マーケティング戦略

B.LEAGUE、デジタルマーケティング施策も開幕へ[後編]――統合データで顧客満足を生む

記事内容の要約

  • チケット購入アプリ「Bリーグスマホチケット」を起点に、“個客”へのアプローチを本格化
  • パーソナライズされた情報で顧客満足度の向上を図る
  • 取得した顧客データを起点にスポーツリーグの新たな成功モデル確立を目指す
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この記事の前編を読む

スマートフォンを通じて、顧客データを蓄積し、パーソナライズされた情報とサービスを提供していく──。この基本戦略の下、2016年9月22日に歴史的開幕を迎えた男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」では、スマートフォンアプリ「Bリーグスマホチケット」を今年7月に公開。アプリを起点に、さまざまなサービスの拡充を構想する。目指すのは、スポーツリーグの新たな成功モデルの確立だ。

パーソナライズされた情報配信で“個客”満足度のさらなる向上を

アプリ上でリーグすべてのチケットが購入でき、スマートフォンがチケット代わりになる「Bリーグスマホチケット」(*1)。このアプリは、試合来場者の個人データを獲得するためのエンジンであり、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(以下、B.LEAGUE)(*2)が推進するデジタルマーケティング戦略の起点ともいえる。

Bリーグスマホチケット利用中のイメージ。スマホがそのままチケットになる

写真提供:B.LEAGUE

リーグ開幕後第4節までの時点では、アプリの認知度はそれほど高まっておらず、当初設定したKPIも未達の状況にある。「ただ、時間とともにアプリの利便性が広く知られるようになれば、利用者の数はおのずと増えていくはずですし、これからも顧客満足度を高めるための情報/サービスを、アプリを通じて提供していきたい」と、B.LEAGUE事業本部マーケティング部長の安田良平氏はいう。

顧客満足度を高めるための施策の1つがプッシュ情報配信の強化だ。Bリーグスマホチケットにプッシュされる情報は当初、「試合の開始告知」と「試合結果の速報」などに限られていた。しかし、10月からは「試合のハイライト映像・写真」の配信が開始され、「今後は、顧客属性にあわせ、試合日の朝にごひいきのクラブの見どころを通知したり、会場でのイベントを通知したりといったサービスも追加する予定です」(安田氏)と、断続的に新たなサービスを提供する考えだという。

クラブ全体のデータ活用レベルを引き上げる

B.LEAGUEではリーグ共通の統合データベースをすでに構築しており、Bリーグスマホアプリで収集されたデータもこのデータベースに蓄積されている。各クラブは、リーグから提供されたシステムを通じて、統合データベースからデータを引き出し、活用することが可能だ。

ただ、現在はクラブへデータを開放することによって、データ活用が高度化しているわけではなく、「状況を打開する一手を打たなければなりません」と、事務局長の葦原一正氏は語り、こう続ける。

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事・事務局長 葦原 一正氏

写真提供:B.LEAGUE

「大切なのは、データ分析を目的化させないことです。ですから、われわれとしても大量の生データの提供に終始するのではなく、さまざまなデータの分析結果を具体的な集客施策やファン層拡大施策のアドバイスとあわせて提供していかなければならないと感じています」

先例なき成功モデルの確立に挑む

葦原氏によれば、情報配信の強化にせよ、データ活用にせよ、目指すべき方向性は、情報/サービスのパーソナライズによる、個客の満足感の充足にあるという。

「われわれがスマートフォンを通じて取り込もうとしているのは、バスケットボールのコアファンだけではありません。バスケットボールのことをほとんど知らず、B.LEAGUEの始動でたまたま興味を持ったような層もターゲットです。このような広範な層にアプローチして、ロイヤルティーを高めていくには、それぞれの嗜好(しこう)・関心事・知識レベルに応じて、各自が楽しめる情報を出し分けるパーソナライズの施策展開が不可欠です。顧客データを集め、分析する意味もそこにあると考えています」

また、アプリでは個席選択でチケットを買うしくみになっており、会場で誰がどこに座っているかもわかる。「ですから、スマートフォンのBluetooth機能をうまく活用することで、座席ごとにライティングを変化させるなど、会場演出をパーソナライズできる可能性もありますし、コンシェルジュ型アプリの提供も視野に入れていきたいと考えています」(安田氏)。

米国NBAではすでに90%強のチケットが紙からデジタルへと切り替わっている。とはいえ、NBAとB.LEAGUEでは、環境も、歴史も、スター選手の数にも大きな開きがある。ゆえに、NBAのデジタルマーケティングをそのまま導入することは難しいと、葦原氏は打ち明ける。さらにスポーツ業界全体、ひいては他業界全体を見渡しても、B.LEAGUEの参考になるようなスマホ活用/スマホアプリの好例がなかなか見つけられないというのが実情のようだ。

「それでもB.LEAGUEを軌道に乗せられれば、他の競技団体にとって大いに参考になる成功モデルとなるはずです。ですから、アプリ、クラブでのデータ活用、そのほかにも課題は山積していますが、これからも試行錯誤を繰り返しながら、データ活用・スマートフォン活用を軸にした戦略を推し進めていくつもりです」(葦原氏)

注釈:
(*1)Bリーグスマホチケット(外部サイト)
(*2)公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)(外部サイト)

プロフィール

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事・事務局長 葦原 一正氏

1977年生まれ。早稲田大学院理工学研究科卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。2007年に「オリックス・バファローズ」、2012年には「横浜DeNAベイスターズ」に入社し、社長室長として、主に事業戦略立案、プロモーション関連などを担当。2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケットボールの新リーグ(B.LEAGUE)の立ち上げに参画。

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ マーケティング部長 安田 良平氏

1976年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、「サンフレッチェ広島」、「東北楽天ゴールデンイーグルス」、「埼玉西武ライオンズ」、「横浜DeNAベイスターズ」とスポーツ畑で職歴を積み、会員組織・チケット販売などBtoC関連分野を担当する。2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケットボール新リーグ(B.LEAGUE)の立ち上げに参画。

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