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【解説】トータルオーディエンス計測

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「トータルオーディエンス計測」とは、媒体やデバイスの種類を問わずに、コンテンツが全体でどの程度視聴されたかを計測する行為や考え方を指す。特に近年では、テレビやネット動画などの各種プラットフォームを統合した視聴計測へのニーズが高まりつつあり、新たな指標の提案としても注目されはじめている。その背景には、視聴環境の多様化と若年層の視聴行動の変化という2つの理由がある。

若年層の視聴行動の変化がもたらした影響

これまでテレビの視聴率は、世帯単位で放送時のリアルタイム視聴のみを計測対象としており、録画機器を使ったタイムシフト視聴(予約した番組を放送終了後に見ること)は対象外だった。しかし録画機器の普及によって、タイムシフト視聴者の増加が無視できない存在になっている。さらに、これまでテレビが中心だった動画コンテンツの視聴環境は、ネット動画サービスやスマートフォンの普及によって、ますます多様化が進んでいる。

以前は、ネット動画は一般ユーザーの投稿やネット向けのコンテンツとして、テレビとは一線を画していた。しかし、ここ数年で定額制ビデオオンデマンド(SVOD:定額制動画配信)サービスが世界的に定着し、テレビと同じコンテンツを配信するケースも増えている。放送局自体も、放送コンテンツを「見逃しサービス」といった形でネットへ積極的に展開している。

このように視聴環境が多様化した要因の1つとなっているのが、若年層(18歳~34歳くらい)の視聴行動の変化である。パソコンやスマートフォンでの動画視聴が当たり前のデジタルネイティブやミレニアル世代にとって、ネット動画やSVODは従来のテレビと区別なく利用されている。

ただ、放送か通信かの区別がなく、同じコンテンツがさまざまな媒体や環境で視聴されるという状況は、マーケティングや広告の観点からすると厄介である。視聴行動が分散していて全体像をとらえきれないため、適切なマーケティング施策や広告の効果測定もできないからだ。そこで、媒体で区切らず、コンテンツそのものの集客力や訴求力、広告効果などを正しく評価できる新しい指標が必要となる。

国内外でトータルオーディエンス計測が推進

テレビ視聴率の調査を行う株式会社ビデオリサーチでは、このような時代背景に合わせて、2016年10月から関東900世帯でリアルタイム視聴率とタイムシフト視聴を含めた総合視聴率の計測に取り組んでいる(*1)。また、それに先立ち2016年8月には、リオデジャネイロオリンピック開会式の視聴者数について、テレビ番組とそのタイムシフト視聴、インターネット関連サイトへの接触をあわせて、「日本全国で推計約4,230万人(のべ人数)が視聴した」という結果を発表している(*2)。

ビデオリサーチのリオ五輪開会式 トータルオーディエンス調査
地上波、BSで放映された開会式のリアルタイム視聴とネット接触、テレビのタイムシフト視聴のトータルオーディエンス測定をもとに約4,230万人という結果が得られた

出典:株式会社ビデオリサーチの発表を元に編集部作成(*2)
※『VR CUBIC』のテレビとインターネットの重複関係から推計

米国では、以前からトータルオーディエンスの重要性を説き、計測に向けた取り組みを行ってきたニールセンが、2017年から広く市場に向けて調査レポートを提供しはじめている(*3)。

ビッグデータ活用で課題解決に向けて模索中

トータルオーディエンス計測の概念は難しいものではないが、従来の視聴率以上に的確な数字を出すことが難しく、実用段階に至るまでには課題がある。ウェブサイトのアクセスデータであれば、ユーザーIDやクッキー、端末IDに紐づけることで、ユーザーごとの行動を把握できる。しかし、テレビとネットをまたがり、視聴デバイスも多様ななかで同じことを実現するには、相応の技術革新が必要となる。

トータルオーディエンス計測に取り組む各社とも、その方法については模索中だ。たとえば、従来の調査パネルに加えて、大規模なユーザーを抱えるネットサービス(たとえばFacebookやTwitterなど)がもつビッグデータを分析し、統計的に算出するといった方法が試されている。

【参考記事】
次の手が見えてくる! エム・データ社TVメタデータ分析[前編]――テレビの特性とは
次の手が見えてくる! エム・データ社TVメタデータ分析[後編]――テレビ×ネットで最適化を実現

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