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【解説】デ・ブランディング(Debranding)

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「デ・ブランディング(Debranding)」とは、ブランディングに「分離」などの意味を持つ接頭語「de」を付けたもので、「脱ブランド化」や「非ブランド化」を表す言葉だ。具体的には、企業のブランディング戦略において、ロゴマークから企業名やブランド名を排除して企業色やビジネス色を軽減したり、親ブランドを隠すことで異なるイメージを発信したりすることをさす。デ・ブランディングは海外の企業を中心に、一般消費者向けの商品を展開するBtoCビジネスで主に行われている。

4つに大別されるデ・ブランディングの手法

デ・ブランディングの主な手法としては、以下の4つが挙げられる。

(1)ロゴマークとブランド名を切り離す

ロゴマークの中にデザインされているブランド名を切り離して、ロゴマークとブランド名をはっきりと分けたデザインにすることで、ロゴマークから感じられる企業の印象は薄まる。

この手法の意図としては、企業を前面に押し出すのでなく、ロゴマークから想起される商品やサービスそのものに注目してもらいたいということがある。デザイン上だけでも、企業名を外して独立した存在であるかのように表現することで、消費者により身近に感じてもらうことが期待できる。企業や商品がもともと持つ既存イメージによって効果は左右されそうだが、取り組みとしてのハードルは低いので、多くの企業は参考にしやすいだろう。また、特定の広告などではロゴマークのみを使うことで、後述の(2)のような手法として応用できる。

【具体例】
クレジットカードのマスターカードが2016年に、ブランド名が一体化されたデザインから、ロゴマーク部分とブランド名(ロゴタイプ部分)が切り離されたデザインに変更した。また、ペプシも2008年に、それまでのブランド名と一体化したデザインから、ブランド名を切り離したデザインに変更している。

ロゴマークとブランド名(○△X123)を切り離した例


(2)ロゴマークからブランド名を完全に排除する

ロゴマークからブランド名を切り離すだけでなく、完全に取り去ることで、従来のブランド戦略や旧来のイメージからの脱却を図る。商品から企業色を拭い去ることによって、(1)の場合と同じ理由で消費者に身近さを感じさせたり、ビジネス色を軽減して関心を商品そのものに集中させたりと、その効果や狙いは多岐にわたる。

【具体例】
ナイキが先駆けであり、現在は「スウッシュ(swoosh)」と呼ばれる有名なロゴマークが単体で使われている。また、コカ・コーラが2011年にオーストラリアで始めた「Share a Coke」キャンペーンでは、商品のブランドロゴ部分をさまざまな人名に置き換えたデザインに変えた。これにより、自分と同じ名前のボトルを購入した人の多くが、商品の写真をSNSで拡散したことで大きな反響を生んだ。

ロゴマークからブランド名(○△×123)を外した例


(3)親ブランドをあえて隠す

ロゴマークのデザインに限らず、親企業名をあえて隠したり、控えめにしたりするブランド戦略もデ・ブランディングの1つといえ、従来のイメージから脱して新規性を打ち出したりする際に有効な戦略となる。また、ブランド力のある企業や事業が買収などによって吸収・合併された際、もともと持っていたブランド力を維持して従来の顧客との関係を保つために、あえて親ブランドとなる企業名を隠すケースもこれにあたるだろう。

【具体例】
自動車のブランド「レクサス」は、親ブランドの「トヨタ」を前面には出さないブランディングによって、トヨタがもつ信頼性を土台にしながら新しい高級車のイメージを市場に確立した。また、現在のカネボウ化粧品は、旧カネボウの化粧品事業を切り離して設立された花王の子会社であるが、それぞれのブランドを維持することで異なるターゲット層へのリーチを可能にしている。

親ブランド(abcxo)を隠した例


(4)消費者動向にあわせた非ブランド化(一般化)

ロゴマークからブランド名を排除したり、パッケージ全体を汎用(はんよう)品のようにデザインしたりすることで、非ブランド品を好む消費者に訴求するという手法。商品を訴求するためにブランディングは重要だが、その一方で意識の高い消費者は、内容が同じならブランド品ではなく安い方の商品を好んだり、地元企業の商品を積極的に購入したりする傾向がある。このようなターゲット層に対しては、ブランドを強く押し出すのではなく、汎用品のように見せることにより、企業側は支持を得やすくなる。

【具体例】
2011年にブランド名を排除したロゴマークに変更したコーヒーショップチェーンのスターバックスがこの一例。従来のデザインは、セイレーン(*1)を取り囲む形で「STARBUCKS COFFEE」の文字が配置されていたが、現在はセイレーンのみのデザインとなっている。ブランド名がないことで、消費者にはスターバックスという企業よりもコーヒーショップを意識させることに成功した。また、世界中で洗剤やトイレ用品を製造・販売しているユニリーバでは、洗剤「Cif」の名称をあえて統一せず、各国でなじみのある名称で展開している(日本では「ジフ」)が、これもデ・ブランディングといえる。

消費者に合わせてブランド(○△×123)を汎用的に利用した例


SNS時代のコミュニケーションに応用

デ・ブランディングを活用したマーケティング手法は、基本的にはすでに世間に周知されているブランドや企業であることが前提である。そのため、すべての企業が先に挙げた事例と同じようにしたところで、成功するわけではない。しかし、消費者とのコミュニケーションという観点では、多くの企業にとって参考になる考え方だといえる。

たとえば、SNSを使ったマーケティングでは、企業色やビジネス色を強く押し出し過ぎると消費者に敬遠されてしまうことが多い。SNSでは企業やブランドへの信頼感や共感が重要であり、企業側の都合や主張を訴えるだけでは支持は得られないからだ。企業がマーケティングで利用する場合は、アイコン画像を企業色の少ないものにしたり、アカウント名から企業名を外したり、投稿内容をビジネス色一辺倒でないものにしたりすることで、消費者からの支持を得やすくなる。

デジタル広告については特に嫌悪感を抱く消費者が少なくなく、また、消費者と一対一のコミュニケーションが可能な現在、デ・ブランディングの考え方はマーケティング戦略や企業姿勢の示し方として重要だといえる。

注釈:
(*1)セイレーン
上半身が人間の女性の姿をした、ギリシャ神話に登場する海の怪物。美しい歌声で船人を惑わせたという。
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