マーケティング戦略

リクルート「スタディサプリ」の秘密[前編]―― 受験生の半数が利用する人気のワケ

記事内容の要約

  • オンラインサービスの特性を生かし、月額980円という低価格で、カリスマ講師の講義動画視聴を実現
  • 学習ログデータの分析をもとに、定期テストの前には勉強すべき苦手単元をレコメンド
  • 勉強を続ける気にさせるために、動画の長さの検討、ゲーム要素のあるサービスなどさまざまな施策を展開
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リクルートが2011年から提供するオンライン学習サービス「スタディサプリ」が会員数を伸ばしている。現在、小・中学生〜大学受験生向けに4種類のサービスに加え、英語を学びたい人向けに1種類の英語学習サービスを展開しており、その会員数は25万人。月額980円(税抜き)という安価で、いつでも人気カリスマ講師の講義動画を視聴できることで人気を集めているが、このサービスの人気を支えるものがもう一つある。それが、やる気と学習成果を向上させるために取り入れている「データに基づく科学的手法」だ。学習する者の心をつかんで離さない、その手法を紹介しよう。

大学受験対策の第3の手段「スタディサプリ」

塾や予備校、通信教育に続く、大学受験対策の第3の手段として注目され、いまや「大学受験生の2人に1人が利用している」といわれているのが、リクルートマーケティングパートナーズが提供する「スタディサプリ」(*1)だ。

スタディサプリの前身は、2011年に大学受験生向けにリリースした「受験サプリ」。これは、現在のスタディサプリ同様、経験豊富なカリスマ予備校講師の講義を月額980円で聴講できるというオンライン学習サービスだ。

その後、小・中学生向けの「勉強サプリ」、英語学習者向けの「英語サプリ」や「英単語サプリ」をリリースし、2016年2月にはこれらを統合した「スタディサプリ」としてブランドリニューアルを実施した。

現在の講座の種類は、学生向けとして、小学生・中学生向けの小・中学講座、高校生と大学受験生向けの高校・大学受験講座があり、そして英語学習者向けに「話す力」と「聴く力」を楽しく身につけられる「スタディサプリ ENGLISH」がある。

進んで勉強したくなるスタディサプリの秘密

「オンラインでも、実際の塾や予備校のように学べる場を提供したい」(まなび事業本部 オンラインラーニング事業推進室 事業開発部 コミュニケーションデザイングループ グループマネジャー 松尾慎治氏)という思いのもと、スタディサプリには、受講するユーザーが楽しく良質な学習を継続できるように、さまざまな工夫が凝らされている。

基本的にコンテンツは各教科の単元ごとにつくられている。そしてメインコンテンツとなる、カリスマ講師の講義動画の長さは、集中力が続くといわれる15〜20分ほどにおさめられ、また、視聴後の評価点数や離脱ポイントなどをもとに、改善・改良を続けている。

スタディサプリのトップ画面
学習を楽しくするための工夫が随所に見られる。

小学・中学講座では、生徒が学習することで成長する「サプリモンスター」というキャラクターを用意し、ゲーム要素を持たせることで学習意欲を喚起させる。一方、高校講座以降は、過去問など受験に役立つコンテンツをそろえ、より効果的な学習サポートを行う。スタディサプリ ENGLISHでは、音声認識技術を活用し、LとRの発音指導を行うなど、英会話教室と遜色ない充実したサービスぶりだ。

このように、受講するユーザーに合わせてきめ細かくサービスが用意されているのが、高い支持を得ている理由の一つだろう。

スマートフォン指向で低価格と利便性の向上を実現

ところで、これだけの機能でなぜ980円という低価格を実現できているのか。その理由について松尾氏はこう説明する。

「実際の予備校だと運営・維持のために、土地・建物の費用や光熱費、さらに講師や職員の人件費が必要で、その金額は非常に大きなものです。一方、スタディサプリはオンラインなので、それらが不要です。その点で、コスト面の強みが発揮されています」

また、スマートフォンやタブレットでも視聴できるので、場所や時間を選ばずに各人のペースで無理なく学習を続けられる。その利便性もスタディサプリの特長だという。

スタディサプリなら、勉強が続く・できるようになる

もちろん、内容やサービスがいくら充実していてもそれだけでは成果は出ない。肝心なのは、受講生の“やる気の継続”だ。実は、このモチベーション維持に向けて大いに活用されているのがログデータだ。ここでも、オンラインならではの強みが発揮されている。

たとえば、苦手単元のレコメンドもその1つだ。学習ログを分析すると、各受講生が不得意とする範囲がすぐに把握できる。そこでスタディサプリでは、定期テストの範囲を入力すると、重点的に勉強すべき範囲を自動でレコメンドするようにしている。各人の学習の進み度合いや理解度に合わせて最適なレコメンドを行うので、苦手領域を残さないわけだ。

中学生向け定期テスト対策画面
定期テストでは、試験範囲を単元で指定することで、自分の苦手分野をしっかり勉強することができる。

また小学・中学講座では、生徒の学習ペースを保護者と共有するしくみになっている。アプリが進み具合を判断して、保護者から生徒へのほめる・叱るなどの対応を促すことで、生徒の学習意欲を向上させているという。

知られざる教育問題――「格差」と「つまずき」の原因とは

「低価格でオンラインとはいえ、“安かろう悪かろう”というサービスには、絶対にしたくない」という松尾氏の強い思いは、スタディサプリ誕生の経緯が関係している。

「今、大学受験生のうち、予備校に通っている人は3割程度です。というのも、費用が年間100万円程度はかかるうえ、都市部でないと予備校自体がないからです。つまり所得や地域によって、学習環境に格差が生じているわけです。この格差を解消し、誰もが学習できる環境をつくりたいと考えたのが、スタディサプリ開発のきっかけです」(松尾氏)

【世帯年収別】高校~大学卒業までに必要となる1年あたりの在学費用と家計に占める割合
年収が低い層ほど教育費の負担は重くなり、200万円以上400万円未満の層では、約40%にもなる。

日本政策金融公庫「重い教育費負担」(2015年)より作成

講座の開始時期を小学4年生に設定したのも理由がある。実は勉強の難易度があがるのが、小学3〜4年生の時期だからだ。低学年では、学習でつまずくことはほとんどないが、小学3年生以上になると、これまで学んだことの応用力が必要とされる。ここでつまずくと、その後の学習にも大きな影響をおよぼすという。

「だからこそ、テクノロジーの力で、各人に合った効果的な学習をサポートし、学習環境の格差解消につなげたいのです」(松尾氏)

この理念を実現するべく、同社が力を入れているのが、スタディサプリで得た、膨大なデータの有効活用だ。前述したレコメンドや保護者との情報共有も含め、後編では「データ活用による効果的な勉強法」を紹介する。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)スタディサプリ(外部サイト)

プロフィール

株式会社リクルートマーケティングパートナーズ まなび事業本部 オンラインラーニング事業推進室 事業開発部 コミュニケーションデザイングループ グループマネジャー 松尾 慎治氏

2006年リクルート入社。Hot Pepperの新規開拓営業や、じゃらん・リクルートエージェントなど全社のウェブサービスの新規立ち上げ、リニューアルおよびウェブ集客をサポートする業務に従事したのち、2010年に学び事業に異動し新規事業開発を担当。2011年、大学受験をサポートする「受験サプリ」を立ち上げ、以降サービス運営に携わる。

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