マーケティング事例

JINS MEMEがつくる新たな健康の文化[後編]――メガネが推進する働き方改革

記事内容の要約

  • JINS MEMEを使った、人の集中力の度合いを計測した実証実験データから、集中できている時間が年間1人当たり61時間も伸長可能に
  • デジタルマーケティング分野での活用は、より精緻な効果をあげられる可能性を秘める
  • 「個人の幸せ」と「生産性向上」が両立した「働き方改革」を実現させるツールをめざす
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この記事の前編を読む

株式会社ジンズが市場に投入したメガネ型ウエアラブルデバイス「JINS MEME」は、ライフログ系の新たなツールとして話題を呼び、アプリ開発者や人事サービス事業者、さらには心理学者、医療研究者の間での関心も高い。活用の幅も、パーソナルなヘルスケアから企業に向けたものまであるなか、JINS MEMEが取得するセンシングデータの普及によって人の生活はどう変わっていくのだろうか。

ライフスタイルを変えるきっかけをつくる

前編でも触れたように、JINS MEMEで収集できるデータは、「眼の動き」「まばたき」「姿勢」である。また、このデータから基本的にわかることは、「集中力」、「(運転中の)眠気」、「(ランニング中の)姿勢」といった「心」と「体」の状態だ。

このうち、「集中力」がデータとして可視化されるだけでもオフィスワーカーにとって大きな意味があると、株式会社ジンズのJINS MEMEグループ事業開発担当の井上一鷹氏はいう。

「人は、集中力が高いときは脳が活性化し、仕事の生産性が高くなります。その状態がいつ、どのような場面で、どんなふうに起きたかをデータで振り返ることができれば、おのおのが自分のパフォーマンスを最大化するために何をすればいいかがわかってくるのです」


株式会社ジンズ JINS MEMEグループ 事業開発担当 井上一鷹氏

また、心と体の状態を計測したデータは、人がライフスタイルを変えるきっかけをつくると、井上氏は付け加える。

「人は誰しも、自分のライフログに関心があるのではないでしょうか。ですから、集中力や眠気など、自分の脳の活動量に関係するログが取れるなら、毎日のように数値をチェックする可能性が高く、その行為自体がライフスタイルを変えるきっかけにもなります。体重を量るだけでやせるというレコーディングダイエットの考え方と同じです。JINS MEMEによって自分の脳の活動量をチェックする文化が日本に根づいていけば、認知症になりうる可能性にも早期に気づけるようになるのではと考えています」

集中度合いを表示するアプリの画面

「集中」のセンシングで組織の生産性があがる

JINS MEMEによるセンシングデータは、組織の生産性を高める可能性もある。

「現在、政府が“働き方改革”の必要性を訴え、多くの企業がその実践に乗り出しています。しかし、すべての施策が有効であるかは検証が必要だと思います。たとえば、毎週水曜日をノー残業デーにしている会社が多くありますが、JINS MEMEのセンシングデータの集計結果によれば、1週間のなかでオフィスワーカーの集中力(=生産性)が最も高いのは水曜日だということが明らかになっています。そうであれば、水曜日にはできるだけ集中して仕事をしたほうが生産性は上がるはずなのです」(井上氏)

労働時間のうち「深く集中できた時間」の占める割合
月曜日から金曜日の間では、水曜日がもっとも「深く集中できた時間」の割合が高かった。

※縦軸は計測時間のうち、深い集中ができていた時間の割合を示す
(株式会社ジンズ調べ)

実際、JINS MEMEを使ったある実験では、集中力のデータを用いた勤務シフトの調整によって、全体の生産性が上がったという。具体的には26人のエンジニアにJINS MEMEを1週間着用してもらい、どの時間に最も集中できるかを一人ひとり計測。その結果に基づき、各人の勤務シフトを変えたところ、次の週には、それぞれが集中できている時間が15分も伸びたのだ。これを1年に換算すれば「1人当たり61時間分」の集中できている時間の伸長につながった計算になる。

JINS MEMEでマーケティングも変わる

さらにJINS MEMEによるセンシングは、ウェブを利用したデジタルマーケティングのあり方も大きく変える可能性もある。たとえば、ウェブサイトを閲覧している際の集中状態を計測すれば、そのコンテンツや商品に対する興味・関心の度合いがわかる。また視点の動きを解析することで、ページ内でどの情報をどのくらい読んだかをつかむことが可能だという。

こうしたデータと実際のページ遷移や購買など、ユーザーの行動との相関を分析し活用していくことで、より効果的なマーケティングが実現するかもしれないのだ。
 
現状では、ユーザーのページ遷移や購買行動などから類推したおすすめ商品、あるいは一度そのユーザーが買った商品と同種のものをレコメンドするという手法が目立つが、JINS MEMEのセンシングデータは、従来のマーケティング手法に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。

働き方改革と個人の幸せをつなげるデバイスへ

もっとも、そのような将来的なマーケティング展開への可能性はあるものの、同社が目下注力しているのは、現在話題になっている「働き方改革」への貢献だ。働き方改革を進めるためには、会社全体の生産性を高めるとともに、働きがいや個人の幸せについても考える必要がある。そして、そのために重要となるキーワードが「集中」であると井上氏は語った。

「20世紀を代表する心理学者 チクセントミハイ博士によると『人は集中することで幸せを感じる』そうです。個々の集中力が高まれば、会社全体の生産性は向上します。つまり、個人の幸せの追求と会社の生産性向上は、『集中』によって同じ方向性で語ることができるのです。そこで人の集中度合いを数値化し、人事上のKPIとして計測可能にするためのツールとしてJINS MEMEを普及させていきたいと思っています」(井上氏)

今後、JINS MEMEは、国や企業がトップダウンで推進する働き方改革と、そこで働く個々人の欲求・幸せを矛盾なくつなげるキーデバイスとなり得る。その可能性をどこまで追求できるか。JINS MEMEの挑戦ははじまったばかりだ。

プロフィール

株式会社ジンズ JINS MEMEグループ 事業開発担当 井上 一鷹氏

慶応義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームに入社し、大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。2012年にジェイアイエヌに入社。社長室、商品企画部グループマネジャー、R&D室マネジャーを経て、現在はJINS MEMEグループ事業開発を担当。

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