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Taboolaと語る―激変するメディアビジネス[後編]パブリッシャーが生き残る条件

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プラットフォーマーの出現などにより、メディアビジネスの様相が劇的に変化しているなか、パブリッシャーが生き残っていくための条件とは何なのか。レコメンドウィジェットを開発・提供し、「Yahoo!コンテンツディスカバリー」の技術提携先であるTaboola(タブーラ)社の最高経営責任者(CEO)、アダム・シンゴルダ氏とYahoo! JAPAN マーケティングソリューションカンパニー経営戦略本部長の高田徹が、パブリッシャービジネスの目指すべき方向について語った。

パブリッシャーのグローバル化

―新聞社や雑誌社といったパブリッシャーのデジタルシフトに伴う企業再編の動きが著しくなってきています。日経新聞のFinancial Timesを買収などは、記憶に新しいところですが、このようなグローバル化の動きをどのように見ていますか。

アダム:積極的にグローバル展開をめざす人たちは世界中に多く存在します。アメリカ以外に多いですね。たとえば、インドのような市場には、英語が読めるオーディエンスがたくさんいますね。オーストラリアもそうです。

オリジナルの言語で読まれることがステップ1だとすると、ステップ2は、別の言語にコンテンツを翻訳することです。たいていは、規模の大きい市場を選ばれます。日本語への翻訳を試みている人たちもいます。彼らはすでに独自のビジネスモデルを持っているので、メトリックスやデータの活用法も確立されています。そのため、新しい市場に進出して、同じように成長するためのアドバンテージを持っているのです。簡単なことではありません。ですが、グローバルに広告を展開している人たちは、間違いなくいます。

高田:コンテンツは、特に動画の分野でグローバル化が進むでしょうね。動画は比較的、翻訳が簡単です。テキストがある場合は、読むのが難しいですが、オリンピックのようなスポーツイベントや、音楽などであれば、受け入れられやすいでしょう。

―Taboolaは欧米やほかの外国市場でパブリッシャービジネスを支援していますが、グローバライゼーションを成功させるためには何が必要でしょうか。

アダム:最終的には、どんな人と仕事をするかに尽きると思います。投資したいと思うような良いパートナーとチームがいて、失敗をしながら、革新を起こし、スピードをあげ、そして最終的に成功を収めるのです。当社の戦略的パートナーであるNBCUniversalも、その一例です。当社はスポンサードコンテンツからネイティブ広告、パーソナライゼーションまで、さまざまな面で戦略的に提携しています。重要なのはパートナーシップと文化的な決断です。革新に乗り出し、変化を起こし、ABテストをしようと決断したら、成長を続けるための道を見つけ出せるはずです。凝り固まって変化を嫌っていたら、結局は負けてしまうと思います。

―新聞社・雑誌社といった旧来のパブリッシャーの苦戦について、一番大きな問題は何でしょうか。

高田:日本における新聞社の問題の1つは、規模が大きすぎるということです。アメリカでは、New York Timesのような新聞社でさえ、極めて小規模です。たとえば、(日本の)新聞社の年間の販売部数は、最大のものでおよそ1800万部。あまりにも規模が大きすぎます。テレビ局も傘下にいます。そのせいで、ちょっと動きが遅くなってしまっているのだと思います。彼らに必要なのは、そうした状況を変えられる専門の誰かです。若い人やイノベーティブな人は増えているのですから、データの専門家を雇うべきです。

アダム:「データの専門家を雇え、さもないと失敗するぞ」というのは、まさに真理だと思いますね。

プラットフォーマーの出現

―メディアビジネスではFacebookやLINEなどのいわゆる「プラットフォーマー」が参入し、広告売り上げの多くを占めるようになっています。アダムさんは、パブリッシャーやマーケターにとってFacebookが良き教師になると語っていますね。それはどういう意味ですか?

アダム:Facebookはウェブを2つの部分に分けていると思います。1つは「壁に囲まれた庭」的な領域で、この領域では、消費者全体が彼らの所有するエリア内で活動しています。もう1つは、インターネットのそれ以外の部分、つまりオープンなウェブです。私はオープンウェブを美しいと思っています。

Facebookには2つの面があります。1つは、広告主に莫大(ばくだい)な価値を提供しつつ良質の広告体験という点で、ユーザーを尊重するインフィードのネイティブ広告が強力な広告製品になるということを、私たちに教えてくれています。そして、Facebookの業績は四半期のたびに、投資家の予想を上回るという成長を続けています。つまり、インフィード、無限の広告体験、迅速なスクロール体験、迅速なモバイル体験が、うまく機能しているということです。

しかし、もう一方で、Facebookはオープンウェブの一部を取り込み、Facebookという王国内に閉じ込めるものだという点もあります。「Instant Articles(インスタント記事)」は良いユーザー体験をもたらしますが、ジャーナリズムの将来にとっては極めて危険な動きでもあります。 

また、厳密にいえば、Facebookはコンテンツを作っているわけではありません。コンテンツはすべて、ほかのパブリッシャーが作ったものです。Facebookはサイト内でそれらをマネタイズしているので、パブリッシャーに流れる利益は限られています。

つまり、私がいいたいのは、CMOとパブリッシャーに必要なのは、強力な製品を持つFacebookから良いところを盗むということです。私たちは、迅速に行動を起こして、パブリッシャーとしてのマネタイズ手法を改良し、Facebookの外にある私たちのサイトにオーディエンスを誘導する方法を見つけなければならないのです。

Yahoo! JAPANのような会社は、そのために欠かせない1ピースだと思います。というのも、オーディエンスを誘導し、パブリッシャーにお金を払っている、つまりソリューションの一部だからです。


高田:パブリッシャーがそうしたプラットフォームのルールにどのように対応するかは、大きな判断になると思います。ここは興味深いところですよね。Facebookの世界の一員になりたいと望むのか、それともオープンウェブを信じるのか―。それこそが戦略だと思います。

パブリッシャーがFacebookの一員になりたいと望むのなら、幸運を祈るだけですが…(笑)、Buzzfeedのようにプラットフォームに対して中立的な立場をとり、依存しすぎないようにしようとしているところもあります。もちろん、BuzzfeedはFacebook以外からも多くのトラフィックを得ています。たとえば、Pinterest、Twitter、あるいはSnapchatからも。ですから、考え方によっては、Buzzfeedは一つのプラットフォームに依存していないという点で、優れているといえるでしょう。

―日本のパブリッシャーの多くは、プラットフォーマーにどう対処するべきか、決めかねているのではないでしょうか。

アダム:問題は、FacebookのInstant Articles(インスタント記事)と関わりたくないと思っても、それではトラフィックを得られなくなる可能性があるという点です。ですから、チャネルを多様化し、訪問1回あたりの収入を理解し、さまざまなトラフィックソースの価値を理解し、別のソースを得る必要があります。

ネイティブ広告やその他のコンテンツマーケティングの取り組みは、その解決に向けた一歩だと思います。Taboolaが強く主張しているのは、プラットフォームに依存するべきでないという点です。オープンウェブをもっと強固なものにするために、パブリッシャーは団結するべきではないでしょうか。

非常に素晴らしいマネタイズの方法を見つけたFacebookやソーシャルメディア会社には、惜しみなく賛辞を贈ります。私たちも学ぶものがあります。しかし、そこに依存しすぎないようにするべきです。

高田:Taboolaは心底パブリッシャーを支援しようとしていますよね。Yahoo! JAPANやBuzzfeedのように、十分な規模の大きさがある会社なら、独自の開発者を雇って、たとえばBuzzFeedやレコメンデーションエンジンのようなものを開発できるかもしれません。しかし、すべてのパブリッシャーがそうできるわけではありません。だからこそ、パブリッシャーには強力なパートナーが必要なのです。それが、Taboola社と提携した理由です。

最後に勝つのはオープンウェブか?

―今後、Facebook のようなクローズドのメディアと、オープンなウェブメディアは、互いに近づくと思いますか? ビジネスの規模という点で、誰が勝者となり得るのでしょうか?

アダム:私はとても楽観的なので、目を覚ましてすぐ勝つための戦闘モードに入れますよ(笑)。それはさておき、私が思うに、日本の市場には大きなチャンスがあると考えています。Yahoo! JAPANは、ほかのパブリッシャーと協力できますし。

Googleのようなしっかりした会社は、最終的には、ナンバーワンのトラフィックソースになり、ナンバーワンの収入源になるでしょう。Yahoo!コンテンツディスカバリーは、日本でYahoo! JAPANとともに、そうした組織になることができると考えています。オーディエンスにとってナンバーワンのソースになり、パブリッシャーがそれをもとに成長するのを支援できます。

つまり、“従来型の広告”、大きな収入を提供する“反応性の高いコンテンツ”、そしてYahoo! JAPANやそれ以外からオープンウェブに来る“オーディエンス”というウェブの基本要素を最適に組み合わせることが可能なのです。

Taboolaは約2万社のメディア企業と提携し、企業として極めて急速に成長しています。オープンウェブを結びつけられれば、もっと強くなれるはずだと考えています。


高田:オープンウェブの推進に関しては、私もまったく同じ考えですね。これはYahoo! JAPANとしてではなく、私の個人的な意見ですが、少なくとも3年から5年のうち、つまり2020年くらいまでは、アプリだけでなくウェブとも共存する世界が続くでしょう。
しかし、10年後には、オープンなウェブが再びスタンダードになると思います。

たとえば、PCの歴史を思い出してみましょう。まず、いくつかのタイプのOSが登場し、特定のバージョンのOSでのみ機能するアプリも登場しました。その後、ブラウザーが登場したことで、OSに依存しない形でサービスが利用されるようになりました。当初は、技術が十分に洗練されていなかったため、ウェブやウェブアプリケーションであらゆる作業はできませんでした。そして、さまざまなリーディングカンパニーがウェブの世界にイノベーションを起こし、今ではブラウザーであらゆる作業をできるようにしたという経緯があります。スマートフォンでも同じ歴史をたどるのではないかと予測しています。

―ありがとうございました。

プロフィール

Adam Singolda(アダム・シンゴルダ)

Taboola社CEO。7年間イスラエルの国防軍諜報部に在籍後、2007年にTaboola社を設立。

高田 徹

Yahoo! JAPANメディア・マーケティングソリューションズグループ マーケティングソリューションズカンパニー 経営戦略本部長。IAB Tech Labのエグゼクティブ・コミッティーのボードメンバー兼ファウンディングメンバー。

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