ビジネス創出

「ボディスコア」がもたらす健康革命[前編]――人を実年齢で判断するな!?

記事内容の要約

  • わずか16項目の身体測定や運動能力の数値の分析で、本当の体の若さがわかる「身体年齢」を算出
  • 10年間で50億円を投じた研究成果の特許技術と13万人の健診データを活用
  • 身体年齢を普及させることで、実年齢によって退職の時期などが決められる世の中の常識を変えたい

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「健康寿命」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは平均寿命とは異なり、健康上の問題がなく日常生活を送れる期間のことだ。自分の体を若く健康に保っておけば健康寿命は延ばせるが、自分の身体がどの程度の年齢に相当するのか調べるのは、実際にはなかなか難しい。

そこで、「身体年齢」という独自の健康指標を算出し、自分の健康がどのような状態にあるのか把握できるサービス「ボディスコア」によって世の中に新しい価値観を提示しようとしているのがヘルスグリッド株式会社だ。同社はヘルスケア分野のビジネスコンテストでも高い評価を受けるなど、その事業に注目が集まっている。

ボディスコア、身体年齢とはいったい何なのか。そして事業の背景と将来的な可能性はどこにあるのか。同社代表取締役社長の車田直昭氏に話を聞いた。

わずか16の測定項目から算出可能なボディスコア

人間は誰でも年をとるが、同じ年齢でも精神面や身体面で個人差があるのは、誰もが実感することだろう。特に身体は、食事や運動習慣に配慮することで老化の進行も穏やかになるため、実年齢よりも若い状態を保っているということは十分にありうる。しかし、明確に「あなたの健康状態は何歳に相当する」と示す指標はほとんどない。

そこでヘルスグリッドが開発したのが、個人ごとに異なる健康状態を“身体年齢”という指標で評価できるサービス「ボディスコア」だ。ボディスコアを利用すると、たとえば「あなたの実年齢は41歳だが、身体年齢は28歳だ」のように今の健康状態を示してくれる。現在ボディスコアは、フィットネスジムを中心に、顧客の健康を促進したい多くの事業者に利用されているそうだ。

身体年齢はどうやって測るのか。仕組みはこうだ。

まず利用者は、16の項目に沿って身体測定を行う。測定項目は体格指数(BMI)、体脂肪率、基礎代謝、血圧といった一般的な健康診断項目だけでなく、胸囲、腹囲、握力、上体起こしといった身体測定の数値や運動能力値も含まれている。この16項目の測定結果をボディスコアの管理画面に入力するとシステムで統合的に分析されて、身体年齢を導き出せるというわけだ。

ボディスコアの16項目

提供:ヘルスグリッド株式会社

ただ、通常の健康診断よりも少ない、わずか16項目の数値から求められた結果である身体年齢に、果たして信ぴょう性はどの程度あるのか。

「ボディスコアで算出する身体年齢は、430項目にも渡る身体検査・測定の結果から解析する技術が元になっています。しかし、毎回430項目を測定するとなると、手間もコストもかかりすぎます。そこで、『脂肪が多いと血糖値が高い可能性が高い』というような、項目間の相関関係に着目しました。複雑な関係性を持つ検査・測定情報の相関関係を洗い出して、測定のたやすさと推定精度のバランスをとったものが、ボディスコアの16項目です。日常的に活用できるよう、特別な器具を必要とせず、簡単に測定できることを優先させました」(車田氏)

ボディスコアの16項目
ボディスコアは「身体組成」「身体寸法」「身体活性」「運動能力」の4つの分野で健康状態を評価し、身体年齢を提供する。たとえば実年齢が41歳であっても、健康状態が良好であれば身体年齢は28歳ということもある。

ボディスコアではわかりやすい評価レポートが提供される

一般的な健康診断では、さまざまな数値が並んだ検査結果を渡されるが、それを見たからといって、即座に健康につながる行動を起こす人は少ないそうだ。たしかに明らかに体調の異変があるときや、「要経過観察/要再検査」などと判定された場合ならともかく、健康な場合は、せいぜい、体重や血圧などの数値の変化を見て、「ちょっと気をつけるか」と思うくらいではないだろうか。

一方、ボディスコアが提供する評価レポートは、グラフなどを多用して測定結果をわかりやすく表示しているので、利用者が前回の検査からの変化に気づきやすく、さらなる健康改善の行動につなげやすいという。

「健康診断の血液検査を見れば『このままだと3年以内に病気になるかもしれない』というところまではわかりますが、今すぐの行動変容にはなかなかつながりづらいのです。その点、ボディスコアは、身体の総合的な健康状態を一目で理解できるので、健康への意識が高まりやすい。さらに評価コメントも添えるので、健康行動を促すきっかけになればと思っています。いま、病気になる可能性があるどうかを知るには血液検査が1番ですが、将来に向けた健康コントロールはボディスコアで、というわけです」(車田氏)

16項目に対する診断コメントとボディスコアシート
ボディスコアは「BMI」「体脂肪率」「基礎代謝」「胸囲」「腹囲」「ヒップ囲」「大腕中間囲」「体温」「心拍数」「最高血圧」「最低血圧」「反応時間」「握力」「閉眼片脚立ち」「イスの座り立ち」「上体起こし」の16項目の測定によって算出され、実年齢を導き出す。16項目の測定結果についてコメントも記載される。

13万人の健診データと研究成果を活用

健康年齢や肉体年齢という考え方は、すでに世の中に広く存在している。たとえば最近の体重・体組成計のほとんどは、体重や体脂肪率とともに健康年齢を表示する機能を備えている。

では、それらとボディスコアで算出される身体年齢の違いはどこにあるのか。

「弊社の身体年齢の算出技術は特許を取得しており、はじき出す結果への信頼性は他社よりも高い、と自信をもっています。弊社の技術は、もともとフィールファインという企業が行っていた研究の成果がもとになっています。フィールファインの研究には、東京大学大学院や北海道大学大学院などの『学』と、三菱総合研究所などの『産』、そして国の三者が組んだ産官学連携プロジェクトとして、10年間で約50億円という多大な研究費が投じられました。そして、そのプロジェクトが解散したときに、研究成果である特許技術や13万人の健診データを縁あって継承したのがヘルスグリッドであり、それらをもとに独自の健康指標を確立したものがボディスコアの身体年齢なのです。ちなみに現在の制度では、後発の企業が似たような技術の特許を取得することは非常に難しく、そこが他社にはまねできない弊社のビジネス的な強みでもあるのです」(車田氏)

「実年齢が基準」という世の中の概念を変える

身体年齢を知ると、自分の健康に興味を持ち、肉体をなるべく若く保とうとする意識が芽生える。これだけでも個人としては大きな効果だが、車田氏は「身体年齢は、世の中の常識や既成概念を大きく変える可能性がある」と考えている。

「身体年齢と実年齢のギャップは、実年齢が高くなるほど個人差が大きくなっていきます。現在、一般的な企業の定年は65歳ですが、そのとき、昔の不摂生がたたって身体年齢がすでに80歳という人もいれば、まだ若々しく身体年齢が50歳程度だという人もいるわけです。しかし今の日本のシステムでは、『65歳になった方は退職してください』と、実年齢で全員一律でバッサリ切ってしまう。これは、個人と企業の両方にとって損失だと思うのです。もし、実年齢中心から身体年齢中心に発想を変えられれば、世の中が変わります。元気な高齢者が活躍できる世界になれば、雇用や定年退職の概念が根本から変わり、人材紹介にも革命が起きるのではないかと考えています」(車田氏)

現在の日本では、何かの行動をする際に、実年齢が判断基準になっていることが多い。たとえば賃貸住宅において「高齢者お断り」とする貸し渋りが問題となっているが、実年齢よりも健康年齢で入居可否を判断すれば問題解決につながり、そうなれば高齢者専用マンションも本当に必要としている方が入居できるようになるかもしれない。

ただ、世の中の概念を変えるには、身体年齢というものをいかに浸透させるかが最重要事項となる。ヘルスグリッドは、今後どのように身体年齢を普及させていこうと考えているのか。後編では、ヘルスグリッドのビジネス展開やマネタイズ、将来展望について聞く。

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プロフィール

ヘルスグリッド株式会社 代表取締役社長 車田 直昭氏

東京大学法学部卒。1983年からの官僚(経産省)、2004年からの企業経営を経て、2017年5月からヘルスグリッド代表取締役社長。特許取得の「生体情報を数値化する技術」をもとにしながら、科学的根拠に基づく“健康情報基盤”を創造し人々の健康とQOLの向上に貢献することをめざす。

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