組織づくり・人材育成

日本ロレアルがCDOを設置した理由:デジタル時代の顧客中心主義とは[後編]

記事内容の要約

  • CDO(Chief Digital Officer)の最終ゴールはデジタルを活用したマーケティング活動を普遍的なものにすること
  • インサイトを得るためデータを統合し、カスタマージャーニーのデジタル化を極限まで推進
  • デジタルマーケティングの心得は「まずやってみること」
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この記事の前編を読む

国内初のCDOとして活躍中の日本ロレアル デジタル戦略統括責任者 長瀬次英氏。現在日々変わる環境に対応する組織改編を進めている同氏は、まだ前例の少ないCDOという役割や意義をどのように考えているのだろうか。そのために進めているITやツールの環境整備、さらに困難に打ち勝つ知恵について語ってもらった。

企業にとってデジタルが「普遍的」になる日

「最終的にCDOという役職をなくすことが使命だと考えている」と語る日本ロレアルのデジタル戦略統括責任者 長瀬次英氏は、その真意について「デジタルマーケティングを特別なものとせず、普遍的な存在にすることです」と説明する。

スタッフ全員がデジタルマーケティングに関する知識を身に付け、エキスパートになれば、CDOという役職は特別なポジションではなくなる。今、あらゆる企業がデジタルシフトに向かっているのは、デジタルが顧客理解の手段として優れているからで、これまでのトラディショナルなマーケティングでは、誰が広告を見て、どんなブランド体験をしているのか把握できなかった。この限界を超えるのがデジタル技術だ。


日本ロレアル株式会社 デジタル戦略統括責任者 長瀬次英氏

「目指す方向は、『顧客やマーケットを、よりよく知る』ということです。そこに行くには、まずトラディショナルなマーケティングから脱却しなくてはなりません。デジタルマーケティングが特別なものでなく、普遍的になれば、企業全体の顧客理解が進むようになる。そうなれば『顧客について、最もよく知っている責任者』として、新たにChief Customer Officerといった役職をおけばいいのです」(長瀬氏)

顧客インサイト獲得に向けたITシステム・ツール環境の整備

現在長瀬氏は、組織づくりだけではなく、ITシステムの再構築にも取り掛かっている。その1つが、ブランドごとに持っていた顧客データの統合だ。

とはいえ、全ブランドで顧客データを共有することは難しい。同じ会社のブランドではあっても、現場からすれば競合関係に当たるからだ。この取り組みについて、長瀬氏は「ただ、日本ロレアルとしては『口紅はロレアルのブランドで、化粧水は他社のブランド』という消費行動を、せめて日本ロレアル内のブランドに流れるようにしたいと思っています。カスタマージャーニーやブランドエクスペリエンスをトラッキングしていくことは重要ですし、そのためには一元化されたCRMが必要です」と説明する。顧客全体の購買行動を基に、各ブランドのデジタル戦略を立て、サポートしていくわけだ。

また化粧品を購入する場合、どうしても「実際に試してみる、使ってみる」という、デジタル上では完結できないアナログ/リアルな行動が不可欠だ。この「使う」というプロセスを含め、どこまでジャーニーをデジタル化できるかという点も戦略の重要なポイントだ。

ロレアル社では、スマートフォンを使ってバーチャルなメイクアップ体験ができるアプリ「MakeupGenius」(*1)を提供し、「使う」プロセスのデジタル化に取り組んでいるが、長瀬氏はこのエクスペリエンスをさらに強化し、商品使用“前”、“最中”、“後”をデジタル上で結んでいくことにも意欲を見せる。デジタル化することで、顧客理解に必要なデータからインサイトを得て、ブランド体験をより向上させていく構えだ。

ロレアル社のアプリ「Makeup Genius」

デジタルマーケティングは「やってみる」からはじまる

長瀬氏が、CDOという新しい役職やデジタル化に向けた取り組みを話すと、他社の人々からは「それは大変ですね」「難しいでしょう」と言われるという。これに対し長瀬氏は、「やりたいことは、極めてシンプル。“必要な時に、必要な情報が、最適な形で見られる”ことです。これまで、多くのマーケターがやりたくてもできなかったことを、デジタルという手段を用いて進めていくだけです」と答えるという。

当面の課題は、欧米に比べてデジタルに対する警戒心が強い国内市場を、デジタルで活性化していくことだ。実際、広告出稿の比率を見ても、デジタルメディアへの投資は26〜27%ほどで、いまだにテレビ・新聞・雑誌・ラジオの四大メディアが中心。だが、世界的にマーケティングトレンドが「顧客志向」へと移るなか、顧客一人ひとりにリーチできないマスメディアを基盤とした現在のマーケティングには限界がある、と長瀬氏は見ている。

「好きな言葉は、マーク・ザッカーバーグの"Done is better than perfect"(完璧を目指すより、まずは終わらせろ/行動してしまった方がよい)です。幸いロレアルグループは、研究開発が強いイノベーション体質があるので、“まず行動し、そこから修正していく”デジタル戦略のコンセプトと相性はよい。欧米諸国と比べると、国内ではデジタルシフト推進への課題も多いのですが、その分やりがいもあると考えています」と長瀬氏はしめくくった。

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注釈:
(*1)「Makeup Genius」(外部サイト)

プロフィール

日本ロレアル株式会社 デジタル戦略統括責任者 長瀬 次英氏

2015年よりデジタル戦略統括責任者/チーフデジタルオフィサー(CDO)兼エグゼクティブコミッティーメンバーとして日本ロレアルに入社。インスタグラム・ジャパンの日本事業責任者、Facebookにてブランドビジネスディベロプメント/クライアントパートナーなど、さまざまな業態/業種にて主にブランドの戦略構築や新商品開発、そしてアジア地域市場でのビジネスの建て直しや新事業ロンチ・収益化を手掛ける。

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