ビジネス創出

無料の公開情報で価値を生む[後編]――目指すは潜在労働力を生かせる社会

記事内容の要約

  • 入札情報をマーケティングや競合調査のために活用している企業も
  • クラウドソーシングの弱点である品質問題は専門組織による厳しいチェック体制でカバー
  • クラウドワーカーによる人力データ収集の横展開によって、さらに広がるビジネスの可能性
  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

この記事の前編を読む

国や全国の地方自治体から発注される官公需入札(以下、入札)の情報を一元化し、検索性や網羅性を付加価値として提供する株式会社うるるの「入札情報速報サービス(NJSS)」。前編では、同サービスが誕生した背景やしくみ、競合に対する強みに焦点を当てた。後編では、ユーザーの利用実態とデータベースとして品質を保持するためのしくみ、そしてNJSSの先にある展望について、同社代表取締役社長の星知也氏と執行役員の渡邉貴彦氏に聞いた。

企業や市場の動向把握にも利用されるNJSS

うるるの「入札情報速報サービス(NJSS)」(*1)は、本来はユーザーである会員企業が自社に適した入札案件を探すためのサービスだ。しかし、入札を企業活動の一つとしてとらえると、他にもさまざまな目的で利用できる。

「NJSSでは弊社でまとめて加工した入札情報自体の販売も行っており、これを購入すると、自社内でのデータ分析が可能です。たとえば、同業他社が参加している入札案件を調べることで、『なるほど、うちと同じビジネスをしているあの会社は、次にこういう事業をやろうとしているのか』という具合に、自社の事業展開のヒントが得られます。また、『この案件を落札した企業に売り込む』といった、営業リストの作成に利用されることもあります。約1割の企業が、マーケティング調査や競合の動向把握など、入札以外の目的で活用しています」(渡邉氏)

販売されている入札分析データレポートの例1「落札金額・件数の月別変動」
分析データのイメージ

※このグラフはサンプル用で実際の数値ではありません。

販売されている入札分析データレポートの例2「1社あたりの落札金額」
分析データのイメージ

※このグラフはサンプル用で実際の数値ではありません。

収集データの品質を保つしくみ

データ提供サービスにおいて正確性や網羅性は重要な要素だ。NJSSでは、人力で情報収集していることで抜け漏れをなくし、競合サービスに対して品質面でのアドバンテージをもっている。

「NJSSでは、全国にいる数多くのクラウドワーカーに情報を収集してもらっていますが、品質を保つための専門組織も社内に設けています。決められたフォーマットで入力できているか、手抜かりなく作業できているかをチェックして、改善が見られないワーカーは切り替えます。一般的にクラウドソーシングでは、人によって品質に差が出ることが課題の1つといわれます。弊社では、単に人力を利用するだけでなく、品質管理まで含めたノウハウを蓄積しています」(渡邉氏)


株式会社うるる 執行役員 渡邉貴彦氏

入札の流通市場における巨大なポテンシャル

現在、NJSSは約2500社が有料で利用している。そして、この市場はまだまだ伸びると星氏は見ている。

「中小企業庁が発行している『平成27年度版 官公需契約の手引』によると、入札で流通する案件は全体で23兆円にものぼるそうです。そして、入札情報検索サービスから、さらに領域を広げていけばもっと拡大できるビジネスだと考えています。ニッチですがニーズは確実にありますし、入札のことを知らない会社もまだまだ存在します。入札の平均案件単価はおよそ2000万円(NJSS調べ)、小さな会社なら1案件が取れるだけで経営に大きなインパクトを与えます。もっと入札というものが注目されてほしいですし、われわれも啓発していかなければならないと考えています」(星氏)

中小企業庁は「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」で、「入札は中小企業のためにある」としている。最近では、スタートアップ企業でも受けやすい小規模の入札案件も増えてきた(NJSS調べ)。入札に関心をもつ企業が増えて市場が大きくなれば、おのずとNJSSのユーザーも増え、派生サービスに対する可能性も広がるだろう。

「現在のわれわれは、入札のプロセスの1つである『入札情報を探せる』という価値を提供していますが、今後は、資格の取得代行や説明会への参加代行など、サービス領域を広げていくつもりです」(星氏)

NJSSで培ったノウハウで働き方の可能性を広げる

NJSSで培った情報提供ビジネスのノウハウは、入札情報提供サービスだけでなく、他の分野への応用も期待できる。「公開はされているが整理・統一されていない情報」や「全国各地にあって現地にいなければ入手できない情報」の一元化などとの相性はよさそうだ。

「入札を助成金に置き換えて、同じような情報サービスができないか、あるいは自治体でのイベントや採用の情報をまとめて求人データベースを作れないかなど、いろいろ検討しています。あとは、収益化が可能かどうか。シュフティ(*2)の会員に活躍してもらうというサービスモデルである以上、適正な報酬を支払えるだけの収益が見込めるものでなければなりません」(星氏)

うるるでは、クラウドワーカーを活用したサービスを「CGS(クラウド・ジェネレイテッド・サービス=クラウドワーカーを活用して生成したサービス)」(*3)と呼んでいる。NJSSもその1つであり、うるる自身もシュフティのヘビーユーザーであるという位置づけだ。クラウドワーカーという仕事のあり方を確立させることは、星氏がうるるを創業した理念にもつながっている。

「日本は専業主婦が多く、潜在的な労働資産になっています。以前は内職くらいしか働く選択肢がありませんでしたが、パソコンやインターネット、スマホの登場によって大きく変化しました。これをうまく広げることで、日本の労働力不足問題の解決につながり、場所や時間に制約されない、新しい働き方の選択肢も生まれます。主婦だけでなく、病気や障害を抱えている方にも恩恵がありますし、地方創生にも貢献できます。そういった社会の実現を目指しており、まずはNJSSがうまくいったことでその可能性を示せたと思います。クラウドワーカーという仕事でも十分生活できる環境を用意すること。それがうるるのミッションです」(星氏)

注釈:
(*1)入札情報速報サービス(NJSS)(外部サイト)
(*2)シュフティ(外部サイト)
(*3)CGS(外部サイト)

プロフィール

株式会社うるる 代表取締役社長 星 知也 氏

1976年生、北海道札幌市出身。高校卒業後に入社した会社でトップセールスの成績を残し、支店立ち上げなどを担当。その後渡豪し、社名の由来となるエアーズロック(現地語で「うるる」)に感動。帰国後に入社した会社で株式会社うるるを社内創業。2006年、MBOで独立し現職。

株式会社うるる 執行役員 渡邉 貴彦 氏

1984年生、静岡県富士市出身。大学卒業後に新卒で求人営業として前職に就職し、3年後の2010年1月にNJSS営業としてうるるに参画。その後、2012年にNJSS事業部 部長に就任。現在は執行役員。

  • はてなブックマーク
  • follow us in feedly

この記事が気に入ったらいいねしよう!

「いいね」してInsight for Dの最新情報をチェック

マルチビッグデータの活用で潜在顧客の発掘から優良顧客の育成まで! Yahoo! JAPANのデータソリューションを詳しく見る

マルチビッグデータの活用で潜在顧客の発掘から優良顧客の育成まで! Yahoo! JAPANのデータソリューションを詳しく見る

Insight for Dの公式Facebookページ、Twitterでも最新情報や取材の様子を発信中。