ビジネス創出

訪日外国人のデータは宝の山[後編]――実現するのは“無駄なきマーケティング”

記事内容の要約

  • 日本政府観光局や官公庁が提供しているデータからは、意思決定できるほどの情報が得にくい
  • ナイトレイでは独自の位置情報解析技術をベースに、国籍別、観光地別の訪日外国人動向データをウェブサービスで提供
  • 東京五輪の開催に向け、インバウンド戦略支援のサービスをさらに拡充予定
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訪日外国人の消費行動や移動情報を詳細に可視化して提供する、株式会社ナイトレイのデータ分析サービス「inbound insight(インバウンドインサイト)」。2015年にスタートを切ったばかりのサービスながら、すでに企業の経営層からの信頼を得ているという。今回は具体的に、inbound insightによってどのような種類のデータを可視化できるのか、顧客のインバウンド戦略にどのような価値や変化をもたらすのかを掘り下げる。

分析者側の「あったらいいな」に応えるサービスを提供

日本政府観光局の調査データ(*1)や観光庁の「訪日外国人消費動向調査」(*2)からは、訪日外国人の国籍や特定の期間における消費額といった情報を得ることができる。

しかし、こうした調査データは最大公約数的にならざるを得ず、マーケティング戦略の企画立案や意思決定ができるほどの質の高さを担保した情報は少ない。実際にマーケティング戦略に役立てるためには、クロス集計をはじめ、活用者側の目的に応じてデータを抽出できることが望ましい。また、データの妥当性を検証するためには、定性・定量の両面のデータが必要となる。「inbound insight」は、そうした分析側に内在するニーズをくみ取って開発されている。具体的なプランは以下の4つだ。

inbound insightが提供する4つのプラン
inbound insightではSNS解析を含めて4つのプランが提供されている。<br />
SNS解析プランは、訪日外国人のSNS投稿データを日々収集・解析することで、月間約2万2,000人の訪日外国人の周遊ルートや投稿内容、人気施設などを国籍毎に可視化。年間推移データも提供。15カ国に対応<br />
統計データプランは、NTTドコモが提供するモバイル空間統計を利用した解析サービス。統計データとして訪日外国人の滞在者数を、都道府県別に年間推移データとして提供。50カ国に対応<br />
訪日消費データプランは、経済産業省が整備する宿泊実績データを基に、訪日外国人の推定消費額を提供するサービス。市区町村毎に訪日消費額の合計や内訳、裕福層割合などを可視化。15カ国対応<br />
駅データプランは、訪日外国人の人気駅ランキングの提示。15カ国に対応

たとえば「SNS解析プラン」は、前述した日本政府観光局や観光庁が提供する統計データにはない、Twitter・微博(Weibo)に投稿される内容、つまり定性的なデータを日々収集・解析することで、結果として1カ月間で約2万2,000人の訪日外国人が日本のどこで何をしているかを割り出すことができる。

「この解析の特徴は、位置情報をベースにしていることです。これにより、SNS投稿者が日本のどこで何をしているのかをとらえられますし、過去の投稿までさかのぼるなどさまざまな要素を解析することで、SNS投稿者の国籍や、在日外国人なのか旅行者なのかまで判定しています」(ナイトレイ代表取締役 石川豊氏)

また、NTTドコモが保有する通信ログデータ(非公開)を基にしたモバイル空間統計というサービスとデータ連携した「統計データプラン」は、どの国の人が、何人、どの時期に、どの地域に滞在しているかを都道府県・市区町村レベルで統計データとして把握できるサービスだ。

年間を通したデータの比較が可能なため、たとえば「季節ごとの訪日外国人客数の推移」といったデータを取得できる。客数の推移を知ることで、「来年の夏季の訪日傾向」などの予測も容易になるだろう。

inbound insightの「訪日消費データプラン」によって、どの地域でどの時期にどの程度の金額が動いているかがわかる

提供:株式会社ナイトレイ

経済産業省が運営する「観光予報プラットフォーム」(*3)とデータ連携することで実現した「訪日消費データプラン」では、どの国の人が、日本のどの地域で、どの時期に、いくら消費したかを独自推定データとして可視化している。このプランは、国籍別、観光地(市区町村)別、客層別、目的別、月別といった多様な切り口からデータを視覚化できるため、分析者側は目的に応じてほしいデータを得られる。使い道としては、「市区町村ごとのインバウンド市場規模を把握し、市場の大きさに見合った価格設定を行う」、「国籍ごとの繁忙期・閑散期を把握して人員を最適化する」ことなどが考えられる。

エビデンスデータは成功体験を超える

ナイトレイのサービスを利用する側の利点として石川氏が特に強調するのは、訪日外国人向けマーケティングの計画・戦略を、データという「エビデンス(証拠)」を起点に立てられるようになる点だ。

「inbound insightを利用することで、企業は、どの国の人に対して、どんな商材のプロモーションを、いつ、どこで、どのように展開するのが効果的なのかを、データに基づいて測れるようになります。データは人の主観や思い込みを排除した純粋なエビデンスです。それに基づく計画には失敗が少なく、結果として、マーケティング投資の無駄も省けるようになるわけです」(石川氏)

石川氏によれば、直感や経験に頼ったマーケティング施策を実施して成功させた体験を持つ人は、それらに依存した施策を打ちがちで、データを重視しない傾向が少なからずあるという。

「経営に大きな影響を及ぼす戦略は、データを軸にした仮説設計や裏づけを行いながら意思決定すべきです。実際、会社の経営層や企業のインバウンド戦略の策定を支援するプロフェッショナルたちは、計画・戦略にデータによる裏づけを必ず求めます。そのため、多くの方がinbound insightの価値を認めてくれているのです」(石川氏)

株式会社ナイトレイ 代表取締役 石川 豊氏

マーケティングにおいて、inbound insightを活用した成功事例はすでに生まれている。たとえば、大手ブランド品を販売する某企業は、山手線内ターミナル駅周辺の外国人観光客の訪問数と動線のリアルタイム情報を「inbound insight」のSNS解析データで検証し、出店エリアを選定して、その後に無駄のないプロモーションを展開して成果をあげた。また、あるコンビニエンスストアでは、免税システムの設置をinbound insightのデータに基づいて策定する計画だという。

1つのマイルストーンは東京五輪──さらなるサービス拡充を

ナイトレイでは今後、inbound insightの展開を通じて得られた知見を生かしながら、解析データの提供のみならず、インバウンド戦略を巡る顧客のさまざまな課題を解決するサービスを拡充させていく計画だ。

「inbound insightの展開によって、インバウンドの領域で顧客企業や組織が何に困っていて、どんなニーズがあるかがかなり見えてきました。ですから今後は、現在提供しているソリューションに一層の磨きをかけ、顧客のマーケティングの成功をより強力に後押ししていきたいと考えています」(石川氏)

そんなナイトレイが重要なマイルストーンとして設定しているのは、もちろん東京五輪だ。石川氏はいう。

「われわれのターゲットとなる企業は、遅くとも東京五輪開催の1年前までに、インバウンド需要の取り込みに向けた準備を完了させるはずです。ですからわれわれも、常にスピード感をもってサービス拡充を行い、そうした動きに対応していきたい。同時に、inbound insightのデータをどう活用すれば顧客の収益増やコスト削減に結びつくかの知見も積極的に提供していくつもりです」

注釈:
(*1)日本政府観光局(JNTO)「統計データ(訪日外国人・出国日本人)」(外部サイト)
(*2)観光庁「訪日外国人消費動向調査」(外部サイト)
(*3)経済産業省「観光予報プラットフォーム」(外部サイト)

プロフィール

株式会社ナイトレイ 代表取締役 石川 豊氏

2005年ネットエイジ(現ユナイテッド)入社。新規事業やネット広告事業で日々データ活用による業務推進を行う。 2011年ナイトレイを創業し、ロケーションインテリジェンス事業を立ち上げ。 位置情報に特化したSNSデータ収集と解析システムを独自開発し、日本国内の消費者行動データや人気施設データを提供開始。 2015年、訪日外国人の行動解析サービス「inbound insight」をリリースし、インバウンド対策の戦略策定・実行・検証プロセスに必須となるエビデンスデータを提供することで約3,900社の企業や自治体のインバウンド戦略をサポート中。

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