Dの視点

【Dの視点】パーソナライゼーションが織りなす島宇宙

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「フィルターバブル」という言葉をご存じでしょうか?

インターネットの検索サイトのアルゴリズムやレコメンデーションエンジンなどに代表されるような、ユーザーの基本情報や過去の行動履歴に基づいてユーザーの好みを推定し、それをもとに検索結果やお薦め情報を表示する技術のことを「パーソナライズドフィルター」といいますが、この技術によって、ユーザーが自分の観点と合致しない情報から隔離され、自分の好みという泡(バブル)に囲まれ、周囲から孤立してしまうことに警鐘を鳴らす概念です(*1)。

インターネットユーザーは、自由に検索をしているつもりであっても、それは検索エンジンのアルゴリズムが取捨選択した枠組みのなかでの自由でしかありません(*2)。そして、スマートフォンの地図アプリに代表されるインターネット地図は、原理的には世界中を自由に見わたせる仕組みであるにもかかわらず、実際には、地図の検索窓に地名を入力し、必要な情報を即時に呼び出すというかたちで地図を見る主体を個人化させます。つまり、ユーザーが地図を見わたすことなく、「見たいものしか見ない」という態度を可能にするのです(*3)。

このインターネットユーザーたちの孤立とも呼べる現象は、英国の小説家ジョージ・オーウェルが『1984年』で描いた「ビッグブラザー」のような絶対的な権力者によって作為的に引き起こされるようなものではありません。ユーザーの意図とは無関係に行動が集積され、機械的に解析されることによって引き起こされます。

フィルターバブルという視点からは、もはやインターネットは、世界中をつなげる「グローバル・ビレッジ(地球村)」(*4)の夢ではなく、個人が自らの興味関心に閉じこもることを促進する島宇宙という存在になっているのです。

企業側に目を向けてみると、マーケティングの世界でも同じことがいえます。顧客を仔細(しさい)に把握し、高精度にターゲティングできる機能が向上すればするほど、実は予測不可能な顧客との偶然の出会いは少なくなっていくように思います。今後は、既存のルールにノイズ(ゆらぎ)をもたらす工夫や、ルールから逸脱したものを提示するといった逆行が生まれてくるのではないでしょうか。

注釈:
(*1)イーライ・パリサー『閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義』(早川書房、2012年)
→『フィルターバブル──インターネットが隠していること』と改題し、早川書房から文庫化(2016年)
(*2)東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』(幻冬舎、2014年)
(*3)松岡慧祐『グーグルマップの社会学 ググられる地図の正体』(光文社新書、2016年)
(*4)マーシャル・マクルーハンが『グーテンベルクの銀河系―活字人間の形成』(みすず書房、1986年)で用いた用語。インターネットによって地球規模で個人がつながり、地球全土がひとつの村となることを表している。

著者プロフィール

天野 武(アマノ タケシ)

株式会社Handy Marketing 代表取締役副社長。2010年9月、ヤフー株式会社に入社。広告プロダクトのパフォーマンスやトラフィッククオリティに関する分析に従事。2016年4月より博報堂DYメディアパートナーズ、Yahoo! JAPAN、DACの合弁会社である株式会社Handy Marketingに出向。

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