データ分析

そのマーケティングリサーチ、本当に必要ですか?(3)〜良質な仮説の生み出し方

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連載第1回では、マーケティングリサーチという手法を紹介し、第2回ではマーケティングリサーチを最大限に生かすための3つのポイントについて解説しました。最終回となる今回は、第2回で言及した3つのポイントのうち、マーケティングリサーチ(以下、リサーチ)の成否を左右するといっても過言ではない「仮説の立て方」について説明します。

リサーチの失敗談として、「リサーチを実施したが、結果を見てもどう判断していいのかわからなかった」という声を聞くことがあります。そのような場合の多くは、仮説をうまく立てられていなかったことが原因です。では、正しい仮説の立て方とはどういうものでしょうか。

現状仮説と実行仮説

リサーチは一般的に「探索型」と「検証型」に大別されます。探索型とは、「市場の現状を知りたい」「新しい発想のヒントがほしい」など、目的が仮説構築のための材料集めであるリサーチです。検証型とは「コンセプトは受け入れられるのか?」「想定どおりのユーザーが購入しているのか?」など、仮説検証を行うことが目的のリサーチを指します。

このように定義すると、検証型にのみ仮説構築が必要だと思われがちです。しかし、むしろ探索型のほうこそ、事前に仮説を用意しなければ、「現状把握はできたけどアクションにつながらない」ということになってしまいます。リサーチにおける仮説には、同じ仮説でも次の2つの種類があります。

  • 現状仮説: 「現状はこのような実態になっているのではないか」という仮説
  • 実行仮説: 「このような施策を実行すればよいのではないか」という仮説

たとえば、ウイスキーのマーケティング担当者がターゲット拡大のために、女性のアルコール飲用実態を把握したいと思った場合、現状仮説としては以下のようなことが考えられます。

<現状仮説>
・一番飲まれているアルコールはおそらくワインだが、以前よりも、ビールや焼酎を飲む女性は増えているのではないか?
・ワインは日持ちしないから、結局ボトルを空けるしかないことに悩んでいる人が多いのではないか?
・レストランやバーでの飲酒よりも、1人で家飲みの頻度は増えているのではないか(飲酒場所の把握)?

現状仮説が具体的であれば、リサーチで何をどう聞くべきか明確になります。現状仮説が支持されたと仮定して、考えられる実行策を実行仮説に落とし込むと以下のようになります。

<実行仮説>
・ビールや焼酎飲用者に対してハイボールの爽快感を伝えれば、トライアル意向が高いのではないか?
・ウイスキーは開栓後も日持ちするので、コストパフォーマンスがよいことは女性にもメリットになるのではないか?
・家飲みで飾っておく可愛らしいボトルがウイスキーにあるとよいのではないか?

このときの実行仮説は粗いものでも十分で、可能性がありそうなアイデアが見つかったら、それを深めてコンセプトとして洗練させていけばよいのです。

このように、現状仮説と実行仮説をしっかり考えると、リサーチ項目が明確になり、よりアクションにつながるリサーチ結果を得ることができます。このような仮説はマーケターが1人で考えてもなかなか出てこないので、仮説出しのためのブレスト会議をリサーチ実施前に行っておくとよいでしょう。

良質な仮説=発想は“インプットの量×質”で決まる

ところで、インサイトに対する良質な仮説を思い付く発想力は、どうすれば身につくのでしょうか。ひとつには“インプットの量×質”で決まるといえます。

たとえば、体系的な知識を得るために、類似テーマの書籍を読んだり、最新の情報をインターネットから収集したりすることもその一つです。また、最新のベストセラー本を読んだり、流行のスイーツを食べたり、話題の映画を見たり、とにかく「多くの人の心を動かしている物や場所があるところ」に出向き、業務中には出会わないものに触れることを心がけることが必要です。

良質なインプットの蓄積ができていると、おのずと良質な仮説が思い浮かぶようになるでしょう。

結果の矛盾や回答のゆらぎの捉え方

リサーチでは、把握できる内容が限定されることや、回答が矛盾したものになる場合があります。どんなに完璧だと思われる仮説を立てても、矛盾や回答のゆらぎは発生してしまいます。それをどう解釈するかも、マーケターやリサーチャーの腕の見せどころです。

たとえば、購買データで購入履歴が確認されているのに、アンケートでは「買ったことがない」というケースが見つかった際に、「矛盾回答だ」として思考を止めてはいけません。消費者の立場になればわかりますが、「買ったことすら覚えていない」という商品はたくさんあります。このギャップには「買ったことすら印象に残っていないくらい、購入時の関与度も低く、商品から得られた満足度(味や機能・性能など)がありふれたものだった」という事実が隠れています。

また、よくある矛盾としては、ブランドイメージ把握の設問において、「先進的である」と「親しみやすい」の両方の選択項目がチェックされているようなケースです。これも一見すると矛盾回答のようですが、「親しみやすさを表現している広告・POPやパッケージデザインが先進的だった」という可能性があります。消費者がもつ商品のイメージは、商品そのものだけではなく、広告・店頭プロモーションなどからも受けた刺激によって醸成されます。そのため、このような回答矛盾と思えるゆらぎに意味を見いだすことが重要になります。

まとめ

これまで3回の連載を通じてリサーチのポイントをお伝えしてきました。最後にあらためて、リサーチを成功に導くためのポイントを3つにまとめます。

リサーチを成功に導くための3つのポイント
(1)マーケティング課題を整理する。消費者リサーチはアンケートで回答する人の意見で、すべての消費者を代表する意見ではない。消費者リサーチで把握可能な範囲を見極め、マーケティング課題を整理して、消費者リサーチの結果とビッグデータ分析を組み合わせることが重要である。(2)仮説をリサーチ項目にしっかり落とし込む。よいリサーチには良質な仮説が必要。良質な仮説を生み出すために、インプットの量を担保するとともに、リサーチ前に仮説をブレストする時間を確保することも重要である。(3)リサーチ結果の解釈は消費者目線で行う。リサーチ結果の解釈は常に消費者目線で行うこと。リサーチに答えがあるのではなく、リサーチ結果から答えを導くのがマーケターやリサーチャーの仕事である

これらのポイントを通して、みなさんのリサーチがよい結果につながることを願っています。

【参考記事】
そのマーケティングリサーチ、本当に必要ですか?(1)~データ分析とリサーチ
そのマーケティングリサーチ、本当に必要ですか?(2)~実施時の3つのポイント

プロフィール

株式会社マクロミル マーケティング・プロダクト本部 本部長 中野 崇氏

早稲田大学卒業後、株式会社良品計画を経て、2005年に株式会社マクロミル入社。営業・営業企画、海外支社の立ち上げや経営再建を担当。現在はマーケティング&プロダクト本部の責任者として、社内外向けマーケティングコミュニケーション活動とリサーチ事業の商品戦略を担当。

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