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【解説】情報銀行

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個人が自分の情報で利益を得る時代へ

スマートフォンやオンラインサービスが日々の生活に広く浸透したことで、個人の行動・嗜好(しこう)・ニーズなどに関するデータ(以下、「パーソナル情報」と呼ぶ)が毎日大量に生成され、インターネット上に蓄積されるようになった。こうした情報について、匿名性と安全性を担保しながら活用の自由度を高めていけば、より有意義で利便性の高いサービスが誕生する可能性が広がる──。このような考えのもとで生まれたのが、政府も後押しをする「情報銀行」という構想である。

情報銀行は、個人が「提供してもよい」と判断したパーソナル情報を預ける場だ。情報銀行は、個人から預かったパーソナル情報を匿名化したうえで、個人の同意に基づき企業に貸し出す。企業は情報の使用料などを情報銀行に支払い、その情報を使って個人の利につながるようなサービスを開発・提供し、そのサービスによって、情報を預けた個人がメリットを得るというわけだ。

前述の内容を表した図

金融機関並みの信頼性が必要

当然のことながら、情報銀行は、パーソナル情報の厳格な管理・運用に責任を持ち、情報の提供先に関する透明性も保証する必要がある。その意味では、情報銀行を運営する機関には、金融機関と同じレベルの信頼性が求められることになるだろう。

ただ、そうした要件を満たす情報銀行が創設されれば、個人はパーソナル情報を運用してもらうことでメリットを得られ、企業も一定の条件のもとで自由にパーソナル情報が活用できるようになる。

現時点では、企業がパーソナル情報を利用したサービスを考案しても、その開発や提供がスムーズに実現できるとは限らない。個人情報保護法などで法的にパーソナル情報の使用が認められていなかったり、情報の種類によっては使用の可否がグレーゾーンにあったりして使用が難しいためだ。

情報銀行は、こうした個人と企業の課題やジレンマを、解決・解消する機関として有効に機能する可能性がある。

構想実現を政府も後押し

情報銀行は基本的に民間が行う事業とされている。ただし、日本政府も実現を後押ししており、2016年5月20に公表された「世界最先端IT国家創造宣言(改訂)」(*1)のなかでも、日本の社会・産業におけるデータ流通の円滑化と利活用を推進する一手として、情報銀行(「情報利用信用銀行制度」)構想を推進すると明記されている。

政府が情報銀行の実現に意欲を示す背後には、少子高齢化が急速に進む日本にとって、国際競争力の維持や社会・産業の発展のために、IT・データの利活用が不可欠との考え方がある。

また、大学・研究機関も情報銀行実現に向けて動き出しており、そのための組織の一つとして、東京大学や慶應義塾大学が中心となっている「インフォメーションバンクコンソーシアム」(*2)がある。同コンソーシアムでは、「情報を安全に収集・管理する技術」や「情報収集時に個人から許諾を得るしくみ」など、情報銀行の実現に必要とされる技術・しくみの整備を進めている。

民間でも進む「情報銀行」実現への道

さらに、民間でも情報銀行の実現に向けた動きが見られる。

たとえば、大日本印刷は日本IBMや日本ユニシスと共同で、生活者が自らのパーソナル情報を管理し、データの開示先(サービス事業者)を選択できる「VRM(Vendor Relationship Management:ベンダー関係管理)」(*3)の事業を始動した。

VRMのしくみはすでに、経済産業省が構築した訪日観光客のサービス基盤「おもてなしプラットフォーム」に採用されている。これは、観光客が受けたいサービスを見つけてVRMシステムにパーソナル情報を登録すると、当該のサービス事業者に必要な情報が提供されるというシステムだ。

解決すべき課題とは

もちろん、情報銀行の実現には課題も残されている。パーソナル情報の悪用の防止には、より高度なセキュリティー技術が必要とされるほか、情報運用の透明性を確保するには「どの情報が、誰によって、いつどのように利用されたか」を可視化する「預金通帳」のようなしくみも必要になるという。また、情報の管理状態に関する保証や、情報銀行が本人の代理としてパーソナル情報を収集することの可否など、法制上の問題も未解決だ。

とはいえ、これらの課題が解決され、情報銀行が本格的に動きはじめれば、個人は信頼の置ける第三者に自分の情報を預け、悪用の不安がない状態で、自身にとってより快適で役に立つサービスが受けられるようになる。その利は決して小さくないといえるだろう。

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