コンテンツマーケティング

コンテンツは本当に人を動かせるのか[後編]~コンテンツづくりに必要な視点

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デジタルマーケティングが進化を続けるなかで、コンテンツマーケティングが注目を集めている。海外だけでなく日本でも、コンテンツマーケティングに注力する企業が増える一方で、明確な成功事例に触れることが少ないという現実もある。後編では、今後コンテンツマーケティングでの目的を達成する上で必要な視点について掘り下げていく。

コンテンツマーケティングの効果

「コンテンツマーケティングには大きく2つの効果があるといわれていて、1つ目はもちろん『リード獲得』です。潜在顧客を見つけ、見込み顧客にして、実際の顧客にする、というリード獲得。2つ目は『ブランド認知』です」(馬渕氏)

特にオンラインでのマーケティングに言及すると、SEOやSEMなど、あらゆる手法をやりつくしてしまい、他社との優位性を出すことが難しくなっているケースも多い。そのような場合に効果的なのがコンテンツマーケティングだ。

例えば、検索連動型広告とマス広告、コンテンツマーケティングの3つを比較すると、当然リーチ量ではマス広告が圧倒的だ。ただし、購入までの期間で見ると、マス広告の場合、消費者へのリーチ量が格段に多いものの、ぼんやり見ている人も多く、コンバージョンまでには時間がかかる。一方で、検索連動型広告はなんらかの動機をもってクリックされるため、コンバージョンまでの時間が一般的に短い。

ではコンテンツマーケティングはどうかというと、「コンテンツを見て少し興味をもったから店舗に行ってみる」というような、コンバージョンへの動機につながるという意味では、検索連動型広告とマス広告のちょうど中間に位置するといえる。つまり、潜在顧客へのリーチにコンテンツマーケティングが寄与できるのだ。

コンテンツをどう伝えるか

コンテンツマーケティングのコンテンツ種別はさまざまだが、そのコンテンツを伝える手法についてもさまざまである。動画だけでなくゲーミフィケーション、インフォグラフィックスなどのさまざまな手法がある中で、企業側が伝えたいことをどうコミュニケーションしていくか、その手法についてどういう使い分けをしていくかが、コンテンツマーケティングを考えるときの重要なポイントの1つだと馬渕氏はいう。


シニア・バイス・プレシデント&パートナー 馬渕邦美氏

「先日EC業界の方々と話した際、数あるメディアの中で今、彼らが一番注目しているのが動画でした。これは、人間の脳が情報を理解する場合、視覚的な情報はテキスト情報に比べて6万倍早く処理されるといわれていることの影響でしょう(*1)。ただ、動画の訴求効果が高いといっても、制作費がかかるということで二の足を踏んでいる企業が多い。ただ、今後は制作環境も改善され、動画を活用する企業が急激に増加すると思います」(馬渕氏)

日本とアメリカの比較

ここで、海外におけるコンテンツマーケティングの取り組みについてみていきたい。例えばアメリカと日本のコンテンツマーケティングの状況を比べるとアメリカでは活用がかなり進んでいる、と馬渕氏はいう。

「アメリカ企業のおよそ90%はコンテンツマーケティングに取り組んでいます(*2)。日本はアメリカの数年遅れているといわれるので、これからまだまだ伸びしろがあると思います」(馬渕氏)

また、コンテンツマーケティングの目的を比較してみても、両者に違いが出てくる。

日本におけるコンテンツマーケティングの目的がコンバージョンであることに対し、アメリカでは、ブランドアウェアネスの向上に重きをおいている企業が圧倒的であると馬淵氏はいう。

「実はアメリカでも、コンテンツマーケティングの活用が始まった当初は今の日本と同じくコンバージョンを重視していたんです。それを考えると、日本も今後、徐々にアメリカのようにブランドアウェアネス重視になるのではないでしょうか」(馬渕氏)

ブランドジャーナリズムとは

コンテンツマーケティングの話をする際に大事なフレーズがある。“Like a Publisher”、つまり企業自身がパブリッシャーのように振る舞え、ということである。もちろん、企業側がパブリッシャー側になることはないのだが、パブリッシャーのように振る舞い、自分の会社はよい会社だと自分から宣伝するのではなく、客観的にみたときによい会社であるということを伝えていかなければいけない。中立的な立場からの情報によって、消費者のモノへの関心を自然に購入へと導くことが大事であり、これがブランドジャーナリズムという考え方である。

たとえば、ある商品をただ「買ってください」と唱えるのではなく、この商品を購入することは、あなたの人生だけでなく、この世の中にとってすごく意味があることだと訴える。そうすると消費者の印象はだいぶ変わってくるだろう。

「雑誌がよい例ですが、パブリッシャーという立場であれば、自分たちの考えを押し付けるのではなくて、消費者のトレンドであった関心事を捉えて、情報発信をしていく必要がありますね。それと同じように、企業もパブリッシャーのようなマインドをしっかり持つ、ということが大事になっていくと思います」と馬渕氏は語る。

とはいえ、一企業だけではパブリッシャーマインドを持った情報を作り、発信しつづけることは、コスト面においても時間やリソース面においてもなかなか難しく、そこに課題を持っている企業が多い。そのため、海外ではいろいろな企業の人が集まって編集部を作り、ソーシャルリスニングをしながらリアルタイムにコンテンツを作っている例もあるという。そしてその編集機能をまるごと請け負うために立ち上げられたのが、フライシュマン・ヒラードのブランドジャーナリズムセンター(*3)である。

海外のフライシュマン・ヒラードグループが構築したブランドジャーナリズムセンター


「コンテンツをつくるときにコストや時間以上に必要なのは、実は編集力です。やわらかいものから堅いものまで編集できる人が必要なんです。どういうコンテンツを作れば、メディアに取り上げられやすいかが分かっている人たちが編集する、という発想で生まれたのがこのセンターです」(馬渕氏)

コンテンツマーケティングにおけるKPI

最後にコンテンツマーケティングのKPIについて紹介しよう。コンテンツマーケティングの指標をとらえる上で、2つの視点がある。1つはコンテンツごとのパフォーマンスだ。それぞれのペルソナにどういうコンテンツを配信するかを決めた上で、コンテンツがどう見られているのかを数値で確認しながら、コンテンツを入れ替えるというプロセスをつくり、PDCAをまわす必要がある。つまり、どれがよいコンテンツかを随時確認する。

2つ目は、認知、情報収集、比較検討、購入のそれぞれのポイントでKPIを設定し、因数分解をすることである。

「KPIの話をする中でよく質問にあるのがコンテンツマーケティングの費用対効果(ROI)ですが、コンテンツマーケティングは初期段階のROIがよくないことが一般的です。ただし、中長期的にみると、ROIが高くなるといわれています」(馬渕氏)

コンテンツが蓄積されることで、当然検索される機会も多くなり、世の中に出る回数も多くなって、中長期にわたってアクセスされ、スローで効いてくるというのがコンテンツマーケティングの真骨頂といえる。たとえはじめのコンテンツ作成にコストがかかったとしても、リード獲得が進むことで徐々にコストを吸収することができるというのが、コンテンツマーケティングの大きな特長なのである。

TELL YOUR STORY

コンテンツマーケティングを考えている企業に馬渕氏が必ず伝えるフレーズがあるという。それが「TELL YOUR STORY」。 企業には必ずストーリーがあって、そのストーリーの中には消費者やステークホルダーにとって必ず有意義なものがある、ということである。

「企業自身がそのストーリーは何かを発見し、コンテンツにしていくことによって、自社商品やブランドの良さを知ってもらうために、もっと消費者が興味を持ちそうなストーリーを語ってほしいと思います」(馬渕氏)

コンテンツマーケティングにおけるコンテンツ作りには、消費者を知るとともに、自社について知るということが必要だということを認識しなければならないだろう。

注釈:
(*1)Wyzowl 「The Power of Visual Communication」(外部サイト)
(*2)Content Marketing Institute 「B2C CONTENT MARKETING 2017 Benchmarks, Budgets, and Trends—North America」 P6 (外部サイト)
(*3)FH Brand Journalism Center(外部サイト)

プロフィール

フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社  シニア・バイス・プレシデント&パートナー 馬渕 邦美氏

デジタル・マーケティング業界で15年に及ぶトップ・マネージメントを経験。 2012年オグルヴィ・ワン・ジャパン株式会社、ネオ・アット・オグルヴィ株式会社の代表取締役に就任し、グループの再生を成功させた。2016年よりフライシュマン・ヒラードジャパンのデジタルトップをはじめ数社の顧問を務める。『データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」』、『ブロックチェーンの衝撃』(共に日経BP社)監修者。

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