マーケティング戦略

IoTで旨い米をつくるクボタ式農業[後編]――スマホでの生産管理を可能に

記事内容の要約

  • 部門横断で農業経営支援のために必要なデータの種類や使い方を検討
  • 農業機械IoTで「売れる商品を安定して供給する」しくみづくりを支援
  • 有用なデータを見極めるためにも大量のデータを収集
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農業×ICT、IoT、そしてビッグデータの力を日本の農業改革に生かす──。こうしたコンセプトのもとで開発されたクボタのクラウド型農業支援サービス「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」は、先進的な農業事業者を中心に導入が進んでいる。特に、農業機械のセンサーデータを農業の生産効率・経営効率の向上に活用するというアプローチは、クボタならではの取り組みとして注目を集めている。

農業に必要なあらゆるデータを集約

「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」の提供開始は2014年。その開発にあたり、クボタでは、農業機械の開発部門や技術部門、研究部門、サービス部門、営業企画部門、さらにシステム開発部門に渡る、部門横断のプロジェクトチームを組織した。このプロジェクトで、農業経営の効率化に必要なデータ項目を洗い出し、KSASで扱うデータの種類、収集のプロセス・技術、使い方などが決定されていったという。

たとえば、農業経営のベースとなるのが、作物を栽培する田畑である「圃場(ほじょう)」だが、それを管理する場合、KSASユーザーはGoogle Mapを使ったデジタルマップ上で圃場の範囲を指定し、住所・面積・土質・所有区分・作付け計画などの情報を入力。これによりまず、管理すべき圃場の情報を目に見える形で把握できる。

KSASの管理画面

KSASの管理画面


次に、栽培する作物・品種ごとに圃場を選択し、その際に使用する農薬や肥料などの情報を入力しておく。

経営者は日々の作業指示を立案し、作業者はその計画に沿って作業を遂行、スマートフォンを使って作業記録などを入力する。これにより、経営者は作物ごとの作業記録、進捗管理、圃場ごとの特性情報を把握できる。

作業終了後、事務所へ戻ってから作業記録をつけていたのでは、どうしても記憶が曖昧になり、記録としての正確さが担保できない。そのようなときに、スマートフォンを使った進捗管理が現場でできれば、すぐに記録に残せるし、入力する側にとって手間も省ける。

スマートフォンを活用した進捗管理の画面

スマートフォンを活用した進捗管理の画面

センサーデータの活用で旨い米の計画的生産が実現

このような、農業従事者を経営面で支援するしくみに加えてもう1つ、クボタならではの特色といえるのが、農業機械のセンサーデータとの連携だ。

「当社では、トラクタや田植え機、コンバインにKSAS対応機種を用意しています。これらの農業機械を利用すると、たとえば、圃場ごとに計画どおりの肥料散布や農薬散布ができるようになります。また、コンバインには収穫量だけではなく、収穫米のタンパク質含有率・水分量を検知できるセンサーが搭載されており、それらから収集したデータを生産効率の維持・向上に活用できます」と、クボタ アグリソリューション推進部 KSAS業務グループ長の長網宏尚氏は説明する。

たとえば、米は6%前後のタンパク質を含んでいると味がよく感じられる。そこで、収穫時に収集したセンサーデータを作付け計画の記録と照合・分析し、タンパク質の含有量をその範囲におさめるよう、肥料の使用量などを次年度の作付け計画に反映すれば、翌年の米の品質向上を図ることが可能になる。つまり「売れる商品を安定して供給する」という製造業の生産管理に近い手法を、農業でも実現できるようになるのだ。

さらなる普及と継続利用を推進

2014年からはじまったKSASは、2016年で3年目を迎えた。長網氏は、KSASのさらなる普及と継続利用の推進が最大の課題だという。

「農業のサイクルは、基本的には1年間です。したがってKSASをより多くの農業事業者に利用していただき、それぞれの利用年数が積み重ねられていかないと、収集データ分析が優れたナレッジへとつながっていきません。また、現状でもさまざまなデータを収集していますが、施策にとって有効なのはどのデータなのか確実に把握するためにも、さらに多くのデータ収集と実証、検証が必要だと考えています」(長網氏)

そのために、たとえばサポート窓口に問い合わせがあった場合、技術者が現地におもむいて農業事業者と直接話をしたり、扱うデータの幅を栽培・気象データなどへも広げたりするなど、必要と思われるデータの収集には余念がない。

「さらに、KSASは現在、稲作事業者がメインのターゲットですが、今後は稲作だけでなく他の作物へも拡張していきたいと考えています」(長網氏)

このほか、クボタでは、ドローンを活用した農薬散布や、将来的にはKSASと連動できるドローンを開発し、精密農業へも取り組んでいく。

クボタがめざすのは、単なる農業機械メーカーではなく、農業経営を全方位で支援するソリューションプロバイダーだ。日本の農業は、データ活用によって今後どこまで変わっていくのか。日本の将来像にも関わる問題として、これからも「データ駆動の農業」は大きな注目を集めていくことだろう。

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プロフィール

株式会社クボタ アグリソリューション推進部 KSAS業務グループ長 長網 宏尚氏

1998年株式会社クボタ入社。国内農業機械の営業本部に所属し、グループ農機販売会社向けの営業(近畿エリア)を担当。その後、グループ農機販売会社へ出向、製品企画、新規事業企画を経て、2013年より現職。2014年、クボタスマートアグリシステム(KSAS)が、第12回エコプロダクツ大賞推進協議会会長賞(優秀賞)を受賞。

 
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