マーケティング事例

ウォンテッドリー流 少人数で最大の結果を出すためのKPI設定法

記事内容の要約

  • ウォンテッドリーは、データとKPIに基づくチーム体制で事業を拡大
  • 目標達成を可能にするのは、自チームの成果に目が行きがちな職種ごとのKPIではなく、個々人に向けたKPI設定
  • テレマーケティングの稼働状況を可視化することで、有料顧客獲得数が大きく向上
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ウォンテッドリー(*1)は、求職者と採用企業がソーシャルメディアを通じて相互理解を深めていく「ソーシャル・リクルーティング」という形式でサービスを展開するテクノロジー企業だ。その成長は目覚ましく、会社設立後、5年を待たずしてサービス利用企業は2万社を数えるまでになっている。しかし、その成長を支えているマーケティング関連チームの合計人数は、約10名強というとても小規模なものだ。この少人数で、なぜここまで事業を成長させることができたのか。その秘訣(ひけつ)は「データに基づくKPI設定」と「結果を可視化したチームづくり」にあった。

創業5年で2万社の顧客を獲得したウォンテッドリー

「Wantedly」は、「シゴトでココロオドル人たちを増やす」をコンセプトに2012年1月正式にスタートした、ウォンテッドリー株式会社が運営するウェブサービスで、具体的には「働く」をテーマにさまざまな人がつながっていくソーシャルメディアだ。

サービス内容は、仕事や会社に興味がある求職者と、社員の採用を考えている企業のニーズを、ソーシャルメディアを通じてマッチングするもので、「ソーシャル・リクルーティング」と呼ばれている。

同社マーケティングチームの萬代貴昂氏は「Wantedlyの利用企業は、当初はスタートアップやテクノロジー企業が多かったのですが、最近は医療法人や学校法人、メーカーなど裾野が広がりました。2016年12月現在、利用してくださっている企業は2万社に上っています」と語る。

Wantedly利用企業数の推移
2012年2月に100社だったウォンテッドリーの利用企業数は、2016年12月現在で2万社に上る。

急成長を支える11名のビジネスチーム

ウォンテッドリーは、インターンや派遣などを除くと社員は約50名。サービスを生み出すテクノロジーに軸足を据えており、その半数以上がエンジニアだ。そして「ビジネスチーム」と同社で呼んでいる、セールスチーム、マーケティングチーム、カスタマーサービス(CS)チーム、以上3チーム合計の社員数は11名だという。

そして、このビジネスチームが担当しているのが、同社の事業の中核を担う「Wantedly Visit」で、これは同社が運営するWantedly上で採用活動を展開するサービスだ。企業側が自分の言葉でやりがいやビジョンを提示し、働く人の共感を促し、相互理解を深めたうえで採用するという新しいスタイルの求人サービスとして注目されている。

ウォンテッドリーが提供している「Wantedly Visit」はさまざまなデバイスで利用可能
デバイスのイメージ

このサービスを利用したい企業は、まず募集の掲載本数や応募者のプロフィール閲覧数、サポートなどに制限がある「無料版」を試すことで、応募者の反応や成果を確認することができる。そして本格的に運用しようと思ったら、利用制限がなく、サポート対応も迅速な「有料版」へ移行するのだ。ウォンテッドリーにとって事業成長の根幹は、この有料会員を増やすことにある。

現在、このサービスを利用している企業数は約2万社ある。ビジネスチームの人数は11人なので、単純計算では1人当たり約2,000社をフォローしなければならない。

一見、現実的には非常に難しい数字のように思えるが、萬代氏は「当社はあくまで“テクノロジー企業”です。力業で業務をこなすために、労働集約的に社員を増やしたりはしません。別のアプローチで事業目標の達成を考えているのです」と話す。

その方法が「データを根拠にしたKPI主導のチームづくり」だ。

事業を成長させる、データとKPIに基づく発想

さて「データを根拠にする」ことには、どのような意味があるのだろうか。

「データを根拠にして仮説やKPIを設定しておけば、施策の目標や理由が明確になります。施策を進めていくなかで、達成すべき目標がいつの間にかずれているということはありがちですが、常にデータを根拠にしておけば、いつも当初の目的が意識されるので施策のブレを少なくできるのです」(萬代氏)

では、具体的には何のデータを見て、どのようなKPIを設定しているのか。萬代氏はこう語る。

「ビジネスチームには、『有料版への移行率』『有料顧客の継続率』『有料のアップセル(1社あたりの平均単価)』などのKPIがあります。これに直近の売上額などのデータを加え、リーダーが優先順位をつけて目標達成の方向性を決めます。ただし、3チームそれぞれが別々のKPIを設定するわけではありません。『3カ月後までに有料化率をこれだけ伸ばそう』という大きな目標を設定したら、それに対して各人が何をどれだけやるか、個々人でブレークダウンしていくスタイルです。たとえばセールスであれば、3カ月後の目標達成に向けて毎月何人の顧客獲得を目指すべきか考え、必要な架電件数を割り出していきます。またマーケティングチームから協力を得て、どういう層にどんな内容のメールをどれだけ送信すべきかブレークダウンしていくといった施策も考えられます」

ウォンテッドリーは目標達成に向け個々人にKPIを設定する
ウォンテッドリーでは、目標達成に向けたKPIをチーム単位ではなく個人ごとに設定する。

職種別にKPIを設定すると、自身のチームのKPIしか見なくなり、本来達成すべき大きなゴールを見失うこともある。だからこそ、大きな目標に向かってやるべきことを個々で考え、実行に移すスタイルであれば、目標を共有でき、さらにPDCAを迅速化できるのだと萬代氏はいう。

また、結果の可視化も非常に重要なポイントだ。

萬代氏は、大きな成果をあげている具体例として「テレマーケティングを活用した有料顧客獲得率向上」をあげる。

有料顧客獲得率の向上を実現した、データの生かし方

「Wantedly Visit」の無料顧客を有料顧客にするために効果的な方法が、セールスによる顔をつきあわせた「商談」だが、最近大きな成果をあげているのが電話による有料顧客の獲得だという。

「セールス電話の実行部隊はインターン生を含むアルバイトの方々が担っているのですが、常勤として稼働しているメンバーは少ない状況です。そこで、メンバーごとに日次・週次・月次ペースで稼働数を可視化するとともに、電話をかけた数や着電数、獲得率も可視化しています。これにより、何か問題があるときにはすぐ手が打てるようになりました。

たとえば稼働数が同じなのに、かける電話の数が落ちている場合は、アルバイトの作業を阻む要因が現場にあると考えられます。そうした要因を防止し、コール数をあげるなどの措置を迅速に取っていくことで、有料顧客の獲得率が向上しました」(萬代氏)


ウォンテッドリー株式会社 マーケティングチーム 萬代貴昂氏

また有料顧客の継続率についても、顧客ごとの月間アクセス数や応募トラフィック数などをもとにアクティブに利用している企業の傾向値を割り出し、その数値に足りない企業に対してセールスがアプローチしたところ、継続率が向上した実績もある。

11名という少人数だが、データに基づきKPIを設定し、可視化を徹底していくことで、ウォンテッドリーの成長を下支えしているようだ。

課題は数値化しにくい定性業務の可視化

もう1つ、事業の発展に寄与しているのが同社のスピード感だ。

たとえばデータ分析などでも、エンジニアに負担をかけることなく、ビジネスチーム側ですぐに必要な情報を確認できるように、ツールを活用した体制になっている。

セールスチームは独自に構築したCRMシステム活用し、そのデータをBIツールのDomo(*2)で抽出し、営業活動の状況などを可視化するしくみを整備している。またマーケティングチームは、2016年4月にはマーケティングオートメーションのMarketo(*3)を導入し、メールマーケティングを強化。これにより、見込み顧客から実際の売上顧客へと誘導するナーチャリングを実践している。そしてカスタマーサポートではZendesk(*4)を導入してサポート対応状況を効率化・可視化している。さらに各チームの目標や進捗(しんちょく)、施策はGitHub(*5)に書き込むようになっており、ビジネスチームだけでなくエンジニアもそのレポートを見ながら、職種を超えて自由に互いの業務についてフィードバックし合えるカルチャーが育っているそうだ。

ただ、萬代氏は現状に必ずしも満足していない。「数字で示せる結果を可視化することはそれほど難しくありません。それに対し、たとえば企業メッセージのような求人の文章が、どのくらい応募数向上に効果があったかを可視化するのは難しい。定性的な仕事内容とその成果を数値化することは、現状では非常に困難です。しかし、コストも工数もかかることではありますが、今後の課題として取り組んでいきたいと考えています」(萬代氏)。

常にベストな結果を生むため、データによる根拠と改善を重ねるウォンテッドリー。今後のさらなる飛躍が期待される。

注釈:
(*1)ウォンテッドリー(外部サイト)
(*2)Domo(外部サイト)
(*3)Marketo(外部サイト)
(*4)Zendesk(外部サイト)
(*5)GitHub(外部サイト)

プロフィール

ウォンテッドリー株式会社 マーケティングチーム 萬代 貴昂氏

2016年Wantedly入社。大学時代よりエンジニアでのインターン経験などを経て、Wantedlyではマーケティングチームに所属。コンテンツ作成からデータ分析、分析ツールの作成、チームのKPI管理から施策の実行までを幅広く担当。

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