世界5拠点に研究開発センターを擁しており、皮膚科学研究や化粧品開発において優れた実績を持つ。そのため従来のマーケティング戦略は、製品中心のプロダクトアウト発想だったという。

だが世界的に見れば、マーケティングは顧客志向にシフトしている。それを後押ししているのがデジタル技術だ。たとえば、テレビCMや雑誌広告、車内の中吊り広告は、どんな人が見たのかわからないが、デジタルなら、閲覧した人や広告を見た後の態度変容をトラッキングできる。

「現在、ほとんどの人がスマートフォンを使い、情報収集や購買、口コミ、シェアなどあらゆる行為をデジタルで行っています。日本ロレアルがCDO職を設置したということは、今後、より顧客志向になるという意思。もちろんビジネス面でのCMOも重要な役割を担っていますが、CDOは消費者に最も近い位置にいて、消費者のことを誰よりもよく知り、消費者に寄り添う施策を立案する役割があります」(長瀬氏)

「顧客に徹底的に寄り添う」ための組織改編

長瀬氏は現在、各国のCDOと連携し、必要なITツールや人材を含めた環境整備、メディア戦略、各ブランドのデジタル戦略支援を進めている。特徴は、広告展開の根幹となるメディア部門を統括している点だ。長瀬氏は、今後広告出稿予算の半分以上をデジタルメディアに投資していくと話し、「四大メディアの広告と足並みをそろえる予定はない」という。


日本ロレアル株式会社 デジタル戦略統括責任者 長瀬次英氏

また、投資だけではなく、顧客中心に対応できる組織づくりを進めていく。現在、「必要な時に最適なチャネルを通じて適切な情報を提供する」という組織づくりに向け、カスタマージャーニーに沿って戦略立案を実施している最中だ。

情報収集から認知、ブランドリサーチ、購買に至るカスタマージャーニーを分析することで、自社ブランドサイトやSNS、ECサイトなどさまざまなデジタルメディア、カスタマータッチポイントが浮き彫りになり、メディアごとの重要性が把握できる。さらに、各タッチポイントの重要メディアとパートナーシップを組み、マーケティング施策を円滑に進めるような体制が必要となってくる。そうすると、おのずとパートナーと共同で事業を進める事業開発担当者が必要になり、自社サイトが重要になるフェーズでは、UX(ユーザーエクスペリエンス)やUI(ユーザーインターフェース)改善に向けた専門部隊が求められる。

長瀬氏は「企業がカスタマージャーニーに沿うには、組織自体が変わる必要があります」という。

未来像は「総CDO化」?

ちなみにロレアルグループ全体のデジタル戦略の目標は、「20:50:100」。これは「全売り上げに占めるECサイト売上比率を20%にする」「全顧客の中で、パーソナルなリレーションシップを構築できる顧客比率を50%にする」「エンゲージ度100%の愛されるブランドになる」という意味だ。この目標達成に向けて、用いるツールや手段に制限はない。長瀬氏が進めている顧客志向の組織づくりは、グループ内のパイロットケースとして初めて着手する取り組みだ。

最終的にめざす組織体はどんなものか。長瀬氏は「将来的には、CDOだけではなく、組織全体が『顧客については何でも知っている』というプロになることを目標にしています」という。なぜなら「私の使命は、最終的にCDOという役職をなくすことだと捉えているからです」(長瀬氏)。

では、スタッフの総CDO化に向け、日本ロレアルではどんな施策を進めているのだろうか。後編では具体的な取り組みの内容を聞いた。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)日本ロレアル株式会社(外部サイト)
(*2)Strategy&「2015年度 CDO(最高デジタル責任者)についての調査」(外部サイト)

プロフィール

日本ロレアル株式会社 デジタル戦略統括責任者 長瀬 次英氏

2015年よりデジタル戦略統括責任者/チーフデジタルオフィサー(CDO)兼エグゼクティブコミッティーメンバーとして日本ロレアルに入社。インスタグラム・ジャパンの日本事業責任者、Facebookにてブランドビジネスディベロプメント/クライアントパートナーなど、さまざまな業態/業種にて主にブランドの戦略構築や新商品開発、そしてアジア地域市場でのビジネスの建て直しや新事業ロンチ・収益化を手掛ける。

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

Insight for Dの
ページにいいねしよう!

「いいね!」してInsight for Dの最新情報をチェック

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Yahoo! JAPANのデータソリューションについて

Insight for Dの公式Facebookページ、Twitterでも最新情報や取材の様子を発信中。