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バーチャルリアリティ(VR)市場のプラットフォーム――急騰するVR市場を追う(2)

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「バーチャルリアリティ(VR)の市場構造」では、VR市場のデバイスレイヤーについて考察した。今回は、VRコンテンツのプラットフォームレイヤーに目を向けてみよう。

前回、サムスン製のVR機器の事例を引き合いに出したとおり、VR市場はコモディティ化のスピードが非常に速い。さらに、高機能・高価格から低価格の商品まで、分散化も進んでいる。

そこで、VRをマネタイズするために有効な戦略の一つが、「プラットフォームの構築」である。多様なデバイスに対応してユーザーの利便性を上げることで、ユーザーに加え、コンテンツ制作者からも支持を集めることができる。では、各社のプラットフォーム戦略を見てみよう。

メーカーのプラットフォーム

VRの視聴機器メーカー3社は、おのおのプラットフォームを構築し、ユーザーと開発者向けにマーケティングを展開している。ソニーはPlayStation(*1)、OculusはOculus Store(*2)があり、HTCはHTC VIVE Port(*3)を開始すると発表している。

他に、独立系として米国ValveのSTEAM(*4)がある。もともとゲーム開発会社だったValveが始めたPCゲームの配信プラットフォームSTEAMは、1.25億人のアクティブユーザーがおり、4500タイトル以上のゲームを配信している。HTCと提携しているため、HTC VIVEのゲームはSTEAM VRで配信される。

黎明(れいめい)期にあるVRゲーム市場のユーザー向けマーケティングは、まず、人気映画や人気ゲームのVR版などのライセンスビジネスがその成長の鍵を握る。今までのゲームファンや映画ファンがVR版に興味を持ち、購入すれば、VR市場は成長し、コンテンツホルダーも潤う。

VRのプラットフォーム市場

提供:志村一隆

また、開発者向けのマーケティングでは、各社の持つ技術の開放が重要である。資金力のないデベロッパーにとって、プラットフォームが保有するVR向けセンサーやモーショントラッキングの技術を利用できれば、新たなコンテンツ開発が容易になる。

VALVE社はSteamVR トラッキングを無料で開放しており、アカウントを登録するだけで簡単にデベロッパーツールを利用することができる

たとえば、STEAMを運営するVALVE社は自社のトラッキング技術の利用をオープンソース化し、SteamVR(*5)で無料開放している。こうした施策により、HTC VIVE(*6)向けのVRコンテンツの開発が促進される。

2者の戦略

これら3社と競合するのがYouTube、そしてFacebookである。両者とも、VR以前に既存市場のルールを変えてきた企業である。Facebookの初期成長の原動力は、「FarmVille」(*7)というソーシャルゲームだった。コンソールが主流のゲーム市場に、スマートフォンでプレイするカジュアルでソーシャルメディアがベースとなる分野を開拓し、Facebook向けコンテンツ制作を自社でなく第三者に開放するなど、市場ルールを変えてしまった。

また、YouTubeもコンテンツ制作を一般ユーザーに開放することで、テレビや映画会社しかプレーヤーのいなかった映像市場を一気に塗り替えた。

FacebookやYouTubeのコンテンツ開発は、一般の消費者が主役である。1時間に10億時間分増え続けるYouTubeの動画、毎月10億回以上投稿されるFacebookのコンテンツ。このボリュームがゲームのルールを変える原動力だった。もし、これらのコンテンツの1%だけでもVRの360度映像になれば、大きな市場が生まれる。

Facebookは、一般ユーザー向けにFacebook360というページを開設し、360度映像のアップロードの仕方や、手ぶれ補正のソフトなどを公開している。また、GoogleはDAYDREAMという名前で、VR向けビジネスをブランド化している。DAYDREAMは、Android向けVRゲームの開発者向けコミュニティーである。

大量のコンテンツによって、VRの消費者を増やすYouTubeとFacebook。VRをゲームだけでなく360度映像にまで、その領域を拡大すると、この2者はメーカーのプラットフォームにとって、脅威となる競合プレーヤーである。

VRを利用したリアルな体験

こうしたプラットフォーム以外に、リアルな機器を製造し、販売するプレーヤーもいる。

たとえば、米Virtuix社のOmni(*8) は、トレーニングジムにあるランニングマシン(トレッドミル)のような器具やシューズとともにVR機器を販売する。Omniは、クラウドファンディングで100万ドル(約1億円)を集め商品化された。ショッピングモールやイベントへの貸し出しや、ライセンス販売などのビジネスが考えられる。

また、スウェーデンのゲーム制作会社Starbreeze(*9)は、IMAXと提携し、VRシアター展開を開始する。Starbreezeは同社のVRの専用機器(HMD)StarVRを台湾Acerと開発する。競合の激しいB2C市場だけでなく、大手劇場チェーンと提携し、B2B2Cで新たなマネタイズ手法を開発中だ。

ほかにも、ボストンのベンチャー企業Virzoom(*10)は、VRと結びつけた室内バイクを開発している。VR映像には、馬に乗った競争や自動車競争が映し出され、ペダルを速くこぐと、馬や自動車が速く進む仕掛けになっている。VRゲームをしながら、体力増進にも役立つことも狙っている。こうした体験サービスも、VRのマネタイズ手法として注目していいだろう。

VRをマネタイズするプラットフォーム

プラットフォームの成長は、ユーザーフレンドリーなインターフェースと、対応ハード機器の普及台数に依存する。モバイル時代のわれわれがいつも考えなければいけないのは、スマートフォンである。VRも例外ではない。

かつてゲーム市場は、各メーカーのコンソールの販売台数がそのままプラットフォームの強さであった。しかし、スマートフォンの登場で、「PlayStationやxBOXといったゲームコンソールすべて」に対する、「すべてのスマートフォン」という競争軸に変わってしまった。

この競合関係は、そのままVRのB2C市場にも持ち込まれる。GoogleやFacebookなどのプラットフォームとハード依存のVRサービスとが競合する。

ここまでの話をまとめると、現状VRのマネタイズ手法には、ゲームや360度映像のようにスマートフォンや専用機器で楽しむコンテンツを提供するビジネスと、OmniやVirzoomのような遊園地やショッピングモールのアトラクションとして提供するビジネス、大きな二つの領域があることになる。

次回は、VRのコンテンツレイヤーについて考えてみたい。

注釈:
(*1)PlayStation(外部サイト)
(*2)Oculus Store(外部サイト)
(*3)HTC VIVE Port(ブログでの紹介ページ)(外部サイト)
(*4)STEAM(外部サイト)
(*5)SteamVR(外部サイト)
(*6)HTC VIVE(外部サイト)
(*7)FarmVille(外部サイト)
(*8)Omni(外部サイト)
(*9)Starbreeze(外部サイト)
(*10)Virzoom(外部サイト)

著者プロフィール

ジャーナリスト 志村一隆

1991年早稲田大学卒業、WOWOW入社。2001年にケータイWOWOWを設立、代表取締役就任。2007年から情報通信総合研究所で主任研究員。2014年ヤフー株式会社勤務後、2015年からフリー。 2001年Emory大学でMBA、2004年高知工科大学で博士号取得。著書に「明日のテレビ」「ネットテレビの衝撃」「明日のメディア」「群像の時代」など。

「独立メディア塾」(外部サイト)に寄稿。

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