マーケティング事例

ライオンのオウンドメディア戦略[後編]――データで潜在ニーズをつかむ

記事内容の要約

  • デジタルデータの分析により、アンケートには表れない顧客の行動が表出
  • 顧客の検索傾向を分析することで潜在ターゲット層を発見
  • 売り上げ向上を実証した生活情報メディア「Lidea」のさらなる活用を目指す

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この記事の前編を読む

2014年10月からスタートしたライオンの生活情報メディア「Lidea」は、小売店への提案営業に活用するという目的を構想時から掲げていた。前編では、日々データと格闘しているマーケターだからこそ、消費の既成概念を拭い去る重要性について述べた。後編では、ライオンがLideaを通じてどのように顧客のインサイトを探っているか、オフラインの小売店の営業活動をいかに活性化したかについて、具体的な事例を紹介していく。

市場調査では見えないインサイトもデータを使えば見えてくる

かつてメーカーの市場調査といえば、アンケートやインタビューなどが主流だった。しかしトレンドキーワードの分析ツールやソーシャルリスニングを活用すれば、消費者の検索行動から通常の市場調査では得られないインサイトのヒントを手にすることができる。これに自社商品を生かしたコンテンツをそろえたオウンドメディアが加わると、どうなるのか。

たとえばLideaには、同社の生活情報のスペシャリストである暮らしのマイスターが、洗濯物を洗う前の準備からはじまり、洗って、干して、収納するまでを丁寧に解説した「衣替え」と「虫食い対策」を組み合わせた記事がある。

この記事の閲覧推移を眺めてみると、春と秋に二大ピークがあることが見えた。さらに、この時期には「洗濯」という検索ワードよりも「衣替え」の方が上回っていたり、ソーシャルリスニングを行うと衣替えの悩みが「黄ばみ」や「虫食い」であったり、ということも浮き彫りになってきた。つまり、衣替えの時期に洗濯の需要が高まることが判明したのだ。

ライオン株式会社本社商品展示コーナー(洗剤)

ライオン株式会社本社 商品展示コーナー(洗剤)

しかし、衣替え時期の店頭には、防虫剤売り場の特設はあっても、そこに洗剤は置かれていない。衣替えで片付ける前に服は必ず洗っているはずだ――。

そう考えた同社は営業を介して、小売店に「防虫剤の横に洗剤類も陳列する売り場にすれば、より購買頻度が高まるのではないか」と提案したところ非常に評判が良く、実施した店舗の売り上げを大きく伸ばすことに成功したのだという。

小売店からすると、ライオン製品以外も取り扱っているなかで売り上げを伸ばしたいという事情があり、メーカーサイドから売り場全体で売り上げを伸ばしてくれる顧客視点の提案を待ち望んでいる。南川氏は「当社が洗剤の提案をすることで、売り場全体が活性化することが重要です」と語り、またこれらの実績を背景に「データを活用すれば、売り上げ向上にしっかり貢献することがわかりました。データを多面的に見ることで、きちんと売り上げにつながる気付きを得ることができるのです」と説く。


ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室副主任部員 南川潤子氏

保坂氏も「これまでもさまざまな形で定性的な調査を行ってきましたが、それだけではなかなかお客さまの『本音』が見えにくかったのは事実です。そうしたなかで、Lideaの活用によって幅広く、かつ定量的なデータが的確に捉えられるようになってきたので、仮説立てをバックアップできるようになってきました」と、データから見えるインサイトの価値を説明する。

データを分析することで潜在ターゲット層を発見できる

もうひとつ例を挙げよう。

今、「歯槽膿漏(のうろう)」に悩んでいる若い女性が多いのだという。歯槽膿漏といえば中高年層の悩みと思われがちだが、意外なことに若い女性が気にして情報を探索しているのだ。そこで検証するために調査を行ってみると、「今の若い女性のなかには残業しながらハードに働いている人がいる」ことがわかった。ここから「残業中に間食が進むなど、口内環境が過酷な状況になっている」ことが、歯槽膿漏を検索する人が増えている原因ではないかという仮説が生まれたという。

「歯槽膿漏といえば中高年がメインターゲットですが、実はほかにも着目すべきターゲットが存在した。こうした発見をデータから明らかにできれば、これからのマーケティングのやり方は変わってくると考えています」(保坂氏)

同様に、当初Lideaの主な利用者は30代〜40代の主婦と想定していたが、分野によっては想定外の層も数多く含まれていることがわかり、今後は自社DMPを活用しながら、それぞれの属性に合ったコンテンツを提供していく予定だ。

Lideaコンテンツのさらなる活用を目指す

Lideaをハブに据え、コト軸での提案営業が活発になってきたライオン。今後は、デジタルで得られた仮説について、アンケートで実証したり、店頭で実験してみたりするなどして、仮説検証のスピードを上げながら精度を高めていきたいと考えている。

このようなデータとコンテンツという最強タッグは、小売店にとっても大きな魅力であり、今後小売店と共同でさらなるコンテンツ活用を進めていく可能性もあるという。

また現在同社では、Lideaに会員登録をしているユーザーには月に1〜2回のメールマガジンを発行しているが、今後はもっとOne to Oneに近い形で、顧客に合わせたコンテンツの出し分けをして、より最適なコミュニケーションを図っていきたいとも考えている。

ライオン株式会社東京オフィス前にて保坂氏と南川氏

ライオン株式会社東京オフィス前にて保坂氏と南川氏

「仮説はあくまでも仮説。実際に店舗でお客さまを観察してみると、違うこともあります。データは使い方によっては、いくらでも価値が見いだせる。ただ眠らせているだけではもったいないので、より多角的にデータを見ながら、小売店さんとともに売り場をつくり、実際に効果を上げることを大切にしていきたいです」(南川氏)

オウンドメディアを、顧客に役立つコンテンツだけで終わらせず、そこから得たデータで顧客が持っている課題やニーズを分析し、小売店の売り場提案につなげ、売り上げ向上に貢献する。ライオンの事例は、コンテンツのデータを掛け合わせることで、ビジネスに貢献できるということを見事に証明しているのだ。

プロフィール

ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室長 保坂 政美氏

1986年ライオン株式会社入社。十数年間の営業職経験後、SCM・経営企画・関係会社事業計画・流通政策等のスタッフ部署を歴任、2013年のデジタルコミュニケーション推進室創設と同時に現職。

ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室 副主任部員 南川 潤子氏

1993年ライオン株式会社に入社し、統合システム部へ配属。入社以来、RDBMS(データベース)を使用した社内システムの開発保守に携わる。2014年から現職。

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