ビジネス創出

日本初! 第一生命のInsTech戦略[後編]――保険の未来はオープンイノベーションで

記事内容の要約

  • 健康診断データとバイタルデータを組み合わせた分析のための実証実験でデータの確かさやインセンティブの有効性を検証
  • ビッグデータ解析により保険引き受け条件を高度化した「非喫煙者割引」や「健康年齢適用」を実現
  • 新たな価値創造に向けたオープンイノベーションや産学連携の共同プロジェクトを推進
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この記事の前編を読む

第一生命保険株式会社(以下、第一生命)では、ヘルスケア、アンダーライティング(保険の引き受け)、マーケティングの3つをInsTechのビジネス領域としている。具体的な取り組みとして、約6万人の従業員を対象とした運動と健康データの収集・分析、医療ビッグデータ分析アンダーライティング領域では、さまざまなデータを活用して新たな保険商品が開発されているが、具体的な事例をいくつか紹介しよう。

自社従業員の健康データ収集で新たな商品やサービスの開発を目指す

まずヘルスケア領域の取り組みからみていこう。第一生命では、約6万人の従業員(健康保険組合員)を対象に、2016年10月から「ヘルスケアポイント制度」を開始した。従業員はスマートフォンなどを使って、歩いた歩数や体重などの健康情報を記録するほか、希望者にはバイタル情報を計測するウエアラブル端末も配布している。また、記録に応じてポイントがたまり、たまったポイントは健康グッズやQUOカードに交換できるというインセンティブを設定して、利用を促進させる狙いだ。この制度によって収集した運動と健康状況に関するビッグデータを分析して、新たな保険商品やサービスの開発を目指している。

第一生命保険営業企画部課長の齋藤俊輔氏は、「このバイタルデータと従来から保持している健康診断のデータを組み合わせて、両データの関係性などを分析することで、新しい保険商品やサービスの開発に活用していく」と、そのねらいを説明する。

ヘルスログデータ収集による実証実験
スマートフォンやパソコンで参加者の健康情報を記録する。記録に応じてポイントがたまる。そのポイントを健康グッズやQUOカードに交換できる。蓄積された参加者のデータは、将来の保険商品・サービスの開発に向けた分析に活用される。

ビッグデータから生まれた「健康年齢」という新たな指標

アンダーライティング領域の取り組みでは、ビッグデータを基軸に新たな保険商品を開発している。代表的なものには、グループ会社のネオファースト生命保険が扱う「非喫煙者が保険料の割引を受けられる商品」と「健康年齢で価格が変わる商品」がある。

非喫煙者が保険料の割引を受けられるのは、終身医療保険と特定疾病保証終身保険に付加できる特約で、たばこを吸わない人には割引があり、吸っている人でも禁煙して1年間吸わなければ割引適用を受けられる。

ネオファースト生命保険企画総務部の菊田靖子氏は、「第一生命保険がもつ1,000万人の顧客のデータを解析し、病気の発生率と喫煙との因果関係を解析して保険料として算出することで実現した商品です」と語る。


ネオファースト生命保険株式会社 企画総務部 企画・調査・広報グループ 課長補佐 菊田靖子氏

健康年齢で価格が変わる商品には、「七大生活習慣病入院一時金給付保険」がある。加入時は実年齢で保険料が決まるが、3年ごとの更新では健康年齢が若ければ保険料が安くなる。健康年齢は、日本医療データセンターが保有する約160万人の健康診断データや診療報酬明細書などのビッグデータを活用し、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーの分析技術を用いて算出しているそうだ。

ネオファースト生命保険のウェブサイトには、健康診断結果を入力すると健康年齢を算出してくれるウェブサービス「健康年齢計算」(*1)が公開されており、これは保険加入者でなくても、誰でも利用できる。健康年齢に問題がある場合は、どの項目値が問題で、どのようなリスクがあるかという情報も提供される。

ネオファースト生命保険の「健康年齢計算」
ネオファースト生命保険の「健康年齢計算」イメージ

両商品とも、さまざまなデータを活用して保険引き受け条件を高度化したものだが、「禁煙すればお得」「健康年齢や実年齢より若くなるように努力すればお得」といったように、努力することで保険料が安くなるというインセンティブが働くよう設計されていることから、「健康への意識・行動を促す保険」といえる。テクノロジーを活用して新しい商品を生み出したアンダーライティング領域の取り組みではあるが、結果的に契約者の健康増進につながると期待できる点では、ヘルスケア領域の取り組みともいえるだろう。

社外とのコラボレーションで商品開発を促進

最先端のテクノロジーを活用するInsTechの取り組みは、当然ながら第一生命保険だけで成し遂げられるものではない。第一生命保険事務企画部長の拝田恭一氏は、「自社だけではノウハウもないしスピードも出ないので、第一生命グループとしては、積極的に一般事業会社、大学、スタートアップ、病院などと積極的に協業していくというスタンスで臨んでいます」と社外とのコラボレーションの必要性を語る。

社外とのコラボレーションはお互いに利益のある関係で進められる。たとえば、日本IBM(以下、IBM)と藤田保健衛生大学とは、IBMのAI技術であるワトソンを活用した医療ビッグデータ解析による共同研究を行っている。藤田保健衛生大学の保持する電子カルテデータには、血圧や血液検査結果のような数値化、構造化されたデータのほかに、投薬内容や患者の状態などをつづった非構造データとしてのテキスト情報がある。ワトソンを使えば非構造データも解析して特徴抽出することが可能になり、これらのデータを解析して、重篤化の傾向をつかもうとしている。

藤田保健衛生大学にとっては、先駆的な医療を提供することで地域に貢献し、プレゼンスを高めることができる。IBMにとっては、米国で進めている医療向けのビジネスを、日本でも進める足掛かりになる。第一生命保険にとっては、研究成果を保険引き受けの高度化のために利用できる。互いにメリットのある形で官民一体となって研究に取り組むことで、スピード感を持って新たな商品の開発を進めることができるのだ。

そのほかにも、ヘルスケア領域に力をいれている日立製作所と共同で、適切な医療費の予測モデルを開発したり、先端テクノロジーの活用を促進するために、AI、IoT分野のベンチャーファンドに投資したりするなど、外部との連携を進めているそうだ。

これらのコラボレーションでは、健康増進に向けた商品・サービスの開発や保険加入時における引き受け基準の拡大といったアウトプットが得られるが、同時に他社に先駆けて取り組むことで、先行者利益も期待できるという。

「いち早くテクノロジー活用の意義を感じて体制をつくり、名乗りを上げることで、実際にさまざまな異業種やスタートアップ企業のほうから話を聞いてほしいと声をかけてもらえるようになりました。現在のプロジェクトには、業界初となる研究・実証実験だからこそ実現できたものもあります。他社に先駆けて取り組むメリットは、想像以上に大きいと感じています」(拝田氏)

長い歴史をもつ保険ビジネスにおいて、医療ビッグデータ活用は大きな転換をもたらすといわれている。第一生命保険は、積極的なオープンイノベーションによって日本のInsTechを牽引していく。

注釈:
(*1)ネオファースト生命保険の「健康年齢計算」(外部サイト)

プロフィール

第一生命保険株式会社 事務企画部長 拝田 恭一氏

1991年4月第一生命保険入社。事務企画部に配属。マーケティング部門、支社勤務を経て、2012年4月契約医務部部長、2014年4月契約医務部長。2015年4月より事務企画部長(現職)。

第一生命保険株式会社 営業企画部 課長 齋藤 俊輔氏

2002年4月第一生命保険入社。2005年4月第一生命経済研究所出向。2010年4月第一生命保険経営企画部。2015年4月同社営業企画部 課長(現職)。2016年10月第一生命ホールディングス国内営業企画ユニット 課長(現職)。

ネオファースト生命保険株式会社 企画総務部 企画・調査・広報グループ 課長補佐 菊田 靖子氏

2000年第一生命保険入社。支社、リテール行政部門を経て、2015年4月からネオファースト生命 企画総務部 企画・調査・広報グループ(現職)。

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