マーケティング戦略

次の手が見えてくる! エム・データ社TVメタデータ分析[前編]――テレビの特性とは

記事内容の要約

  • テレビ番組とCMを含めた、すべてのオンエア情報を要約しテキスト化したものが「TVメタデータ」
  • TVメタデータは、消費者の購買促進を目的としたデジタルマーケティングをはじめ、さまざまな分野で活用されている
  • テレビとネットをマーケティングに効果的に活用するためには「テレビ=全体」、「ネット=部分」という特性を生かすことが必要
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若者のテレビ離れが叫ばれ、いまや情報を手に入れる手段としてインターネットが主流になっているが、それでもテレビはいまだに非常に大きな影響力を持っている。そこに着目したのが、テレビ番組やCMで流れた情報をテキストベースのデータにした「TVメタデータ」の生成・配信・調査・分析を行う株式会社エム・データだ。ネット全盛の現代、テレビのデータはどのように活用されているのか。人々が身近に接するメディアとして、テレビとネットはどのような関係にあるのか。またTVメタデータを、企業はマーケティングにどう活用できるのかについて、エム・データに話を聞いた。

TVメタデータとは何か

「TVメタデータ」とは、テレビ番組やCMでオンエアされたすべての地上波放送情報を要約してテキストに起こし、データベース化したものだ。

株式会社エム・データ(*1)では現在、東京・名古屋・大阪地区の地上波テレビ局で放送された、すべてのテレビ番組とCMの情報を「TVメタデータ」として蓄積している。いつ・どの局の・どの番組で・誰が出演し・何が話題となって、それぞれの放送時間は何分何秒だったのかといった番組に関する情報のみならず、CMの「企業名・商品名・秒数・出演タレント・BGM・クリエイティブ」や、番組内で紹介された商品の「商品名・メーカー名・価格・販売先・URL」、さらにスポットの「店舗名・電話番号・住所・位置情報」など、ありとあらゆる情報が記録されている。

TVメタデータの画面表示
メタデータには、放送日、放送局、内容、出演者など、あらゆる情報が記録されている。

提供:エム・データ

膨大な情報量の収集・整理を可能にしているのは、実はテクノロジーの力ではない。データ全体の8〜9割は、水戸にあるエム・データのデータセンターで総勢100名ものリサーチスタッフが24時間365日、オンエア内容を目と耳で確認しながら手入力しているのだ。一見、システムで自動化できそうに思えるが、人力にこだわる理由は、いったい何なのか。

「すべての番組で、ニュースのようにひとりのアナウンサーがクリアに話しているのであれば、機械によるテキスト化ができるかもしれません。しかし、バラエティー番組のようにBGMや効果音などのノイズが多いと、精度が著しく低下します。また情緒的内容は人の解釈が必要で、やはり人が見るのが一番です。同じ言葉でも、前後の文脈によって、意味が変わることも往々にしてある。人が言葉の背景を読み解くからこそ、視聴者が受け取った情報に近いものになるのです」と語るのは、株式会社エム・データ取締役 薄井司氏だ。


株式会社エム・データ取締役 薄井司氏

多岐にわたるTVメタデータの活用

そして、このTVメタデータの解析、活用法の検討を行っているのが、エム・データ社内のプロジェクトチーム「ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)」だ。

その多岐にわたるデータ活用のなかでも、代表的なものがデジタルマーケティングでの領域だ。

テレビで紹介された商品は依然として爆発的な売れ行きをみせる。その効果にドライブをかけたいという企業の要望に応えるべく、同チームは外部パートナーと連携して、リスティング広告やDMPにTVメタデータを活用してもらい、商品にふさわしいターゲットに向けて広告配信を行うことで、テレビを見て商品を検索してきた視聴者を商品購入へ結びつけることに取り組んでいる。

さらにTVメタデータは、リアルにおける商品購入促進の仕掛けとしても利用されている。たとえばスーパーマーケットのようなリアルショップにある電子POPとTVメタデータを連携させることで、情報番組で紹介されたアイテムをオススメ情報として瞬時にレコメンドし、購買につなげることも可能だ。

購買を促進するTVメタデータ活用のしくみ
テレビでオンエアされた商品名やサービスなどを、タイミングよくネットの検索結果やスーパーなどの店頭にあるデジタルサイネージに表示させることで、消費者の記憶の新しいうちに売りにつなげる

同社の梅田仁氏は、こう語る。

「TVメタデータの活用について、いろいろな企業から問い合わせを受けているなかで、要望が似ていることがわかりました。それは、自社CMの露出がどのような成果につながるのかを知りたいということです」

そこで同社は、各企業が各自のニーズに応じてTVメタデータを活用できるASPツール「TV Rank」をリリースした。このツールを使うと、各自がTVメタデータを時系列形式やランキング形式で簡単に集計、検索でき、自社データをインポートすることでTVメタデータと掛け合わせた多角的なデータ分析が可能になるという。

「TV Rankでは自社や競合他社、業界を取り巻く環境の把握が可能で、未来のマーケティング戦略の立案に役立てることができます」(梅田氏)

さらに同社では、TVメタデータと、現代の情報流通の要であるネットに流れている情報を連携させる実証実験を行った。それは、2016年に話題となったタレントをランキングづけする「TV とネットによる今年の顔ランキング2016」(*2)だ。

テレビとネット、データの特性と違い

購買におけるテレビの影響力は依然として非常に大きいが、情報の流通量という意味ではネットにはかなわない。もはや日常生活を送るうえでオンラインでの情報収集や発信は必要不可欠だ。

では「ネットに流れる情報」と「TVメタデータ」には、人びとの興味・関心という観点において、どのように関連しているのだろうか。

そこを探るためにエム・データが実施した実証実験が、先に述べた「TV とネットによる今年の顔ランキング2016」だ。これは「TVで話題になった人」「TV 番組・CMに出演した人」「Twitterでつぶやかれた人」「ネットで検索された人」のデータをもとに、独自のスコア化によってテレビ出演者をランク付けしたもので、昨年末にその結果が発表されている。

ここで肝心なのが、分析の軸を“テレビ軸(露出)”と“ネット軸(反応)”に分け、さらにテレビ軸を、本人が出演している「出演スコア(番組および CM)」と、本人は直接出演していなくても、ワイドショーなどを騒がせた「話題スコア」に分けているところにある。

TV とネットによる今年の顔ランキング2016(上位25位まで)
今年の顔ランキング2016では、1位はSMAP、2位は嵐、3位は安倍首相。以下、AKB48、ベッキーと続く。

提供:エム・データ

このランキングによると、総合スコアで上位にいれば、時の人であることは間違いないが、単純によくテレビに出ているから人気者であるとは限らない。この調査結果からわかったのは、オンエアの後で、検索スコアやTweetスコアといったネット軸との相関が高いのは「話題スコア」であることだ。ネットで話のネタにならなければ「テレビには出ているけど、印象には残っていない」ということになりかねない。

ここでもう1つ重要なのが、テレビとネットというメディアの特性の差だ。

「ネットは自分で情報を取りに行くものなので、もともと興味のある人以外に対しては情報が届きにくいという特徴があります。一方テレビは、つけているだけで、自分が見たい番組以外からも情報が入ってくる。実はそこがポイントです」と梅田氏は語る。

「時系列を追ってタレント別に細かく見てみると、タレントがブレイクするには1週間のテレビ出演時間が“6,000秒=100分の壁”を越える必要があることがわかってきました。ここがキャズムというわけです。“1週あたり100分”の壁を越えると『なんとなく』テレビを見ていた人がネットで話題にしはじめ、ブレイクのきっかけとなる。つまり、ネットで漏れた外側の人(=the rest of us)による、トレンドを生むことができるのです」(梅田氏)

ネットは「部分」、つまり「ある特定の集団内における情報流通の手段」であり、一方テレビは「全体」、すなわち「不特定多数に向けた情報流通の手段」ともいえるが、それぞれが別々に存在しているわけではなく、テレビに流れる情報をネットがすくいあげ、それによって情報伝達が加速するという構図になっているのだ。

これは「タレント」という人物を切り口にした分析例だが、企業や商品ブランドに置きかえてマーケティング分析にも応用できる。テレビにせよネットにせよ、話題を生むためには相互の関係性を適切に理解しておく必要があるということだ。

後編は、さらに詳しくマーケティングを意識したトレンドの生み出し方を検証しよう。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)株式会社エム・データ(外部サイト)
(*2)TV とネットによる今年の顔ランキング2016(外部サイト)

プロフィール

株式会社エム・データ 取締役 薄井 司氏

第一興商マネージャー、VLe社長室長を経て2009年エム・データに入社。戦略企画業務に従事。企業との戦略連携を行うとともに、スマートTV事業やビッグデータ解析、テレビ基点の各種分析・予測などテレビ情報を活用したマーケティングミックスモデル構築を手がける。

株式会社エム・データ ライフログ総合研究所(Life Log Lab.)所長 梅田 仁氏

日本アイ・ビー・エム マーケティング・コミュニケーションズ部長、アップル シニア・マーケティング・プロデューサーを経て、2013年エム・データ ライフログ総合研究所を設立。TVメタデータを用いたコンサルテーションを行う。

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