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【解説】サービス・ドミナント・ロジック(SDL)

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「サービス・ドミナント・ロジック(SDL)」(*1)とは、「モノ(有形の商品)」と「サービス(無形の商品)」を区別することなく包括的にとらえ、「企業がいかにして顧客とともに価値を創造できるか」という価値共創の視点からマーケティングを組み立てようとする考え方のこと。2004年に、マーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとステファン・L・バーゴによって提唱された(*2)。

SDLにおける「サービス」とは、「無形の商品」という意味ではなく、顧客が利用することではじめて価値(使用価値・経験価値)を持つ商品を指す。つまり、商品の価値とは顧客とともに生み出すものであり、同じ商品でも顧客によって価値は異なる。

従来の考え方では、商品の価値(価格)は提供者である企業が決めて、顧客に提供(販売)してきた。商品自体に価値が包含(価値が定義)されており、顧客はお金を支払うことで商品を得て、それにより企業と顧客とのあいだで価値交換が行われるという考え方で、「グッズ・ドミナント・ロジック(GDL)」と呼ばれる。この従来型マーケティングの考え方であるGDLとSDLと対比させると理解しやすい。

顧客志向を理解する助けに

GDLのことを従来の考え方、SDLのことをそれとは異なる考え方としたが、両者はビジネスモデルのようなものではなく、あくまでも経済活動のとらえ方や考え方にすぎない。だから、「この商品はSDLとGDLのどちらであるか」という議論は的外れであり、あくまでも商品の価値を考える際の視点の違いとして理解すべきものである。

GDLとSDLの違い
グッズ・ドミナント・ロジックは商品自体に価値が包含されており、顧客はお金を支払うことで商品を得て、それにより企業と顧客のあいだで価値交換が行なわれるという従来型のマーケティングの考え方である。一方で、サービス・ドミナント・ロジックはモノとサービスを区別するのではなく包括的に捉え、モノに支えられたサービス全体の使用価値や経験価値を提供価値としている

富士通総研「企業の競争力を高めるICTの新たな活用法とマネジメント 第2回」(*3)の図版を元に編集部作成

このようなSDLの考え方は、マーケティングの考え方にも通じる。顧客一人ひとりにとっての価値や、顧客が使ってはじめて価値が生まれる(定義される)という視点は、「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」(*4)といった、近年しきりに叫ばれている顧客志向のマーケティングを理解したり実践したりするための助けになる。

商品がもたらす本質的価値をとらえる

SDLの視点で既存の商品をとらえ直すと、本質的な価値を発見できる可能性がある。たとえば、アップルのiPodは世界的な人気商品となったが、GDLの視点でとらえると、決して突出した商品(モノ)ではない。当時、より高音質で軽量なデジタル音楽プレーヤーはほかに存在していた。しかし、SDLの視点では、iPodというハードウエアだけでなく、iTunesという管理ソフトウエアやiTunes Storeという楽曲購入サービスまで含めた使用時の快適さや利便性の高さが、全体として顧客が受け取る価値を増幅しているととらえることができる。

GDLとSDLでとらえたiPodの価値
従来のグッズ・ドミナント・ロジックの視点でとらえると、iPodを決して突出した商品ではなく、当時同じような商品が存在していた。しかし、サービス・ドミナント・ロジックの視点では、iPodというハードウエアだけでなく、iTunesという管理ソフトウエアやiTunes Storeという楽曲購入サービスまで含めた使用時の快適さや利便性の高さが、全体として顧客が受け取る価値を増幅しているととらえることができる。

富士通総研「企業の競争力を高めるICTの新たな活用法とマネジメント 第2回」(*3)の図版を元に編集部作成

最近のインターネットサービスでは、音楽、動画、電子書籍などの分野で定額制サービスに勢いがあるが、これらもGDLよりSDLの視点でとらえるほうが、その商品の価値を把握しやすいといえる。

注釈:
(*1)Service-Dominant Logic(外部サイト)
(*2)SDLの詳細は2人の共著である『サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用(英題:Service-Dominant Logic: Premises, Perspectives, Possibilities)』(2016年、草思社)にまとめられている
(*3)富士通総研「企業の競争力を高めるICTの新たな活用法とマネジメント 第2回」
(外部サイト)
(*4)『マーケティング発想法(英題:The marketing mode: pathways to corporate growth)』(セオドア・レビット、1969年)においてレオ・マックギブナ氏の考えとして紹介されており、マーケティング業界の格言になっている
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