デジタル広告

Taboolaと語る―激変するメディアビジネス[前編]次世代のデジタル広告とは

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ニュースサイトなどで、最適なコンテンツをユーザーに届ける「レコメンドウィジェット」。ネイティブ広告の型の1つでもあり、デジタルメディアの回遊率を上げる有効な手段としても需要が高まっている。そのレコメンドウィジェットのプラットフォームを開発・提供し、「Yahoo!コンテンツディスカバリー」においてYahoo! JAPANと技術提携しているTaboola(タブーラ)社のCEO、アダム・シンゴルダ氏とYahoo! JAPAN マーケティングソリューションカンパニー経営戦略本部長の高田徹が、これからのデジタル広告について、“あるべき姿”を語った。

鍵をにぎる“パーソナライゼーション”

―アダムさんは、今後5~10年のうちに、レコメンデーションがデジタル広告の次なる主流になると考えていらっしゃるとのことですが、それはどのような理由からでしょうか。

アダム・シンゴルダ(以下 アダム):検索広告とディスプレイ広告が、まったくなくなるとは思っていませんが、見たいテレビ番組や読みたい本を探す必要はなくなり、会うべき人や今日やるべきことなどを考えるのに費やしている時間は、必要なくなると思います。つまり、“パーソナライゼーション”が最大の焦点になると確信しています。私の子どもたちや、その子どもたちは、高度にパーソナライズされた世界で生きていることでしょう。

検索広告が巨大化した理由は、自分が何を探しているのかを知っている場合に、それが人と情報を結びつけてくれるからだと思います。逆にいえば、(検索広告は)何かを探すという行為に守られてきたともいえます。

そして検索広告は、今後もずっと、エキサイティングなビジネスでありつづけると思います。というのも、人は常に何かを探そうとする意図を持つものだからです。ディスプレイ広告は、自然に再発明されると思います。たとえば、Criteoのようなとても優れた会社を見てもわかります。

―パーソナライゼーションの価値は、今後2、3年でどうなっていくと思いますか。

高田 徹(以下 高田):間違いなく、より重要になってきますね。Yahoo! JAPANは長い間PCの世界で生きてきました。当時は検索があり、多くの利益を簡単に得ることができたからです。ですが、技術的にちょっと難しくなりました。というのも、ユーザーの「意図」があらゆる場所に存在するようになったからです。

PCの使用は、起動してユーザーが対面しているときに限られます。つまり、利用時間のピークというものが存在します。ですが、モバイルデバイスがあれば、インターネットは24時間利用可能です。そうなるとパーソナライゼーションは、より難しくなります。というのも、たとえばノートパソコンを開く場合は、検索をしたいときや、何かのタスクを行いたいときにほぼ限られてきていますが、スマートフォンの場合は、必ずしもそうではありません。デジタルマーケティングの施策において、検索広告の割合が下がり、パーソナライゼーションが増えるはずだと考える理由は、そこにあります。

あと10年もすれば、スマートフォンはその持ち主よりもスマートになるでしょう。なにしろ、スマートフォンはインターネットにつながっているのですから。

そうなってくると、一般的なディスプレイ広告は、仕組みを違うものにするべきでしょう。ディスプレイ広告は、効果的な訴求のタイミングというものを考えるべきだと思います。たとえば、1日に1回か、それくらいの頻度で表示するようにするなど、もっとインパクトを強くする必要があると思うのです。限られたときしか表示しないけれど、見る人を強烈に引きつけるとか、見る人を存分に楽しませる、といった形で。

―Taboola社はパーソナライゼーションについてどのような戦略をとっているのでしょうか。

アダム:私たちはレコメンデーションエンジンを開発し、記事の一番下に常にあるウィジェットとしてそれを提供するところから始まりました。しかし、2年後、そのウィジェットでは不十分だと気づきました。高田さんが言っていたように、ウェブと向き合うユーザーの「意図」が大きく変わったからです。

かつてはPCがあって、検索を行えば記事が表示されるというシンプルな動線がメインでした。ところが今では、PCもスマートフォンもタブレットもあり、検索もソーシャルもダークソーシャルも…とユーザーが接するものが増えました。そして、記事、動画、インフォマーシャルなどが断片的に広く存在するため、パブリッシャーはそのすべてを把握しなくてはいけなくなっています。

われわれは、極めて重要になってきたパーソナライゼーションを“ウィジェットからプラットフォームへの革命”と呼び、会社として最も大きな力を注いでいます。特に重要なのが、“次世代のパーソナライゼーション”です。以前は、パーソナライゼーションとは、たとえば私と他の人との差別化だと考えられていました。ですが、次世代のパーソナライゼーションは、1日の間、1週間の間のそれぞれの「私自身」を差別化するものだと今は理解しています。


―「私自身の差別化」とは具体的にどのようなことですか。

アダム:例を挙げると、ニュースサイトの場合、検索から来ても、ソーシャルサイトから来ても、Cookieは同じです。同じ人であっても行動の仕方はそのときどきで異なるはずなのに、すべてに同じ形でニュースサイトの情報を提供するべきでしょうか? 私はそうは思いません。たとえば85%の人はニュースをシェアする可能性が低いのに、ページには、いつでもどこでもシェアボタンがあります。それはスペースの無駄だと思います。

Taboolaの観点からいうと、われわれの投資する次世代のパーソナライゼーションとは、フルページのパーソナライゼーションです。目指しているのは、自分が今ここにいる理由に応じて、今“その瞬間のユーザー”に合わせてあつらえた、多数のバージョンのウェブを作ることです。

われわれの経験では、モバイルでソーシャルサイトから来ている場合、10人中8人は、記事を半分以上は読みません。彼らが記事の一番下の部分を見ることはないでしょう。それならば、わざわざレコメンデーションを一番下に配置する理由はないわけです。80%の人は見ないのですから。

考えなくてはいけないのは、万人が満足するような、ただ1つのデザインをもってしてウェブサイトのデザインを毎年変更するようなことはありえない、ということです。数年のうちに、パブリッシャーは5つ、6つ、もしくは10のバージョンのウェブサイトを持つようになると思います。そうしたサイトは、“その瞬間のユーザー”に応じて変化するのです。

われわれはこの3年間を通じて、“エンゲージメント”、“パーソナライゼーション”、“ウィジェット”の枠を超えたネイティブ広告について考えてきました。最近では、ConvertMediaという会社を買収しました。その狙いは、動画分野にさらに深く進出し、動画とブランド動画を消費者やパブリッシャーに提供すること、さらにはネイティブ広告から得られる収入を増やすことにあります。

テクノロジーと人材のバランス

―日本国内でのパーソナライゼーションへの動きについてはどうでしょうか。

高田:国内にはまだ多くのハードルがあります。特に、広告を扱う人は、従来のマーケティングに慣れきっていますからね。ユーザーや購入のタイミングを追跡できなければ、露出をできる限り多くすることしかできません。それは効率的ではないとわかっていても、何もしないよりはマシということになってしまう―そこに課題があります。だからこそ、技術やインターネットでそのような問題を解決する必要があります。

Yahoo! JAPANも、カスタマージャーニーのすべてを完全にサポートすることはできません。ですから、オフラインデータをオンラインに統合し、活用できるようにすることが、インターネット業界の大きな課題のひとつです。

もう一つの課題は、マーケターがあまりにも多くの情報を持っていることです。たとえば、コンテンツマーケティングの責任者が1人いたとしても、検索に関しては別のチームがあり、ディスプレイにも別のチームがあり、100人の担当者がいるという状況を想像してみてください。マーケティングはというと、1人だけです。つまり、その人をどうサポートするかが、とても重要なのです。マーケター1人ではすべてを解決できませんから。

―では、どのようにすれば効率的にマーケターをサポートできるのでしょうか。

高田:最近、ad:tech Tokyo Internationalというイベントでも、同じようなテーマについて話しました。1年か2年でこの問題を解決するためには、「どんなテクノロジーが必要か」ということではなく、むしろ、「テクノロジーを既存のビジネスに適用できる人材が、どれだけいるか」を考える必要があるのです。テクノロジーで1つの問題を解決することはできますが、それは進化し、変化するものです。ですから、重要なことは、データやテクノロジーを理解して戦略化するための人材を得ることです。広告出稿の予算の5%を削ってでも(笑)、そういった人材に投資するべきだと思いますね。

アダム:とてもいいアドバイスだと思います。

データを戦略化することの重要性

―パーソナライゼーションを進めるにあたり、マーケターはどのような指標を認識するべきでしょうか?

高田:指標はたくさんあります。ただ、「これが最も重要」というような1つの指標は存在しません。

20年ほど前には、デジタルマーケティングで話題にされる指標はそれほど多くありませんでした。クリック数もインプレッションも新しいものでした。まだ、誰もが新聞の発行部数について話していた頃ですから。テレビについては「特定の時間枠で放映される」といっていましたが、視聴率は基本的に、テレビがついているかどうかを測るものですから、テレビをつけておいて、ほかのことをしていても視聴率には反映されます。 広告主側は、実際には見られていなくてもお金を払っているわけです。 


つまりポイントは、1つの数値を選ぶのは効率的のように思えても、実はチャンスを失うこともあるのだということです。

私がマーケティングの責任者だったとしたら、真っ先に雇うのは、データアナリスト、つまりデータの扱いにたけた人です。検索アナリストやディスプレイ広告のスペシャリストを真っ先に雇いたいと思う人が多いかもしれませんが、それは外注できるし、変えることもできます。その人がほかの役割に変わることもできると仮定すれば、私が真っ先に選ぶのはデータです。データを操ることができれば、いろいろなことに応用できるわけですから。

アダム:私も全面的に高田さんと同じ意見です。正しいデータを持っていて、その分析方法と買いたいセグメントを見つける方法がわかっていれば、いまはプログラムもソーシャルもあるし、ネイティブ広告の会社もあるので、サムネイルとタイトルとURLがあれば、それぞれの環境で表示してくれます。自分が何を求めているのかを理解していて、成功を計測する方法を知っていれば、15億人の人にリーチすることも可能なのです。

私が思うに、イノベーションを起こすのは、データを理解し、成功を定義できる人だと思います。

アートとサイエンスの融合

―ところで、デジタルマーケティングにおいては、コンテンツやそのストーリー性により重点が置かれるようになってきました。この分野において、アメリカは進んでいるように言われていますが、いかがでしょうか。

アダム:実際には、まだ初期段階にいると思います。新たなトレンドとして、そうしたことをする新しい広告主も見られるようになっていますが、市場への啓発を含め、まだするべきことがたくさんあると思います。アメリカでさえそうです。

いまだにCMOはディスプレイと検索が2本柱だと考えていて、予算の80~90%をそこに投入しています。あとは実験です。CMOが何よりもデータを重視し、成功するための新しいチャンネルを考えるような域には、まだ達していないと思います。

―ストーリーテリングを成功させるためには、どんなことが必要でしょうか。

アダム:ストーリーだけでは、仕事半分です。残りの半分はデータです。「何が起きたか」「いつ・誰がそのストーリーを読んだか」を測定しなければ、たとえ素晴らしいストーリーであっても失敗する可能性もあります。何かを書いて、ホームページに記事を掲載して、あとは幸運を祈るだけというのは、やや古い考え方です。しかし、そのストーリーのまわりに属性モデルを構築し、ストーリーがいつ成功して、いつ成功しなかったのかを知り、うまくいったところでは拡大して、うまくいかなかったところでは縮小するようなことができれば、ストーリーテリングは機能すると思います。

ただ、残念なことに、ほとんどの人はストーリーテリングをはじめる際に、いまだに20年前のやり方にとらわれています。革新的なマーケターは、ストーリーの価値をしっかり測定しています。そうすることで、次にどのようなストーリーを書けばいいのか、ストーリーの見出しやサムネイル、構成をどのようなものにすべきかを把握しているのです。ですから、ストーリーテリングは、データを加えてはじめて完結するのです。

高田:同感です。たとえば、私の仮説ですが、100の完璧なストーリーがあったとしても、感動を呼ぶのは、きっと1つくらいです。つまり、生き残れるのは最高のなかでも最高のものだけで、ほかの99%は、どうすればほかよりよくなれるのか、データを調べる必要があるのです。「最高のストーリーテラーになる」というのは、賭けのようなものです。それはマーケティングではなく、むしろアートだと思います。

アダム:ストーリーテリングをアートとしか捉えられないようであれば、おそらく戦略は失敗するでしょう。しかし、ストーリーテリングをアートとサイエンスの融合と捉えれば、成功するチャンスは高くなるはずです。つまり、私たちのビジネス全体は、アートとサイエンスを理解する人の上に成り立っているのです。

後編では、デジタルビジネスの変化の波を受け、企業再編などがニュースで取り上げられているパブリッシャーの今後についてお送りする。

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プロフィール

Adam Singolda(アダム・シンゴルダ)

Taboola社CEO。7年間イスラエルの国防軍諜報部に在籍後、2007年にTaboola社を設立。

高田 徹

Yahoo! JAPANメディア・マーケティングソリューションズグループ マーケティングソリューションズカンパニー 経営戦略本部長。 IAB Tech Labのエグゼクティブ・コミッティーのボードメンバー兼ファウンディングメンバー。

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