マーケティング戦略

IoTで旨い米をつくるクボタ式農業[前編]――キーワードはKSAS

記事内容の要約

  • IoT、クラウド利用の農業支援サービス「KSAS」を始動
  • KSAS開発の背後にある日本の農業の構造的な問題と変化を熟知
  • データによる経営の“見える化”で、データ駆動型農業を実現
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クボタは2014年から、農業機械とITを活用したクラウドベースの農業経営支援サービス「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」を提供している。これは、勘と経験が頼りだった日本の農業を「データ駆動型」へと大きく変容させる可能性を持ったサービスだ。では、すでに1300軒以上の農業事業者に導入されているKSASは、日本の農業経営を具体的にどのように変えようとしているのか。

IoTで生かす農機メーカーの強み

1890年に創業したクボタは、水道用鉄管、農工用エンジン、工作用機械といったさまざまな製品を世に送り出してきた機械メーカーだ。年間の売上高は1兆5000億円を超え、そのなかでも農業機械は国内トップシェアを誇る。長年にわたって日本の農業の効率化・軽労化を支えてきた企業として広く知られているが、近年は、これまでに蓄積した技術を応用し、新事業領域を積極的に開拓しはじめている。

その1つとして、農業機械とITを融合させた新しい製品やサービスの提供があげられる。代表的なソリューションが、2014年6月に提供を開始したクラウドベースの農業経営支援サービス「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」だ。

「当社は農業機械メーカーの強みを生かし、さまざまな農業の課題を解決する『アグリソリューション』の事業化を推進してきました。また、それと並行するかたちで、農業機械の事業部門ではIoTやセンサーの技術開発・応用を進めています。KSASは、これらの取り組みを一体化させたサービスで、部門横断型のプロジェクトとしてスタートし、事業化にいたりました」と、クボタ アグリソリューション推進部 KSAS業務グループ長の長網宏尚氏は振り返る。

アグリソリューション推進部 KSAS業務グループ長 長網宏尚氏

アグリソリューション推進部 KSAS業務グループ長 長網宏尚氏

日本の農業の課題解決に真っ向から取り組む

日本の農業の就業人口は過去5年間で50万人も減少し、農業従事者の平均年齢はすでに66歳を超えている(*1)。また、農産物の輸入自由化や米の生産調整を行う減反政策なども、日本の農家を圧迫してきた。

しかしここにきて、こうした疲弊したイメージのある農業にも、変化・改善の兆しが見えはじめている。たとえば政府も、減反政策の廃止をはじめとする、日本の農業を成長産業に転換するための施策をさまざまに打ち出している。

これにより農業の大規模化や農作物の高付加価値化といった取り組みが進展を見せ、法令に基づく認定を受けた「担い手農家」(認定農業者)や、法人形態で大規模な農業経営を行う事業者が登場し、増えはじめているのだ。

「こうした農業事業者は、日本の農業改革の中心的な存在です。しかし、彼らの目の前にもTPP(環太平洋経済連携協定)による農産物自由化の荒波が迫っており、経営の効率化とコスト競争力の強化が急務となっています。そうした農業事業者の経営を支援するために生まれたサービスがKSASです」(長網氏)

農業経営を“見える化”して効率化を実現

KSASのサービスは、大きく、「基本コース」と「本格コース」の2つに分かれている。

まず基本コースは、農業経営の“見える化”ができるコースだ。

農作物を栽培する圃場(ほじょう)ごとの作付け計画や作業内容、さらに利用する農薬・肥料などの情報を経営者が入力すると、それらがクラウド上で集約され、作業記録(栽培履歴)や帳票作成業務を簡略化する。また、圃場の作業者がスマートフォン経由で日々の圃場での作業記録・進捗(しんちょく)を入力することで、経営側はそれらをつぶさにとらえることができる。

一方、本格コースでは、基本コースの機能に加えて、Wi-Fi機能とセンサーを搭載したKSAS対応の農機と連動し、圃場ごとの米の収穫量・品質(食味・水分量)などをリアルタイムに収集・確認できる。これらのデータを、翌年の農作業で、どのタイミングでどのように肥料を与えるかという計画に役立てていけば、収穫量や品質の安定化・向上を図ることが容易になるのだ。

KSAS対応のコンバイン

KSAS対応のコンバイン

そんなKSASの開発プロジェクトは2011年にスタートし、2014年6月にサービスを開始。現在、ブランド米などの高付加価値農産物の生産を志向する、意識の高い農業事業者を中心に普及しはじめている。

「2016年8月時点で約1300軒の農業事業者に利用してもらっています。農業機械と連動した、高度なデータ分析の実利用率も徐々に高まり、経営者からの評判も上々です」と、長網氏は付け加える。

これまで、長年の勘と経験に頼りがちだった日本の農業は、就業人口の減少・高齢化、そして後継者不足が進むなかで、そのノウハウの喪失が懸念されていた。「データを軸に経営を回していく」というデータ駆動型の考え方を取り入れたKSASは、そうした状況を徐々に変えつつあるが、その背後には「農業支援のデータ活用」に徹底してこだわるクボタならではのアプローチがある。後編では、そのアプローチを掘り下げていきたい。

前編を読む | 後編を読む

注釈:
(*1)農林水産省「農業労働力に関する統計」(外部サイト)

プロフィール

長網 宏尚

株式会社クボタ アグリソリューション推進部 KSAS業務グループ長 長網 宏尚氏

1998年株式会社クボタ入社。国内農業機械の営業本部に所属し、グループ農機販売会社向けの営業(近畿エリア)を担当。その後、グループ農機販売会社へ出向、製品企画、新規事業企画を経て、2013年より現職。2014年、クボタスマートアグリシステム(KSAS)が、第12回エコプロダクツ大賞推進協議会会長賞(優秀賞)を受賞。

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