デジタルマーケティング入門

コンテンツは本当に人を動かせるのか[前編]~消費者の変化に対応するということ

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世の中のデジタル化に伴い、企業が発信する「コンテンツ」の役割はますます重要になってきている。ターゲットとなる消費者に対して、質の高い、かつ有益なコンテンツを提供するのはもちろんのこと、コンテンツを消費者に「自分事」として捉えてもらうためには、その“届け方“が重要となる。

「コンテンツマーケティング」という言葉が話題になって久しいが、「コンテンツで人を動かす」を実現できている企業は、果たしてどれほどあるのだろうか。

フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社が2016年5月に立ち上げた「FH Brand Journalism Center」(*1)は、日本市場のみならず、海外市場で事業展開を行う企業に向けて、コンテンツマーケティングの領域を中立な立場からサポートすることを目的としている。今なぜコンテンツマーケティングが必要なのか。そしてその課題と解決策となるポイントは何なのか。デジタルマーケティングの専門家である同社の馬渕氏に話を聞いた。

現代の消費者行動とは

ここ数年、スマートフォンへのデバイスシフトはますます勢いづいている。それをさらに加速させたであろう象徴的な出来事のひとつが、スマートフォン向けゲームアプリ「Pokémon GO」の登場であった。リリース当時の2016年夏、ゲームに夢中になる人々が街に繰り出している様子がメディアで連日のように取り上げられ、かなりの盛り上がりを見せていた。ある調査結果によると、このゲームアプリの利用により、30代の3割以上がテレビや雑誌など、他のメディア視聴時間が減ったという(*2)。このキラーコンテンツの登場により、人々の時間がスマートフォンに奪われ、他メディアを寄せ付けなくさせたという事実は、まさにコンテンツによって、人が動くという事実が証明されたということではないだろうか。

一方、過去にさかのぼると、1960年代のアメリカ・ニューヨークの広告業界を描いた「Mad Men」というドラマ(*3)に描かれているように、その当時のマーケティングは、現代と異なり、商品を作って広告を流して売る、という本当にシンプルな構造だった。

「当時のマーケティングは4Pの法則で、product, place, price, promotionという4つのPで展開していたのですが、これは需要と供給を表していて、どちらかというと需要に応じて商品を作る、という時代でした」(馬渕氏)

それから時を経て、マーケティングの基盤が大きく変化してきた。もっとも大きく変わったのは、消費行動のありかただ。


シニア・バイス・プレシデント&パートナー 馬渕邦美氏

「英語でConnected Consumer(コネクテッドコンシューマー)と呼ぶんですが、インターネット上で他の人とつながることで悩みを解決したり、そこから得た情報をもとに自分自身で解決したりする人たちが主流になってきて、消費行動が昔とは全く違うものになってきました」(馬渕氏)

ここでひとつの例を挙げてみよう。靴を販売している店舗に女性の2人組、AとBが立ち寄ったとする。そのうちのAだけがスマートフォンを手にしている。ここから想像できる女性Aの行動は以下である。

スマートフォンを手にしているAが、Bに「これいいよね」といいながら気に入った靴の写真を撮る。そしてそのまま2人とも靴を購入することなく、店から出て行ってしまう。その後、Aは、撮影した靴の写真を、その場にいなかった友達にSNSでシェアする。もし、友達からシェアした写真に「いいね」がもらえたら、ECサイトで同じ靴を買う……

スマートフォンで靴を購入しているイメージ画像

これはあくまで想像の話ではあるが、昨今はさまざまなところで起こっている現象であろう。女性Aは実店舗に足を運んでいるが、最終的に靴が購入されたのはこの実店舗とは全く関係のないオンラインサイトであるため、この店舗の売り上げにはつながらない。

「これはあくまでも一例に過ぎませんが、購買までの消費者の行動パターンが昔と比べて幾通りもあるので、それにあわせてどのようなマーケティングを行うかを、本気で考えるべき時代になっているのです」(馬渕氏)

情報を取捨選択しなければいけない時代

消費者行動が変化した要因の一つに接触する情報量の増加がある。なかでも消費者が接する広告の量は、1日あたり約4,000とも5,000ともいわれている。これはバナーやテキスト広告、屋外広告などをすべて含めた量であるが、日常生活にこれだけ大量の情報があふれている状況で消費者を振り向かせるのは、並大抵のことではない。

「今の消費者は、大量の情報の中から興味のあるなしを判断し、取捨選択するというスピードがどんどん速くなっています。そのため、広告も含め、選ばれるコンテンツを作る、ということがますます難しくなってきている。その中でクローズアップされるようになったのが、コンテンツマーケティングという概念なのです」(馬渕氏)

広告とコンテンツマーケティングの違い

コンテンツマーケティングとは、端的にいうと「消費者の興味関心をひくコンテンツをどれだけ伝え、売り上げにつなげられるか」ということである。そして、コンテンツを受け取った消費者を実際に動かすためには、どれだけ消費者の知りたい形で発信できるかにかかっている。つまり、コンテンツは、内容のみならずそれをどう伝えるかも重要なのである。

従来の広告は、企業側が発信したいことを一方的に伝えるものだったが、消費者が膨大な情報量に接している現代では、一方通行のメッセージなど誰も受け取ってはくれない。

シニア・バイス・プレシデント&パートナー 馬渕邦美氏

「これからの時代は、『企業が伝えたいこと』と『生活者が知りたいこと』の真ん中の位置をとることが必要です。その中間地点に適切なコンテンツがないといけない。一方通行のメッセージにはそっぽを向かれてしまう状況にあるわけですから、いかに企業が伝えたいこと、また消費者が知りたいと思っているところの“間(あいだ)”をとらえ、コンテンツ化するか――そこが今のコンテンツマーケティングにとって重要なところであると思っています」(馬渕氏)

後編では、コンテンツマーケティングの目的やKPIについて掘り下げる。

この記事の後編を読む

注釈:
(*1)FH Brand Journalism Center(外部サイト)
(*2)Marketing Research Camp 「位置情報スマホゲームとライフスタイルに関する調査」(外部サイト)
(*3)Mad Men(外部サイト)

プロフィール

フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社  シニア・バイス・プレシデント&パートナー 馬渕 邦美氏

デジタル・マーケティング業界で15年に及ぶトップ・マネージメントを経験。 2012年オグルヴィ・ワン・ジャパン株式会社、ネオ・アット・オグルヴィ株式会社の代表取締役に就任し、グループの再生を成功させた。2016年よりフライシュマン・ヒラードジャパンのデジタルトップをはじめ数社の顧問を務める。『データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」』、『ブロックチェーンの衝撃』(共に日経BP社)監修者。

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