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【解説】ロボット記者

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新聞やネットメディアの記事は人が書くもの──。そんな常識は過去のモノとなりつつある。ロボット記者は、現在多方面で活用されている人工知能(AI)技術を応用し、記事を執筆する試みだ。

ワシントンポスト社は、2016年のリオ五輪の報道の一部に、ロボット記者が書いた文章を使用した。同社のロボット記者は、「ヘリオグラフ(Heliograf)」(*1)と呼ばれる自社開発のソフトウエアで、個々の試合結果速報を短時間で作成することができ、Twitterなどに投稿する機能を備えている。

ロボット記者の活用はこれが世界初の試みではない。実は、米国のメディアの間では、数年前からAIでコンテンツ作成を効率化しようとする動きが活発化しており、2014年にはAP通信社も企業決算の発表記事をAutomated Insights社の「ワードスミス(Wordsmith)」(*2)に書かせて配信している。このロボットは1秒間に2,000本もの記事を書くことができるという。

また、事件・事故を速報するというメディアの役割に関しても、ロボット記者の貢献度は大きい。用意したテンプレートに、いつどこでなにが起きたのかを入力すれば、報道文章に仕上げてくれる。さらに、過去の膨大なデータからスポーツの試合結果などを予想することも可能だ。こうしたロボット記者の登場により、記者はより詳細な分析記事やオリジナリティーの高い記事の執筆に集中できるようになる。

シナリオ設計は人に依存

ただ、ロボット記者には限界がある。大きな弱点は、記者・ジャーナリストが当然の資質として持つ「世のなかの課題・問題点を自ら提起する能力」に欠けることだ。つまり、課題や問題点の提起は人の仕事であって、現状のロボット記者はあくまでも過去のデータを基に、事実を事実として伝える定型文書を作成する役割しか担えていないのである。

このような弱点は、マーケティングでの応用を考えるうえでも留意すべきだ。たとえば、新商品を売り込むためのPR文書を作成する場合、商品のどの部分をどう訴求すべきかのシナリオを考え抜くことが重要となる。ところが、ロボット記者には、文書作成のスタートポイントとなる「新商品を訴求するうえでの課題」を設定する能力がない。そのため結局は、人がシナリオを定め、それに応じて適切な文書を作成するアルゴリズムをロボット記者に実装していかなければならない。仮に商品ごとに訴求すべきポイントや訴求の仕方が異なるのであれば、ロボット記者を育成する手間はさらに大きくなることが予想される。

名古屋に拠点を置く中部経済新聞では、AIを活用して、執筆した記事を紙面に掲載した。

国内メディアでも中部経済新聞が創刊70周年記念企画としてロボット記者が書いた記事が紙面に掲載された(*3)

しかし、いったんルールやひな形が決まれば、そのなかで最適解を導き出していく力とスピードは、人よりもAIのほうが格段に優れている。

さらに、AIには膨大なデータを解析したり、その結果から学び、自らの知性を向上させたりできる能力がある。こうした能力を応用すれば、いずれオーディエンスから受けのよい文書・見出しの法則性を割り出し、新たに作成する文書に反映させたり、個々のオーディエンスの嗜好(しこう)に合わせて、記事コンテンツの内容・構成を動的に組み替えたりするしくみが構築できる。

これにより、数万人、あるいは数十万人規模のユーザーに対して個別化されたメッセージを一挙に送信するといった、人の力では不可能なマーケティング施策も展開できる可能性も秘めている。

ロボット記者の知性が、マーケティング業務での実用に足るレベルに至るまでは一定の時間が必要かもしれない。だが、いずれロボット/AIによる記事作成がマーケティングにおいても当たり前のように行われるようになるのは、間違いないといえるだろう。

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