データ分析

そのマーケティングリサーチ、本当に必要ですか?(1)~データ分析とリサーチ

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テクノロジーの進化によって、私たちの生活のあらゆる活動履歴はデジタルデータとして蓄積され、可視化されるようになりました。たとえば、ウェブ上の検索や閲覧履歴、FacebookやTwitterに投稿されている日々の何気ない気持ち(SNSのログデータ)、ECサイトや家計簿アプリに蓄積されている購買履歴など、実にさまざまなデータが手軽に見られるようになりました。さらに、スマートフォンから取得される位置情報によって、私たちが今どこで何をしているかも推測されるようにもなりました。ありとあらゆる消費者データの取得が可能になってきた昨今、マーケターはこれら大量のデータを組み合わせ、消費者の購買パターンやインサイトを見いだすこと、いわゆる“ビッグデータの利活用”が求められています。

ビッグデータを構成する各種データ

ビッグデータを活用することで、利用者個々のニーズに即したサービスの提供、業務運営の改善や新産業の創出などが可能。
※情報通信審議会の資料(*1)の図(p.10)を参考に作成

“ビッグデータを利活用”するためには、ただ膨大なデータを収集すればよいというわけではありません。たとえば、消費者自身さえも意識していないような本音や動機をあぶりだすためにビッグデータを活用するには、その中から適切なデータを選択しなくてはならないからです。ビッグデータの量的定義はさまざまですが、仮に「数十テラバイト以上のデータ」と定義した場合、この規模のデータをマーケターが直接扱うのは、並大抵のことではありません。さまざまなデータの種類や構造を熟知している必要があるからです。そのため、ここ数年は膨大なデータを整理して分析することを専門とする“データサイエンティスト”という職種の人を採用する企業も増えてきています。

分析すること自体が目的になっている?

そもそもデータ分析をする際には、ビッグデータかどうかに限らず、解決したい課題や明らかにしたい事象など、何らかの目的があるはずです。

たとえば、鈴木良介氏は著書(*2)で、ビッグデータを「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」とし、さらにビッグデータビジネスについては「ビッグデータを用いて社会・経済の問題解決や、業務の付加価値向上を行う、あるいは支援する事業」と目的別に定義しています。

ところが、データ活用の目的が不明確だったり、理解・共有されなかったりといった要因により、目的達成の手段であるべきデータ分析やビッグデータ活用が、逆に目的になってしまっているケースも多々見受けられます。

なぜ手段が目的になってしまうのか。答えは非常にシンプルで、ビッグデータが人間の想像をはるかに超える量になってしまったために、「何をどう分析したらどういうアウトプットが出せるのか(出せそうか)」を事前に想像し、分析業務に対してディレクションを出せる人材が極めて少ないからです。言い換えると、どうデータを分析すべきか、その指示を出す側の管理職のスキルが不足しているのです。そのため、データの扱いに慣れている人に「とりあえず、このデータを分析してみて」と依頼することになるのです。どういうアウトプットが出せそうかという想定がないまま分析を依頼するのは、単にデータの整理のみを任せることと同じです。

消費者のインサイトを知る方法

では、データから消費者行動の背景にある本音や動機を分析したいという目的を持っている場合、マーケターはそのデータをどうやって手に入れることができるでしょうか。その方法の一つとして、「アンケートやインタビューを活用した“マーケティングリサーチ”を積極的に活用する」ことが挙げられます。「なんだ、結局リサーチか……」とがっかりされる方がいるかもしれません。しかしながら、消費者について知りたいことを柔軟に、またピンポイントに収集できる手段は、現時点でほかにないのが実情です。特に、素早く収集できるという点では、オンラインでのアンケートが適しているといえるでしょう。たとえば、消費者が新車や化粧品を購入した理由を把握したいとき、消費者のインサイトを正しく理解するためには、「なぜ他の商品ではなくその商品を購入したのか」「なぜ今購入したのか」「なぜそのウェブサイトで購入したのか」など、消費者のインサイト(Why情報)が極めて有益です。センサーデータやウェブの購買履歴からは「手に入れたことで興奮している、共感している」や「どのウェブサイトでどの情報を見たあとに購入したか」といった表面的な事実は把握できても、「なぜ購入したのか」という、複雑な消費者のインサイトまではわかりません。ここで効果的な手段となるのが、マーケティングリサーチというわけです。

通常、こうした消費者のインサイトを抽出するためには、数十万~数百万円のコストをかけて調査会社にアンケートを依頼しますが、必ずしも結果が保証されているわけではないので、「調査したけれど結局何もわからなかった……」というリスクもあります。

そこで重要なのは、筋の通った仮説構築や適切な調査立案であり、その実現には一定の経験を要します。調査会社の担当者からのフォローはありますが、マーケター自身が何の仮説も意図も持っていないとよい調査結果を導くことはできません。そのため、調査会社に依頼する前に、まずは無料のセルフリサーチサービス(*3)などを利用して、調査前に仮説を出す練習をしておくことをおすすめします。

データ分析とマーケティングリサーチの相互補完

消費者のインサイト把握に有効なマーケティングリサーチですが、もちろん万能ではありません。実際にアンケートに回答する人は限られているため、アンケート自体に答えない人の気持ちまではわからないからです。

その弱点を補えるのが、データ分析です。ビッグデータの利活用には、こうした「アンケート自体に回答しない人々の行動や購買の傾向を把握できる」という側面があります。だからこそ、正しい消費者理解には、マーケティングリサーチと多様なビッグデータそれぞれの特徴を理解したうえで、正しく組み合わせて活用することが必要なのです。

【参考記事】
そのマーケティングリサーチ、本当に必要ですか?(2)~実施時の3つのポイント
そのマーケティングリサーチ、本当に必要ですか?(3)〜良質な仮説の生み出し方

注釈:
(*1)ビッグデータの活用に関する アドホックグループの検討状況(外部サイト)
(*2)『ビッグデータビジネスの時代』(翔泳社、2011年)
(*3)無料のセルフリサーチサービス提供例(外部サイト)

プロフィール

株式会社マクロミル マーケティング・プロダクト本部 本部長 中野 崇氏

早稲田大学卒業後、株式会社良品計画を経て、2005年に株式会社マクロミル入社。営業・営業企画、海外支社の立ち上げや経営再建を担当。現在はマーケティング&プロダクト本部の責任者として、社内外向けマーケティングコミュニケーション活動とリサーチ事業の商品戦略を担当。

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