データ分析

ランキング1位の本当の意味とは?

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テレビや雑誌だけでなく、インターネット上でもよく目にする「ランキング」。多くの人が興味を抱きやすいコンテンツの一つで、これ自体がコンテンツになるだけでなく、企業のマーケティング活動における現状把握や戦略立案にも利用されています。

いわばコンテンツの定番ともいうべきランキングですが、その内容はときに自分自身の予想とは大きく異なる場合もあります。自分の予想と外れていた場合、そのランキングを疑った経験はないでしょうか?

一般的に使われている“多数決”に基づくランキングについて、1位は本当に第1位としてとらえていいのかどうか、ここで改めて考えてみましょう。

ランキングで測るマインドシェア

たとえば炭酸飲料メーカーが、自社ブランドと競合ブランドとのマインドシェアを把握し、営業戦略や広告宣伝に活用する目的で消費者アンケートを実施したとします。この場合、よくある設問が「炭酸飲料といえば、どのブランドを思い浮かべますか。思い浮かんだ順に回答してください」というものです。消費者にブランド名などのヒントを提示せずに思い浮かんだ順に回答してもらう場合(純粋想起)と、複数のブランド名を選択肢として提示して順位付けしてもらう場合(助成想起)の2種類の方法がありますが、その結果から、自社製品やブランドを1番目に思い浮かべてもらえるか、または選んでもらえるかどうかが重要視されます。なぜならば、1番目のポジションを獲得しているならば実際の購入につながりやすい、つまりブランドの収益に直接関わってくると考えられているからです。

しかし、ここに思わぬ落とし穴があります。アンケート結果の収集や集計方法次第では、第1位だけを重要視していると誤った判断につながる場合もあるのです。例を挙げてみていきましょう(*1)。

多数派は必ず1位になる?

ある企業の企画会議で、さまざまな企画案の中からA案、B案、C案の3案に絞られ、最終的にどれか1案を選ぶというケースを想定してみます。この場合、関係者からの支持が多かった案、すなわち「多数派」の意見をもとにどの案が一番よいかを判断することが妥当に思えます。ところが、その場にいた関係者6人の意見が、A案が2人、B案が2人、C案が2人、と3案とも支持者が同数となりました。

そこで決着をつけるために、関係者だけでなく、部署の37人全員で投票を行うことにしました。3案の中で、よりよい案だと思う順番に1位、2位、3位をつけて投票してもらいました。その結果、1位に選んだ案の票数は、A案が17票、B案が11票、C案が9票となりました(図1)。

図1 全社員の1位のみの投票結果(n=37人)


1位票の多数派の意見にもとづく“多数決”では、A案が1位となりました。しかし、実際には全員が2位と3位も記入して投票しています。そのため、2位と3位も集計結果も加えた方が、みんなの意見をより公平に反映したランキングになる、とも考えられます。

そこで2位と3位の票数も含め、改めて集計したところ、意外な事実が浮かび上がりました(図2)。

1位票においては、最多の17票を獲得したA案ですが、実は3位の集計結果においても20票と最多票を獲得していました。つまり、A案は1位とした人が多数派だったのと同時に、3位とした人も多数派だったということがわかります。この集計結果をみると、果たしてA案を1位とするのは、本当に全員の投票結果を反映した結果なのかどうか、疑問が生じます。

さらに、A案とB案のみに着目し、2案の直接対決ではどちらの方が1位と2位への合計投票数が多かったかを集計したところ、A案が17票だったのに対して、B案は20票でした。ふたを開けてみるとA案を上位に推している人数の方が少なかったのです。

図2 全社員の投票結果(n=37人)


このように、1位の獲得票だけで判断するのであれば、最多票のA案が第1位となるのですが、2位と3位の票も考慮すると、A案は必ずしも多数派であるとはいえません。

1位だけで判断するのは間違っている?

3案の中から1案のみを投票する方法であれば、「多数派」のA案を1位とすることは適切に思えます。しかし1位から3位までを順位付けして投票するやり方では、2位と3位の意見も反映した方が情報量の豊かなぶん、より適切なランキングといえそうです。

とはいえ、順位付け回答の1位のみに着目した場合と、2位以降にも着目した場合でランキングが変わるようでは、その後のマーケティングや戦略選定にも支障が出てきます。これについては多くの議論や研究をもとに、さまざまな手段や基準が提案されていますが、代表的な手法の一つに「ボルダ方式(ボルダルール)」があります(*1)。ボルダ方式においては、1位2位3位の得票数ではなく、例えば1位票数を3点、2位票数を2点、3位票数を1点とスコア化し、そのスコアを用いてランキングを作成します。スポーツのリーグ戦において、勝敗数で順位付けせずに、勝者には勝ち点3、引き分けは1点と加重化し、最終的に勝ち点の合計値で順位付けするのと同様の手法です。

前述の企画案の例をボルダ方式に当てはめると図2のようになり、第1位はB案となります。
ここからいえる、ボルダ方式の特長は以下3点です。

  • 1位と3位に票が偏ったA案はランキング第1位にはならない
  • 対B案、対C案といった2案の直接対決では合計点で負けるA案は、ランキング第1位にならない
  • 加重スコアの算出方法や順位付けの基準が理解しやすい

図3 ボルダ方式に当てはめたスコア表


もちろんボルダ方式が絶対唯一の優れた手法というわけではありません。どんな場面で利用するか、どんな判断基準を適切と捉えるかを検討した上で、利用の有無を判断する必要があります。

ランキング情報を見る目を養う

複数の選択肢を対象に順位付けしたランキングは、一定の基準で一意的に羅列されたデータであるため、複雑な解釈を必要とせず、誰にでも理解しやすい情報として重宝されています。一方で、ランキングを作成する方法次第で順位は入れ替わる場合もあるため、1位だけに着目して2位以下の意見をそぎ落としてしまった場合には、その後のマーケティングや戦略選定の判断を見誤る可能性も考えられます。

ランキングを目にしたときは、どんなデータが元になっているのか、またどんな基準で順位化されているのかに着目することで、結果の見え方が変わることを留意しておくべきでしょう。

注釈:
(*1)坂井豊貴『多数決を疑う』(岩波新書 2015)の内容を基に、架空のサンプルを作成

著者プロフィール

佐々木 和生(ササキ カズオ)

2005年ヤフー株式会社入社。ディスプレイ広告の効果測定やマーケットリサーチなどの調査企画設計、データ収集、集計分析に従事。現在、リサーチアナリシス部にて、データ利用環境の整備と拡充、BIツールの活用促進を担当。

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