マーケティング戦略

「73万件の肌データ」と「オープンデータ」のかけ合わせで、新機軸のスキンケアを!

記事内容の要約

  • 「肌は一人ひとり違う」の発想で27年前から肌データの収集・分析に着手
  • 肌データと気象データ、2つのビッグデータを活用し、「ニッポン美肌県グランプリ」をスタート
  • ビッグデータを活用したマーケティングが軌道に乗りはじめ、社内でもデータ活用に関する機運が高まっている
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創業から87年を迎えた老舗化粧品メーカー、ポーラ。実は同社は、27年前から顧客の詳細な「肌データ」を収集・分析し、顧客ごとにパーソナライズされた商品を提案してきた、まさに“ビッグデータカンパニー”の先駆的企業でもある。そして現在、そのデータ活用は化粧品開発にとどまらず、マーケティング活動にも広く展開している。昨年からは「美肌予報」という、日本各地の天気に応じたスキンケアの方法などの情報を提供するウェブサイトもオープンし、注目を集めている。ポーラ流、“肌のビッグデータ”の活用法の裏側を聞いた。

ビッグデータ分析の成果「ニッポン美肌県グランプリ」

ポーラは、顧客それぞれに最適な化粧品やお手入れを提供するというビジネスモデルで知られる老舗企業だ。現在は「究極のおもてなしを通じてPersonal Skin Careの世界ブランドになる」というビジョンを掲げ、訪問化粧品販売ではトップシェアを誇っている。

そんなポーラが、2012年から毎年11月12日の「皮膚の日」に合わせて発表する「ニッポン美肌県グランプリ」(*1)をご存じだろうか。

これは、全国の販売店(ポーラショップ)店頭などで、顧客の女性のスキンチェックを通じて収集した、肌に関するデータを活用したコンテンツである。データを全国47都道府県別に集計して独自の「美肌偏差値」を算定し、都道府県を順位づけしたものだ。気象庁が公開している各地方の日照時間、相対湿度、年間平均気温といったオープンデータと、ポーラが独自に計測した水蒸気密度(*2)、さらに生活習慣・体調などのアンケート結果をもとに都道府県ごとの分析を行っている。

ちなみにグランプリ第1位は、4年連続で島根県。ポーラではその要因を、日照時間が短く紫外線の影響を受けにくいことや、水蒸気密度が高く肌のうるおいを保ちやすいことといった気象環境、食文化が関連していると分析している。

「美肌県グランプリ2015」のウェブサイト画面


都道府県別に肌ケアポイントがわかる「美肌予報」とは

実は、グランプリ結果を算出するために利用される肌データは、膨大な量におよんでいる。たとえば、2015年11月に発表された直近の「ニッポン美肌県グランプリ2015」では、2014年9月1日~2015年8月31日にかけて集めた73万件以上の肌データが活用されているという。

ポーラではさらに、このデータを活用して、一般ユーザーにも役立つサービスをスタートさせた。それが、2015年11月にオープンした「美肌予報」(*3)だ。

これは、日本気象協会とのコラボレーションにより実現したウェブサイトで、ポーラの肌データと、日本気象協会が保有している向こう1カ月の気象データという両社のビッグデータを駆使したサービスだ。

肌と気象、2つのデータをかけ合わせ、都道府県別に「絶好調」の100%から「大変」の20%までの「美肌指数」を算出。さらに気象データをもとに、地域ごとに優先的にケアするべきポイントについて、スキンケアや食事美容術など、さまざまな角度から紹介するものだ。現在「美肌予報」は、一般的に肌のターンオーバー(生まれ変わり)のペースといわれる28日間に合わせて、およそ月1回のペースで更新されている。

「美肌予報」のウェブサイト画面


ビッグデータ活用の原点

ところで、なぜ、ポーラはこれらの施策をはじめたのだろうか。

背景には、同社が「個別対応ができるスキンケアブランド」として展開する「POLA APEX(ポーラ アペックス)」の存在がある。同ブランドを統括する菅千帆子氏(APEX ブランドマネージャー)はこう語る。

「アペックスは、1989年に業界初の“個肌対応”として誕生した化粧品ブランドです。美肌県グランプリ・美肌予報の施策は、これまで蓄積してきた膨大な肌データを活用して、お客さま一人ひとりに適した新しい美容提案に役立てるとともに、アペックスというブランドの認知向上も目的にしています」

ポーラでは顧客一人ひとりの肌を追究するために、アペックスブランドが誕生した27年前から肌データの収集をスタートさせた。そして今日に至るまで、スキンチェック技術を進化させ続け、現在では1平方センチメートルにも満たない、肌表面の小さな画像から約5000種類のデータを得ることができるという。

スキンチェックに使うキット(左)と皮膚の角質細胞の様子(右)
シール状のスキンチェックキットで、肌の状態を調べることができる。

提供:株式会社ポーラ

「膨大なデータは、絶対にうそをつかない」

現在では、全国47都道府県・16歳以上の女性の肌、累計1600万件を超えるデータが蓄積されており、さらに、毎日平均約3000件の新しいデータが追加されている。まさにポーラだけの“肌のビッグデータ”である。

「当社では『膨大なデータは、絶対にうそをつかない』という初代研究メンバーの考えのもと、データの収集を行っています。店頭での肌チェックの結果、お客さま自身の肌に対する思い込みとデータの分析結果によって得られたファクトには、7割ものズレがあります。しかし、これも当社に豊富なデータがあるからこそ判断ができることです。さらに、ビッグデータ分析を進めていくなかで導き出したのが、肌の個性だけでなく気象条件や生活習慣によって肌の地域特性が見られるということだったのです」(菅氏)


株式会社ポーラ APEX ブランドマネジメントチーム
APEX ブランドマネージャー 菅千帆子氏

つまり、顧客ごとに異なる化粧品を提案するためにはじまったデータの蓄積と活用が、“地域特性”というインテリジェンスの発見につながり、「ニッポン美肌県グランプリ」の発信や「美肌予報」という情報サイトのサービスに結びついたというわけだ。

加速するデータ活用の流れ

もっとも、こうした取り組みが最初からスムーズに進んだわけではないようだ。菅氏はこう明かす。

「当社には、お客さまを心底おもてなしする企業文化があります。そのためか、当初お客さまの肌データをプロモーションに利用することには抵抗があり、社内でも賛否両論の意見があったことは確かです」

しかし、美肌予報などの成功により、社内の風向きも変わってきているという。

「美肌予報などの取り組みの結果、こうした施策は期待以上に話題を呼び、『ポーラという企業が何かユニークな取り組みをしている』という認知向上に役立っています。今までは具体的な活用法や価値が見いだされなかったデータが、工夫次第で大きな価値を生み出すということが認識されはじめました。現在は、ビッグデータをもっとビジネスに活用していこうという機運が高まっています」(菅氏)

今、ポーラがめざしているのは「ニッポン美肌県グランプリ」と「美肌予報」を通じて、顧客一人ひとりがそれぞれ自分に合った、自分だけの美容・スキンケアに取り組む文化を定着させることだ。

たとえば、先に紹介したアペックスは、すでに256万通りのパターンで個別にスキンケア商品を提案することが可能だ。

ならば今後、さらにさまざまなデータを組み合わせることで、より有用な情報を顧客に提供することが可能になるだろう。そして、ビッグデータを活用することの意義がさらに高まれば、ポーラの目標が達成される日はそう遠い将来ではないはずだ。

注釈:
(*1)ニッポン美肌県グランプリ(外部サイト)
(*2)「水蒸気密度」1立方メートルの空気中に含まれる水分量(グラム)を示す値
(*3)美肌予報(外部リンク)(外部サイト)

プロフィール

株式会社ポーラ APEX ブランドマネジメントチーム APEX ブランドマネージャー 菅 千帆子氏

1991年ポーラ化成工業株式会社に入社。美容行為が心理や生理に与える影響を研究し、1994年ISFCCベネチア大会にてAWARDを受賞。その後、株式会社ポーラにて商品やサービスの企画開発などを担当し、2015年より現職。APEXの商品企画開発、広告宣伝戦略、販売第一線教育、物流にいたるまで、全体のマネジメントを担当。

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