マーケティング戦略

B.LEAGUE、デジタルマーケティング施策も開幕へ [前編]――見えてきたリアルな課題

記事内容の要約

  • B.LEAGUEが2016年9月に開幕、デジタルマーケティングも“実戦”フェーズへ
  • 戦略の起点は、統合データベースと連携したチケット購入アプリの「Bリーグスマホチケット」
  • アプリの本格稼働で見えてきた「リアル」な課題
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顧客データの活用によって、日本のスポーツビジネスの新しい成功モデルを構築しようと活動する男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」──。2016年9月22日に開幕し、リーグ、そして業界全体を巻き込んだデジタルマーケティング構想がいよいよ“実戦”の段階に突入した。その現在地とこれからを、B.LEAGUEのスマートフォン向けアプリ「Bリーグスマホチケット」を中心に追ってみたい。

華々しいリーグ開幕と新たな課題

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(以下、B.LEAGUE)(*1)が9月22日に開幕した。トップリーグであるB1、その開幕2節の観客動員は36試合中20試合が満員となり、第4節までの観客動員も昨年と比べて1.5倍を達成した。

「このペースでいけば、B1クラブ年間集客目標の170万人を上回る見込みです」と、B.LEAGUE マーケティング部長の安田良平氏は話す。

9月22日に行われたB.LEAGUE開幕戦の様子。テレビ中継も行われ、大いに盛り上がった

写真提供:B.LEAGUE

ただ、そう語る安田氏は「開幕当初の観客動員が、ある程度の結果を残すことは見えていました」と、至って冷静だ。事務局長の葦原一正氏もこう続ける。

「プロのスポーツリーグが新たに立ち上がるということで、開幕前にはメディアでの露出も多く、各クラブも気合いを入れて集客に努めていました。ですから、開幕後の数戦において観客動員が好調なのは当然の結果といえますし、逆に、節を重ねるごとにすでに集客に陰りも見られています。かなり気を引き締めて事に当たらなければ、すべてが“打ち上げ花火”で終わるおそれがあるということです」

掲げる目標は「非連続的な成長」。そのためには開幕直後の人気を市場に定着させること、そして、リーグのファン層を広げることが必須であり「マーケティングについてもこれからが本当の勝負」と、葦原氏は語気を強める。

動きはじめたスマホファースト戦略

B.LEAGUEは設立当初から、マーケティング戦略の中心を「顧客データの収集・活用」に置いている。リーグが主導して構築し、各チームが持っているファンクラブやチケット販売、EC、来場者のデータを集約している「統合データベース」を中心に、あらゆるタッチポイントのデータを蓄積していく取り組みを展開中だ(参照記事:競技人口4.5億人! バスケットボールを盛り上げるB.LEAGUEのデジタルマーケティング戦略)。

目指すのは、統合データベースに入っている顧客に対し、最適化(パーソナライズ)された情報/サービスの提供と、それを通じて顧客のロイヤルティーの醸成やファンの定着・拡大につなげていくことだ。

メインターゲットである10代~30代の若年層が、いわゆる「スマートフォン世代」であることから、B.LEAGUEはスマートフォンを中核のツールとして位置づけている。

葦原氏は「この年代は、40代以上の層に比べてバスケットボール観戦に対する関心が相対的に高い」とその特徴を話す。さらに、この世代にはスマートフォンが日常生活に深く入り込んでいる。「ですから、スマホ中心の施策を考えていく決断を下したわけです」(葦原氏)。

Bリーグスマホチケットを利用し購入したチケットで入場する際は、スマホをかざしてスタンプを押すだけだ

写真提供:B.LEAGUE

そんな“スマホファースト”戦略に沿って、B.LEAGUEが7月に公開したのが電子チケットシステム「Bリーグスマホチケット」(*2)だ。これは、観戦チケットをアプリ上で購入可能でき、会場では入場券の代わりにもなるというもの。また、アプリ画面をチームカラーにカスタマイズできるなどの機能を備えており、クラブのプロモーションの場にもなる。

このアプリは先のデータベースと密につながっており、チケット購入する際に利用するB.LEAGUE会員IDや各チームのファンクラブ会員IDがパーソナライズのカギとなる。

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ マーケティング部長 安田良平氏

「これまでのスポーツチケットの課題は、プレゼントや招待などで誰かからチケットをもらったりすることで、チケット購入者と来場者が必ずしも同一ではなく、誰が来場したのか特定できなかったことです。それがわからなければ、リピーターを増やすといった基本的な集客施策すら打てません。このアプリは、その問題を解決するための一手で、来場者のデータをしっかりと収集・把握し、のちのパーソナライズ戦略につなげる起点となるものです」(安田氏)

実戦で見えてきた課題

リーグが開幕し、アプリ利用も本格的にはじまった。安田氏は「利用者の多くが10代~30代で占められるなど想定どおりの動きが見られる一方で、ダウンロード数を含む当初設定したKPIは残念ながら未達成です」と明かす。

立ち上がりの鈍さの要因としては、アプリ自体の認知度がまだまだ低いことが挙げられるという。また、自身の個人データを入力させるハードルも決して低いとはいえず、課題を一つひとつクリアしている状態だという。

たとえば、複数のチケットを一括購入し、LINEやメールを通じて友人や家族にチケットを配布する際にも明確な課題がある。「来場者のデータを収集するためには、一緒に訪れる方々にもB.LEAGUE会員になってもらうのが理想ですが、自ら動いてチケットを購入しようとする人に比べて、代理でチケットを買ってもらった人に自分のデータを入力させるのは非常に難しいのが現実です」と、葦原氏はいう。

こうした課題を解決し、パーソナライズ戦略を前に進めるためには、「スマートフォンを通じて、より価値の高い情報・サービスを提供していくことが不可欠」と葦原氏は話す。ならば、具体的にどのような一手を構想しているのか──。後編では、その施策やビジョンを掘り下げてみたい。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)(外部サイト)
(*2)Bリーグスマホチケット(外部サイト)

プロフィール

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事・事務局長 葦原 一正氏

1977年生まれ。早稲田大学院理工学研究科卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。2007年に「オリックス・バファローズ」、2012年には「横浜DeNAベイスターズ」に入社し、社長室長として、主に事業戦略立案、プロモーション関連などを担当。2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケットボールの新リーグ(B.LEAGUE)の立ち上げに参画。

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ マーケティング部長 安田 良平氏

1976年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、「サンフレッチェ広島」、「東北楽天ゴールデンイーグルス」、「埼玉西武ライオンズ」、「横浜DeNAベイスターズ」とスポーツ畑で職歴を積み、会員組織・チケット販売などBtoC関連分野を担当する。2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケットボール新リーグ(B.LEAGUE)の立ち上げに参画。

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