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【解説】コンテクスチュアルコマース(Contextual Commerce)

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コンテクスチュアルコマース(Contextual Commerce)とは、オンラインショップだけではなく、それ以外のウェブサイトやSNS、アプリ内など、あらゆる場所で商品を購入できることを指す。「コンテクスト(状況や話の流れ)」に沿った「コマース(商取引)」という意味で、「わざわざ専用のECサイトに移動しなくても、その場ですぐに購入できる」ため、ユーザーにとっては利便性が向上する。

別名「分散型コマース」とも呼ばれており、その広がりには同じ「分散」を冠する分散型メディアと似た背景がある。

分散型メディアでは、自社メディアのウェブサイトにわざわざ来てもらうのではなく、多くのユーザーが集まっているSNSなどの他社プラットフォーム上で、メディアとしてコンテンツを展開する。同じようにコンテクスチュアルコマースは、自社の売り場に執着せず、購買ユーザーの利便性を優先することでコンバージョン増加をねらうというものだ。

従来の手法とコンテクスチュアルコマースの違い
従来の手法では、ユーザーはSNSやメディアを経由してECサイトにアクセスし、そこで購入していたが、コンテクスチュアルコマースでは、SNSやメディアに直接購入口があるので、わざわざ別のECサイトに行く必要がない。

購入場所が分散・点在しているという意味では、複数のウェブサイトに購入口を設けるアフィリエイトに似ている。しかし、アフィリエイターが各自でウェブサイトに集客し、商品プロモーションを行って購入を促すのに対し、コンテクスチュアルコマースは、「もともとユーザーが集まっている場所」に対して購入手段を提供する。

さまざまなSNSを中心に広がる

米国から始まったコンテクスチュアルコマースの波は、FacebookやInstagram、Twitter、Pinterestといった大手SNSを中心に広がりつつある。また、Googleはモバイルの検索結果ページに表示される広告から商品を直接購入できる「Purchases on Google」(*1)を開始している。ただし、いずれもまだ実証実験としての意味合いが強く、各社ともソーシャルメディアとECの融合を模索している状況だ。

Twitterの[購入]ボタンの解説動画(*2)
Twitterでは、ツイート画面の下方に購入ボタンを設置している。

Pinterestの購入機能「Buyable Pin」の紹介動画(*3)
Pinterestの画面にも購入ボタンが設置されている。

PayPalでは、コンテクスチュアルコマース用の汎用(はんよう)プラットフォームとして利用できる「PayPal Commerce」(*4)を発表し、現在ベータテスト中だ。PayPal Commerceを使うと、ウェブページだけでなくメールやアプリにも[購入]ボタンを設置できるので、より幅広いコンテクスチュアルコマースが可能になる。

プラットフォームで展開するリスクとは

SNSとコンテクスチュアルコマースの組み合わせは、「いいね!」が多く付けられた商品や友人からすすめられたりした商品を“いますぐ購入したい”という場合、即座にユーザーの欲求にこたえられるという点で、親和性は高いといえる。

しかし、ユーザー同士の共感や信頼によって築かれるアーンドメディア(earned media)であるSNSにおいて、物販によるビジネス色が強くなることは、必ずしもユーザーから歓迎されるものではない。SNSのプラットフォームを提供する側からすると、このバランスをどうとるかが課題となる。

一方、物販を行う企業にとっては、他社のプラットフォーム上だと自由にビジネスをコントロールできない点がリスクとなる。不慮の事態でビジネスが停止したり、仕様や規約の変更に振り回されたりするおそれもある。企業としては、他人の軒先を借りて商売をすることの長所と短所を意識しておく必要があるといえるだろう。

注釈:
(*1)「Purchases on Google」
モバイル版のGoogleで商品検索をすると、結果画面の最上部に該当商品が表示され、ECサイトに行くことなく、そのまま購入まで進めるしくみ。
(*2)A new way for you to make purchases on Twitter(外部サイト)
(*3)Introducing buyable Pins!(外部サイト)
(*4)「PayPal Commerce」
SNSやメール、ブログなど、ユーザーの目につくさまざまなコンテンツに、ドラッグ&ドロップで購入ボタンを設置できるサービス。
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