マーケティング戦略

データ活用最前線[後編]~大阪ガスが挑む“IoT”と“機械学習”を活用したデータ分析

記事内容の要約

  • モノのデータ分析は、まず「物理法則」を考えるべき
  • すべての物事が「機械学習で自動化」できるわけではない。適した活用シーンがある
  • ディープラーニングに注目。より高度な保守やメンテナンスが可能になる
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「データ分析技術は進化し、機械学習や人工知能が注目されていますが、それだけですべてを解決できるわけではありません」——。大阪ガス ビジネスアナリシスセンター所長の河本薫氏はこう語る。データ活用の先進企業である同社が、進化し続けるテクノロジーをどのように課題解決に生かそうとしているのかを伺った。

IoTから取得するデータならではの難しさとは

河本氏は「IoTデータ分析の難しさは、分野によって変わってきます」と話す。大阪ガスの場合は、メンテナンスに生かすことを目的とした、器具からのデータ取得が主だ。

エネファームのメンテナンスを行う大阪ガスの作業員

提供:大阪ガス株式会社

「私が普段行っているような、設備・機器関連のIoTデータ分析の場合、2つの難しさがあります。1つが、データベースにあるようなきれいなデータを取得できるわけではないこと。欠損や異常値があるデータを扱う必要もあるため、そこに独特の大変さがあります。2つ目が、モノのデータである以上、常に「物理法則」を考える必要があることです。温度や圧力については明確な法則に基づいて変化するため、「なぜ温度が上がるのか?」などの疑問を現場へのヒアリングを通じて明らかにしていくことが重要です」(河本氏)

分析すれば、勝手に何かを導き出してくれるわけではない——。程度の差はあれ、データ分析には必ずこの課題がつきまとう。

河本氏は、現場の持つ知識や経験を尊重し、コミュニケーションを密にし、疑問点があれば納得するまでヒアリングするという。「現場を尊重する」という意識は、モノのデータ分析において何よりも必要だそうだ。

機械学習の落とし穴とは

データ分析の経験者であれば、「現場や有識者の意見も大切だが、機械学習技術を活用すれば、法則を楽に発見できるのでは」と思う人もいるだろう。これに対して河本氏は「現場が持つエンジニアリング的な知見を用いずに機械学習だけに頼るやり方は限界があると思います」と見解を述べる。

その最大の問題は、処理がブラックボックス化されることだ。結果にどこかおかしな点があってもそのプロセスを追うことはできない。たとえば、データに異常値が含まれていたことで間違った結果が出ても、分析プロセスがブラックボックス化されていると、原因を突き止めることは簡単ではない。河本氏は、「はじめは現場のエンジニアリング的な知見に基づいた仮説をベースに分析を行い、そこで一定の成果を確認した後に、さらに改良するために機械学習を用いるという手順で進めています」と見解を述べる。

処理がブラックボックス化されることが機械学習のデメリット
機械学習のデメリットとして、データの処理プロセスを遡って検証することができないことが挙げられる

もう1つの問題は、どれだけ機械学習を使っても、百発百中にはならないことである。すなわち、故障予知も異常検知も外れることがある。その場合、分析者ではなくメンテナンス担当者がその責任を負うことになる。そのため、メンテナンス担当者は、分析者から「これが答えです」と、ただいわれても納得できない。「なぜこの答えになったのか」理由を聞きたいのである。河本氏は、「はじめは、分析プロセスがブラックボックス化しないシンプルな分析手法を用いて結果を出し、現場の納得と信頼感を得ることに専念します。そこから徐々に高度な分析手法を用いていくようにします」と持論を述べる。

一方で、機械学習などの人工知能技術は、コンピューター能力がアップするに従い、そのポテンシャルをますます大きくしている。特に、河本氏は、ディープラーニングのポテンシャルに注目している。たとえば画像認識のように、仮説や法則が伴わないデータであれば、コンピューター自身が特徴量までも抽出してしまうディープラーニングは有効だ。河本氏は、「ディープラーニングを、画像や音声だけでなく、機器や設備の計測データにも活用できる可能性を感じている。うまく活用すれば、より高度な保守・メンテナンスサービスが実現する可能性がある」とのことで、ディープラーニングに関心を寄せているそうだ。

大阪ガスは新たなフロンティアをめざす

大阪ガスからビジネスアナリシスセンターが誕生して17年。これまで試行錯誤しながら故障部品を予測するシステムの構築や緊急車両の配置最適化といった成功例を生み出すまでに至った。

そんなビジネスアナリシスセンターが次にめざすのは、データ分析をベースにした、新しいサービスの創出だ。「詳しいことは、まだ秘密です」(河本氏)としながらも、IoTを筆頭に、今後ますます増え続けるデータとその活用範囲が広がってくることは間違いない。

同センターが生み出すであろう新サービスは、ガス事業に新しい付加価値をもたらすものなのか、それとも、その枠をこえたものなのかはまだわからない。その未来は、きっと予想よりも早くやってくるだろう。

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プロフィール

大阪ガス株式会社 情報通信部 ビジネスアナリシスセンター所長 河本 薫氏

大阪ガス情報通信ビジネスアナリシスセンター所長、大阪大学招聘教授を兼任。兵庫県出身。京都大学工学部数理工学科卒業、京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了。大阪ガスに入社。米国ローレンスバークレー国立研究所でエネルギー消費データ分析に従事。博士(工学、経済学)。著書に『会社を変える分析の力』。

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