マーケティング戦略

顧客と直接つながれ![前編]──三井住友海上火災保険がLINEを活用した理由

記事内容の要約

  • 代理店を仲介して商品を販売する損害保険会社も顧客との直接的な接点を求めている
  • プル型の顧客サービスを展開するも、認知は限定的だった
  • LINE活用で顧客満足度の向上と均質的な情報提供を行う
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三井住友海上火災保険株式会社は、国内で6800万人のユーザーを抱えるコミュニケーションアプリ「LINE」を活用した新サービスの提供を開始した。果たしてどのような課題意識のもと、新サービスを導入するに至ったのか。前編ではその背景を探る。

顧客との接点強化が急務

三井住友海上火災保険は、2001年に旧・三井海上火災保険と旧・住友海上火災保険との合併により誕生した損害保険会社だ。2010年にはあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険と経営統合し、国内損害保険市場において第1位の保険料シェアを誇るMS&ADインシュアランスグループ(*1)が発足。現在は同グループの中核事業会社として、国内だけでなくグローバルに自動車、船舶、火災などの損害保険事業を展開している。

日本の損害保険はもともと代理店経由による保険商品の販売がビジネスモデルになっている。しかし、いわゆる“金融ビッグバン”以降の規制緩和により、国内異業種や外資系の企業が国内損害保険市場に続々と参入。それに伴って近年は、代理店を経由しない通信販売型(ダイレクト型)の損害保険が急伸している。

現時点では代理店型が優勢という構図に変わりはないものの、安価な保険料を武器に成長するダイレクト型損害保険は、代理店型損害保険会社にとって脅威になりつつある。そのため損害保険業界では、顧客である保険契約者と直接的な接点をもつことが急務となっており、これは三井住友海上火災保険にとっても例外ではない。

BtoBtoCのビジネスモデルをもつ代理店型損害保険会社
代理店型損害保険会社は保険契約の締結手続きを損害保険代理店に委託している

また、顧客とのつながりを強化していくと同時に、均質な情報を、確実に顧客に提供する体制づくりも求められている。代理店型損害保険会社の場合、保険販売を専業とする個人事業主から、付帯サービスとして保険契約を代行する自動車ディーラーまでさまざまな代理店が存在しており、顧客に均質的に情報を提供することが難しい構造をもつためである。

“プル型”サービスの限界

三井住友海上火災保険はこれまでも、オンラインで契約内容の確認が可能な「お客さまWebサービス」を保険契約者に用意し、直接的な接点を確保してきた。

とはいえ、「お客さまWebサービス」は、同社のウェブサイトに能動的にアクセスし、サービスに登録した保険契約者のみが利用できる「プル型」のサービスだ。ゆえに、このサービスを使ってリーチできる顧客の数には限界があった。

「私たちのプロモーション不足もあり、『お客さまWebサービス』の認知度はなかなか上がらず、同サービスに登録いただくお客さまの数も思うように伸びていませんでした」と、営業企画部 営業IT推進室 課長 メディア企画ユニット長の加藤大輔氏は明かす。

同社にとって、「お客さまWebサービス」は、顧客との重要な接点であると同時に、顧客のメールアドレスを取得するためのインフラでもある。言い換えれば、「お客さまWebサービス」の登録者数が増えなければ、同社が手にする顧客のメールアドレスも増えず、結果、メールマーケティングで直接リーチできる顧客も増えないということになる。

「『お客さまWebサービス』の登録者数を増やし、顧客のメールアドレスをより多く得ることは、当社のCRM(顧客関係管理)戦略・マーケティング戦略上で非常に重要な課題です。その施策を効率的に回すためのチャネルとして着目したのが、国内に約6800万人の登録者をもち、生活インフラとして広く浸透しているLINEだったのです」(加藤氏)


三井住友海上火災保険株式会社 営業企画部 営業IT推進室 課長 メディア企画ユニット長 加藤大輔氏

若年層への訴求力アップにも期待

同社がLINEではじめたサービスは、基本的に保険契約者に向けたものだ。このサービスの利用者は、LINEを通じて、自分の保険の契約内容や代理店情報が確認できるほか、事故時の連絡も行うことができる。

LINEの新サービスの利用者は、自分の保険の契約内容や代理店情報を確認したり、事故時の連絡を行ったりすることができる

提供:三井住友海上火災保険株式会社

また「LINE公式アカウント」を開設すれば、そのアカウントを「友だちに追加」した人に対してプッシュ型で情報を発信できる。つまり、顧客にとって有益な情報サービスを提供することで顧客満足度が高められるというわけだ。

「しかも、膨大なユーザー基盤をもつLINEなら、これまでリーチできなかったお客さまにアプローチし、『お客さまWebサービス』への登録を誘導したり、商品の販促を行ったりといったマーケティング活動が展開しやすいと考えたのです」(加藤氏)

また、若い世代との接点を強化できることもポイントだ。この点について、LINEの導入を推進した営業企画部 営業IT推進室 メディア企画ユニット 課長代理の近藤大輔氏は次のように説明する。

「若者の自動車離れもあり、若い世代のお客さまをどう取り込むかは、われわれに限らず損保業界全体の課題になっています。その点、LINEは若い世代に対する商品訴求力や自社イメージをアップさせるのに最適なメディアといえます」

では、同社のLINEサービスは具体的にどのような機能を提供しているのだろうか。またLINEのサービスをどのようなマーケティング施策につなげようとしているのだろうか。後編で詳しく解説していく。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社(外部サイト)

プロフィール

三井住友海上火災保険株式会社 営業企画部 営業IT推進室 課長 メディア企画ユニット長 加藤 大輔氏

1994年三井海上火災保険株式会社入社(現:三井住友海上火災保険株式会社)。事務企画部門に配属、新規事業の立ち上げに参画後、インターネットを利用したサービスや保険販売の企画・開発業務に携わる。

三井住友海上火災保険株式会社 営業企画部 営業IT推進室 メディア企画ユニット 課長代理 近藤 大輔氏

2004年三井ダイレクト損害保険株式会社入社。主に営業部門、広告部門に従事し、2016年に三井住友海上火災保険株式会社に出向。主にデジタルマーケティング推進施策に携わっている。

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