ビジネス創出

ビッグデータが医療を変える[前編]――病院にも不可欠な「経営の意識」

記事内容の要約

  • 効率的・効果的な医療サービスの提供による、医療の質向上と標準化を目的として急性期病院向けのDPC制度がスタート
  • 疾病により定められた診療報酬のなかで収益をあげることが病院の経営課題に浮上
  • DPCによってフォーマットが統一されたデータを比較分析することで、医療機関の経営改善への道筋をつけることが可能に
  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

良質な医療を効率的に提供していくことを目的に、急性期病院を対象として2003年に導入されたのがDPC(Diagnosis Procedure Combination:包括支払制)だ。これは、疾病によって入院1日当たりの報酬が定額となるしくみで、入院日数の短縮化による医療費の適正化や、診療データなどの開示による医療の透明性を担保する効果が期待されている。また、DPCにおける診療報酬体系下では、効率的で効果的な医療の提供が評価されるため、これまで医師の経験と判断に委ねる部分が大きかった医療提供体制のままでは経営が立ち行かなくなる可能性が大きくなり、今後は病院にも、一般企業のような「経営的な視点」が求められるようになってくる。では現在の病院は、どのような経営の課題を抱え、どのような解決策を模索しているのだろうか。

新診療報酬制度「DPC」の衝撃

平成27年度の日本の医療費は、前年度に比べて約1.5兆円増加し、41.5兆円となったが、すでに過去10年以上に渡り、医療費は毎年最高額を更新し続けており、財政を逼迫(ひっぱく)させる一因となってきた。この傾向に歯止めをかけるために国もさまざまな手を打っているが、その一策として導入されたのが、「DPC(包括支払制)」(*1)という急性期病院(*2)を対象とした診療報酬制度だ。

増加を続ける日本の医療費

出典:厚生労働省「医療費の動向」

この制度では、これまで検査やレントゲンといった医療行為ごとに支払う「出来高制」であった診療報酬(*3)を、入院1日あたりの診療報酬額を疾患ごとに定額としている。1疾患の入院1日当たりにおける診療報酬額が定められているため、不必要な検査や投薬、レントゲンを行うとその額を超え赤字となってしまう。また、入院初期の方が病院に支払われる診療報酬は高く、在院日数が伸びるにつれ報酬が低くなっていくように設定されている。

このように1日当たりの診療報酬は決められていて、しかも入院が長引くほど病院への報酬が低くなるとしたら、病院が収益をあげるためには、効率的かつ効果的に患者を治療し、患者に早く元気になって退院してもらう必要がある。つまり、コストと利益を判断できるデータやスキルが必要となってくるのだ。

DPC制度の概要

出典:メディカル・データ・ビジョン株式会社

しかし、医療そのものに関するデータや情報はあるものの、経営感覚やノウハウ、データを持ち合わせている病院は多くない。そしてそのような病院は、DPC制度に加入することで赤字経営に陥りかねないのだ。

そこで、医療データを活用して病院経営の支援を行い、さらに医療・健康分野の革新をめざしているのが、メディカル・データ・ビジョン株式会社(*4)だ。

知られざる病院経営の実態と課題

ところで、病院が破綻するとどのような問題が発生するのだろうか。それについて、メディカル・データ・ビジョン株式会社 専務取締役 浅見修二氏は「病院が経営破綻すると、その分、その病院が存在していた地域では十分な医療を受けられなくなる可能性があります。それは何としても防がなければなりません」と説明する。

浅見氏によると、病院経営は競争原理が働かない世界であるため、経営感覚が不足していても病院の運営はできる。しかし、それは患者の不利益になることもあるという。

「従来、病院における診療報酬体系は、医療行為ごとに点数が積み上げられていく出来高制であり、医師の熟練度やサービスの質は報酬に反映されない。つまり極端にいえば、『治療内容が同じであれば、どの医師が担当しても病院に入るお金は同じ』なのです。そうなると、病院の収益をあげるには、単純に検査や投薬などの医療行為の数を増やすことになる。そのような状況下では、手厚すぎる医療の提供により患者の医療費増加、ひいては国の医療費も圧迫される原因となります」

そして、こう続ける。

「また医師のなかには、コストや利益といったお金の側面から医療を捉えることに抵抗のある方もいます。結果として病院が提供している医療行為のうち、何がどのように、どれくらいの利益を生み出しているのか把握できていないという状況を引き起こすケースも往々にしてありました(浅見氏)」

その結果経営破綻してしまったら、その地域の医療サービスそのものがなくなってしまい、患者に十分な医療が行き渡らなくなってしまう可能性も生じる、というわけだ。

「効率性の高い治療」が病院経営の最大のテーマに

一方、厚生労働省としても、高齢化に伴い増加していく医療費を黙って見過ごすわけにはいかない。そのために長期療養病院などを除き、病床数の適正化や機能分化を指導するとともに、急性期入院医療を対象に新たな診療報酬制度を導入した。それがDPC制度だ。先に説明したように、DPC制度では入院初期に報酬額が高く設定されている。それは通常、入院した当日の症状が最も重いからだ。そしてその後、患者の在院日数が伸びれば伸びるほど、病院への報酬額は低くなるしくみになっている。

日本の病院における入院日数は一般的に長く、その期間は諸外国と比べて平均3倍になるという。もちろん疾患を根本的に治すためにはある程度の入院期間は必要だが、長引き過ぎれば患者側の金銭負担も医療財政への圧迫も大きくなる。DPC制度が導入された背景には、こうした問題意識もあったのだ。

DPC制度の下では、病院にとって1日当たりの報酬額が決まっている以上、過剰すぎる検査や投薬を行う必要はない。病院が利益を確保していくために必要なのは、「いかに効率よく患者を治療していくか」なのだ。

病院の課題解決に向け、DPCのデータに着目

このDPC制度が、メディカル・データ・ビジョンが手がける経営分析システムの活用を促進することになった。

「DPCの導入にあたり、厚生労働省が全国の病院に対し、病名と治療過程を統一フォーマットで提出するように求めました。このデータをもとに、病気に対する治療期間や報酬などの平均を求め、DPCを策定していったのですが、このデータを活用しない手はないと考え、医療機関向けのサービス開発に乗り出したのです」と浅見氏は語る。

そんなメディカル・データ・ビジョンは、データの活用によって医療機関の経営をどのように変え、患者にどのような価値を提供しているのか。後編で紹介していこう。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)DPC制度の概要と基本的な考え方(外部サイト)
(*2)「急性期病院」急な病気やけがなどで緊急な治療を要する患者に、24時間体制で専門的かつ高度な治療を施す病院。
(*3)「診療報酬」保険医療機関や保険薬局に対して、医療保険から支払われる報酬のこと。医療行為ごとに対応した点数を加算し、1点の単価を10円として計算する。
(*4)メディカル・データ・ビジョン株式会社(外部サイト)

プロフィール

メディカル・データ・ビジョン株式会社 専務取締役 浅見 修二氏

1979年慶應義塾大学工学部卒業。1979年日本NCR株式会社入社。その後IT系企業の代表者を歴任し、2003年にメディカル・データ・ビジョン株式会社を代表取締役岩崎博之と起業し、取締役に就任。2004年から現職。趣味はゴルフ、碁。

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

Insight for Dの
ページにいいねしよう!

「いいね!」してInsight for Dの最新情報をチェック

Q. Yahoo! JAPANのデータソリューションは何がスゴイんですか? 答えはこちら

Q. Yahoo! JAPANのデータソリューションは何がスゴイんですか? 答えはこちら

Insight for Dの公式Facebookページ、Twitterでも最新情報や取材の様子を発信中。