マーケティング戦略

横浜DeNAベイスターズはどうファンを増やしたか[前編]――ターゲットのつかみ方

記事内容の要約

  • 2011年12月に誕生した横浜DeNAベイスターズは、5年目の2016年シーズンには観客動員数を初年度の1.7倍に伸ばし、横浜スタジアムでの座席稼働率も93%を達成
  • 着実に成果を出しているマーケティング施策の端緒は、複数のデータから導き出した的確なターゲティング
  • 直営のチケットサイト・ECサイト・会員管理システムを運用し、顧客属性を把握・活用
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2011年12月1日に誕生した横浜DeNAベイスターズ。2016年シーズンにはクライマックスシリーズへの進出を果たすなど、チームの実力も着実に向上しているが、それ以上に目覚ましいのが、主催試合の観客動員数の伸び具合だ。2011年シーズンには約110万人、2012年シーズンには約116万人だった観客数が、2016年シーズンには、初年度のおよそ1.7倍となる、球団史上過去最高の193万9,146 人を記録した。これは偶然がもたらしたものではなく、背後には緻密なデータ戦略があったという。では、そのデータ戦略とはいかなるものなのか──。戦略推進の当事者に話を聞いた。

「アクティブサラリーマン」狙いで実現した急成長

横浜DeNAベイスターズ(*1)は、2011年の誕生以降、本拠地・横浜スタジアムで行われる主催試合の観客動員数をハイペースで伸ばし続けている。2011年のシーズンには110万人ほどだった動員数は、2015年シーズンには181万3,800人を記録、2016年シーズンにはそれをも上回る193万9,146 人の動員を達成し、横浜スタジアムの年間稼働率も93%と全試合ほぼ満席の状態だ。

横浜DeNAベイスターズの総観客動員数と座席稼働率の推移
横浜DeNAベイスターズの総観客動員数は、2011年から2016年までに、約110万人から約194万人に、同時期に、座席稼働率は約50%から約93%に伸びた。

また、それに伴いグッズの売り上げも急伸。ECサイトやグッズの販売実績は観客動員数の伸びをしのぐ勢いだという。

ただし、その間、チームの成績は決して好調ではなかった。2016年シーズンこそクライマックスシリーズへの進出を果たしたものの、それ以前の4年間は下位に低迷していた。つまり、チームの成績にかかわらず、横浜DeNAベイスターズは観客動員数を年々伸ばし続けたということだ。その背景には球団が「アクティブサラリーマン」と名づけた30代を中心としたビジネスマン──仕事や金銭面で一定の余裕が生まれ、多様な趣味をアクティブに取り組む男性にターゲットを絞ったことがある。

「多くの人は、野球観戦に来るのは、1年に1、2回。もちろんそのときにチームが勝てば足を運んだかいがあったと思ってもらえるかもしれませんが、必ずしもそうとは限らない。ですから、ライトな野球ファンともいうべき来場者が、チームの勝ち負けとは関係なく野球観戦をエンターテインメントとして楽しめるような施策を打ってきました」と、経営・IT戦略部部長の木村洋太氏は語る。

たとえば、横浜DeNAベイスターズは、花火をはじめさまざまなイベントを楽しめるナイトゲーム「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」、や、球場外でのビアガーデンなどさまざまなエンターテインメントを仕掛けてきた。これも、ターゲットであるアクティブサラリーマンが友人・家族、あるいは彼女とビールを片手に野球観戦が楽しめる場をつくる一策だ。そうした施策が奏功し、観客動員数の増加につながったのである。


“蓄積データゼロ”からのスタート

もちろん、この「アクティブサラリーマン」というターゲット設定は勘や経験で決まったものではない。あくまでも、データを根拠に決められたものだ。

もっとも、チーム誕生の最初から有効活用できるデータが蓄積されていたわけではない。
「私が入社したのは2012年3月なのですが、当時、横浜DeNAベイスターズにはマーケティング施策の根拠となるような顧客データはありませんでした。もちろん、ファンクラブの担当者はスタジアムのファンクラブブースにくるお客さまのことはよくわかっているなど、現場レベルではナレッジがたまっていたものの、それが共有されてはいませんでした。また、チケット販売、物販なども実施していたのですが、それらのデータを社内で保有していなかったため有効に活用できず、どんな層に向けて何をすべきかがまったく見えない状況でした」と、木村氏は振り返る。

そんな状況を打開すべく、球団は顧客データを一から収集する取り組みに着手し、その手始めとして直営チケットサイト(*2)である「ベイチケ」を立ち上げた。そして直営チケットサイトに人を呼び込むために、そこでのチケット販売価格は500円引きの特別価格に設定した。

「従来はオンラインでのチケット販売のすべてを外部のサイトに委託していました。お客さまにとっては、割安で購入できるチケットサイトがあれば便利ですし、私たちとしては、購入者の属性を図ることができるわけです。そこで、外部サイトとの差別化を図るのと同時に、球場で当日券を購入する層も直営チケットサイトに取り込もうと考えました。球場で当日券を購入する方は非常に多いのですが、そうした人のデータは取れません。そこで、チケットの割引で当日券購入層にも“前売り券文化”を根づかせようと考えました」(木村氏)

回り始めたPDCAサイクル

このように購入客のデータ蓄積は進んだが、2012年シーズンは横浜DeNAベイスターズにとって実質的に初年度であり、前年度との比較ができないという問題があった。

「2012年は、話題づくりのためのいろいろな施策を打ちましたが、その何がどの層に受け入れられたのか、前年のデータがないのでわからないのです。そのような状況でしたが、チケットを購入しているのは30~40代の男性が多いという傾向まではわかりました」(木村氏)

そして、続く2013年。チケット購入者を分析してみると、30代男性が増加していることがわかった。それに加え、ほかのアンケート調査の結果見えてきたのが、「熱狂的な野球ファンではなく、仕事帰りや休日の娯楽として野球場に足を運ぶ30代男性サラリーマン」というターゲットだった。それが、横浜DeNAベイスターズがメインターゲットとしている「アクティブサラリーマン」だ。
「このように、アクティブサラリーマンを狙った施策を本格化させ、そのPDCAサイクルが回り始めたのは2013年以降のこと。そこから観客動員数が大きく伸び始めたのです」(木村氏)

では、193万人を超える観客動員を達成した今、横浜DeNAベイスターズのデータ戦略はどこに向かおうとしているのか──。後編では、同社におけるデータ活用の現在と、これからを掘り下げる。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)横浜DeNAベイスターズ(外部サイト)
(*2)横浜DeNAベイスターズ チケットサイト(外部サイト)

プロフィール

株式会社横浜DeNAベイスターズ 経営・IT戦略部 部長 木村 洋太氏

2007年米系コンサルティングファームBain and Companyに入社。2012年株式会社横浜DeNAベイスターズ入社。事業計画策定、動員イベント立案、プロモーション関連などを担当。 2014年事業本部チケット営業部部長を経て、2015年より経営戦略・IT戦略を担当。

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