データ分析

SASに学ぶデータ分析[後編]──分析のPDCAはフレームワークで回せ

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この記事の前編を読む

統計学を体系的に学ぶ機会がなかったマーケターのなかには、論理的な分析を苦手とする人も多いのではないだろうか。しかし、勘や経験則だけで分析を繰り返していると、そもそもの課題や仮説を誤認したまま無駄な数字を追いかけることにもなりかねない。そのため課題解決につながる分析手法を学ぶことは重要だ。分析プロセスにおいて極めて重要な「因果関係を導き出すための考え方」を解説した前編に続き、後編では、SAS Institute Japanの辻 仁史氏に、分析のPDCAを回すしくみについて伺った。

分析のPDCAを正しく回すためのフレームワークとは

課題解決につながる施策を立案するためには、「導き出した因果関係をもとに複数の仮説を立て、それぞれの妥当性を検証する」段階をクリアする必要があるが、そもそも立てた仮説が正しいのかどうかを検証するにはどうすればよいのだろうか。また、仮に仮説が間違っていた場合はどのように軌道修正するべきなのか。

結論からいえば、分析のPDCAを回すしくみをシステム化して組み込んでしまえばいい。SAS Institute Japan(*1)では、分析のPDCAを正しく回すための独自のフレームワークとして「アナリティクス・ライフサイクル」を提唱している。それぞれどのようなフェーズが存在し、各フェーズで何をするのかを見ていこう。

SAS Institute Japanが提唱する「アナリティクス・ライフサイクル」
AS Institute Japanの提唱するアナリティクス・ライフサイクル

アナリティクス・ライフサイクルは6つのプロセスで形成されている。まず課題の定義と仮説の立案を行う段階からはじまり、次に分析に必要なデータを準備する段階に移行する。前編で紹介した「5W2Hのデータ」を集めるのはこの段階だ。

その後、「データ探索/ビジュアライゼーション(準備したデータを探索・ビジュアル化することで、データの傾向や特徴を効率よく把握すること)」→「予測モデル開発(将来のデータを予測するモデルをつくること)」→「施策展開(予測モデルにもとづいた施策を実施)」」→「精度評価/モニタリング」の順番で1つのサイクルが完成する。

一般的に、PDCAをうまく回せない主な原因としては、関係各所との調整に時間を要したり、改善施策が単なるスローガンになってしまい具体的なアクションに結びつかなかったりすることが挙げられる。

アナリティクス・ライフサイクルは、課題定義は業務管理者、データ準備とデータ探索はアナリスト、モデル開発と検証はデータサイエンティスト、モデルの配置はシステム担当者、効果検証は業務管理者というように、主管を明確化したしくみそのものを情報共有し、タスク間をシームレス化されたプラットホームとして提供することで効果をより早く得ることを実現する。

最初に決めるべきは「施策の評価方法」

6つのプロセスのなかで特に重要なのは、最初の「課題の定義と仮説の立案」である。なぜなら、分析プロジェクトの大前提となるゴール設定だけでなく、「施策の効果を検証する方法」もこの段階で決めるからだ。分析プロセスの冒頭で効果検証の方法まで決めると聞いて驚く方もいるかもしれないが、SAS Institute Japan ソリューションコンサルティング本部 IoTソリューショングループ シニアマネージャーの辻 仁史氏はその重要性を以下のように語る。

「課題定義の次に重要なのが、評価の設計です。『データ準備』以降のプロセスは、いってしまえば作業なので何とでもなりますが、評価設計がされていなければ分析のサイクルが回りません。その施策が有効だったかどうかを調べたいのであれば、たとえば『店舗』や『時期』などで分けたA/Bテストの実施計画を立てるなど、どのように施策の効果を検証するのかを決めておく必要があります」

SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング本部 IoTソリューショングループ シニアマネージャー 辻 仁史氏

仮説立案にありがちな失敗とは

アナリティクス・ライフサイクルの最初の段階である「課題定義」や「仮説立案」でつまずいた場合、考えられる原因は「情報不足」ないし「思い込み」だと辻氏は説く。

「売上単価が足りていない、人員が足りていないなどの現状認識がしっかりできていれば課題認識につながると思うのですが、そもそもの情報が不足していることによって課題認識ができていないケースが散見されます。そしてもうひとつの原因が思い込み。ベテランになってくると、頭のなかで勝手に原因を特定してしまい、『今日は暑かったから売り上げが落ちたんだね』などといった、改善しようのない外的要因に解を求めがちになります。まずは現況のデータを確認した上で現場の人に話を聞いてみたり、顧客の声に耳を傾けたりして、課題とその背景をしっかり理解することが非常に大切です」(辻氏)

情報不足と思い込みがあると、分析を行っても狭い視野でしか物事を考えられなくなる。現場や他部署と密に連携を取り合うなど、できるだけ自分以外の人間から情報や意見をもらいながら仮説を組み立てていくとよいだろう。

分析を行う人間が身につけるべきは「センス」

ここまでは分析のPDCAサイクルを適切に回すための考え方や手法について触れてきた。ここからは、分析のプロジェクトを成功させるにあたり、分析を行う人間が身につけるべき力について紹介しよう。

辻氏はアナリストに必要な能力として、「統計・物理の知識」「スキル」「センス」の3つがあり、とりわけ「センス」が重要だと話してくれた。

1つ目の「統計・物理の知識」は、どの分析手法を適用すべきかを判断できる知識を指すが、今はインターネット上にさまざまな情報があふれているので、昔に比べてはるかに答えにたどり着きやすくなっている。2つ目の「スキル」は作業のスピードを上げたり、ミスを減らしたりできる力を指すが、これは経験を積むことによって身につけられるもののようだ。では、辻氏がもっとも重要だと語る「センス」とは具体的に何を指すのだろうか。

「たとえば、最初の課題定義や仮説立案の段階で鋭い意見が言えるであるとか、着眼点の良さのことです。実はこれは、仮説を立てたり施策を立案したりする際に、人を巻き込める力ともいいかえられると思います。データ分析のプロジェクトを成功させるためには、データサイエンティストやシステム担当者など、アナリティクス・ライフサイクルに関わる全員がコラボレーションすることが極めて重要です」(辻氏)

実際、マーケターが分析をしようとすると、ひとりで数字とにらめっこすることになりがちだが、独力でデータ分析してしまうと筋の良い仮説が立てにくくなり、センスが枯れていってしまうのだという。周りの人を巻き込むコラボレーションによって多くの情報を集めたり、スピーディーにPDCAを回したりすることこそ、分析の精度を高める秘訣(ひけつ)なのではないだろうか。

注釈:
(*1)SAS Institute Japan株式会社(外部サイト)

プロフィール

SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング本部 IoTソリューショングループ シニアマネージャー 辻 仁史氏

2001年に入社。コンサルティング本部に配属され、モデル開発や分析組織の立ち上げに関わるコンサルティング業務に従事。現在はIoT分野全般におけるSASアナリティクス製品を統括。

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