マーケティング戦略

いまこそ既存顧客への対策が重要である3つの理由

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小売業にとっての絶対的な危機は、すぐそこまで迫っています。

事実、アメリカの小売業界では、2017年のはじめの3カ月だけで記録的な倒産ラッシュが続いています。14の小売りチェーンが民事再生法の適用を申請しており、これは2016年の年間申請数とほぼ同じです(*1)。

今日、デジタルに生きる消費者の関心を喚起し続けることは、あらゆる企業にとって難易度の高い課題といえます。消費者は当然のことながら、すべてのタッチポイントにおいて簡単・迅速かつストレスのない顧客体験を求めています。もし企業がそのような体験を提供できなければ、消費者にそっぽを向かれてしまうでしょうし、その結果マーケターは苦しい立場におかれるでしょう。

顧客離反の穴を埋めなければいけないという強烈なプレッシャーの下で、マーケターは新規顧客の獲得に投資し続けています。最近のSignalの調査によると、最高マーケティング責任者(CMO)の60%以上が、既存顧客の維持率に満足していないにも関わらず、彼らの75%近くが、既存顧客を呼び戻す対策を考えるよりも新規ユーザーの獲得を優先している、という結果が出ています(*2)。

この傾向は他の調査結果でも見られます。欧米の大手メディアや小売企業の動向をまとめたForbes Insightsによれば、ここ数年、約80%の企業が新規顧客の獲得に関する予算を増やしているのに対し、既存顧客への予算を増やしている企業は約40%にとどまりました。また、新規顧客の獲得に注力している企業に理由を尋ねたところ、84%の企業が自社の顧客戦略について「今までにずっとやってきていることだから」と答えています(*3)。

新規顧客を獲得することは、どのビジネスにおいても明らかに必要なことです。そして新規顧客の獲得は、すぐに結果が出るという点で、投資した予算を正当化するのに役立ちます。しかしながら、コンバージョン率から顧客生涯価値(LTV)を算出することはできません。

では、顧客との長期的な関係とロイヤルティーを構築することができる、意味のあるシームレスな顧客体験とはどのようなものでしょうか。

今日の競合激しい市場において、マーケターは既存顧客向けの戦略を後回しにできるほど余裕はないはずです。ここから、マーケターが既存顧客対策を優先すべき理由を3つ述べたいと思います。

1. 顧客生涯価値を高める道筋が作れる

歴史的に見て企業は、新規顧客を獲得すると自社が保有するメディアやチャネルを用いてさらなる関係性を築こうとします。しかしこのやり方は、アプローチするスピードや、顧客の状況に応じて適切なメッセージを届けるという点において、大きな制限をもたらします。そして、顧客にとっては迷惑でこそあれ、ほとんど価値がないという、ミスマッチで時代遅れなコミュニケーションに終わってしまうことが多いのです。

一方、近年の顧客IDを基にしたソリューションの進化により、永続的な識別子である顧客プロフィールを持つことができるようになったことで、マーケターは自社のデータを広告メディアと紐付けることができ、既存顧客それぞれのライフサイクルに合わせた適切なポイントでリーチすることができるようになりました。

既存顧客が他の商品を見つけたり、購買の意思決定をしたり、また再び購入したりする際に、いつどこでどのようにコミュニケーションをとるべきか戦略的に考えられることにより、顧客との関係性をきちんと維持し、顧客離れを減少させ、顧客生涯価値を高めるような関係へと改善していくことができるでしょう。

2. 投資効果に見合うだけの価値がある

新規獲得した顧客すべてを優良顧客に育てようとすると、多大なコストがかかります。しかし、既存顧客のなかから優良顧客になるポテンシャルが高い顧客を見つけ出し、その顧客に対して価値のあるサービスを提供できれば、通常の5分の1のコストで優良顧客を育てることができます。その結果、自社により高い価値をもたらすことができるのです(*4)。

ある企業に対してロイヤルティーが高い顧客は、より高額な商品を購入する可能性が他の顧客と比べて2倍以上であり、さらに新しい商品やサービスを試す可能性は6倍以上もあるといわれています。このような優良顧客は商品やサービスの価格に対して敏感ではなく、将来にわたってその企業の商品やサービスを使い続ける可能性は、普通の顧客と比べて5倍以上といわれており、毎年の購入額は3倍以上です。さらに、優良顧客は、自分が愛着をもっているその企業について知り合いや同僚に対して推奨する指数が、普通の顧客と比べ4倍であることがわかっています(*5)。

3. 売り上げのリスクを食い止める

企業に対してロイヤルティーをもたらす要素はもはや価格や商品そのものだけではありません。顧客にとって最も重要なのは、適切なタイミングで彼ら自身がほしいものを見つけ、それによって満足できることです。もし希望通りにならないとわかれば、彼らのほうからすぐに関係性を絶ってしまうでしょう。世界的に見ると82%もの顧客が不愉快な体験によって、その企業との取引をやめたと答えています(*6)。

顧客体験は、新しい基準として経済的にも大きく影響するものです。アメリカでは、思い出したくない不愉快な体験をした顧客により、毎年620億ドルもの経済的な損失がでています。これは3年前の3倍以上の規模に及んでいます(*7)。

企業は現在、少なくとも現状維持のために新規顧客を獲得するか、もしくは既存顧客の価値を高めるかの二択を迫られています。もし私がマーケティング担当者なら後者を選ぶでしょう。顧客の40%はお金をどこか他で使いたいという強い意志を示していますし、実際にその余力があることが分かっています。そのほかの25%の顧客もそのような考えに傾きつつあります。やがて企業は、売り上げのリスクが50%も増加する状況に直面することになるでしょう(*8)。そういう意味で企業が顧客離れを減らしつつ、つなぎとめておくことはこれまでになく重要になっています。

2017年、アメリカでの店舗閉店ペースは、すでに2008年の景気後退時を上回っています(*9)。利益に還元することが難しい、新規顧客の獲得にたくさんの時間と予算を投下することがリスクであることは明白です。もしこの形勢を一変させたいのなら、時代遅れの新規獲得戦略ではなく、既存顧客をより価値のある優良顧客にすることに注力するべきでしょう。

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