ビジネス創出

「ボディスコア」がもたらす健康革命[後編]――脱高齢社会をめざせ!

記事内容の要約

  • ボディスコアの評価機能をコアサービスにして、BtoBtoC市場でビジネス展開
  • 自社の強みを追求するためにアプリやウェアラブルを主戦場にしない
  • 国民の身体年齢が若返れば、国や企業の生産性向上や経済的メリットにつながる

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この記事の前編を読む

16の身体測定項目を分析し、身体年齢というわかりやすい指標で健康状態を評価するサービス「ボディスコア」を提供するヘルスグリッド株式会社。同社は、人を年齢で判断するときは「実年齢ではなく身体年齢で」という新しい考えを、世の中に浸透させようしている。

健康診断やヘルスケアの分野において、国や自治体、従来のフィットネス事業者、さらにはスマートフォンアプリやウェアラブルデバイスなど、多くのプレーヤーやビジネス的アプローチがひしめき合うなか、同社はどのようにして「身体年齢」という考え方を世間一般に受け入れてもらい、サービスを普及させるための戦略を描いているのだろうか。

BtoBtoC市場でのサービス展開に注力

ボディスコアは、16項目の身体測定結果をパソコンなどから管理画面に入力すると、診断レポートが生成される。ボディスコアの機能はAPI経由で利用できるようになっており、パートナー企業が自社サービスに組み入れて提供することも可能だ。

身体年齢を測るためのアプリなどを展開すれば多くのユーザーを相手にできそうだが、ヘルスグリッドは、あくまで個人ではなく企業に絞って展開していくという。

「ビジネスモデルは、BtoCではなく、BtoBtoCです。たしかにボディスコアの利用者は個人です。しかしビジネス展開のしやすさを考えると、個人を会員として抱える事業者や自治体と協業する形が効率がよいと判断しました。たとえばフィットネスジムですと、ジムの会員はボディスコアを計測するたびに達成感を得られ、その結果ジムの利用頻度があがることにもなるので、ボディスコア導入のメリットをジム側には感じていただけます」(車田氏)

ボディスコアの入力画面
16項目の測定結果を入力し、ボディスコアを算出する。

提供:ヘルスグリッド株式会社

ニーズにあわせて簡易版やカスタマイズ版も開発

フィットネスジム以外にも、市民の健康意識を高めて医療費負担の縮小につなげたいと考える地方自治体と提携して市民の健康増進施策に寄与したり、高齢者向け事業を展開する企業と組んだりしてボディスコアの体験会を開いたこともあったが、そのような場でも非常に好評だったという。

「特に好評だったのは、企業型確定拠出年金との連携です。人にとって強力なインセンティブとなるのはお金と健康。そこである企業と組んで、身体年齢と実年齢の差に応じて、1歳あたり1000円、企業の拠出金を上乗せするという制度を導入しました。その結果、導入会社の社員は、従来よりもはるかに健康を意識するようになったのです。企業側としても、結果的に負担する社会保険料が減額できたほか、何より人材の健康増進は競争力につながります。同じような観点から、生命保険会社との提携も進めています」(車田氏)


ヘルスグリッド株式会社 代表取締役社長 車田直昭氏

提携先を広げることに加え、ボディスコアよりもさらに目的を絞った簡易測定へのニーズもあったことから、簡易版のサービスも提供している。性別、年齢、身長、へそ囲(男性の場合はヒップ囲、女性の場合は上腕囲の値も)だけで求められる「メタボスコア」や、性別、年齢、握力、反応時間、閉眼片足立ちの値だけで求められる「運動能力スコア」などだ。判定精度は保ちつつも、より少ない測定で済むため、導入ハードルを下げることができるという。

運動能力スコアのレポート
16項目の測定結果を入力し、ボディスコアを算出する。

運動能力スコアでは運動能力年齢が算出される。

注力するのは診断サービスの提供

ITを活用したヘルスケアサービスというと、スマホアプリ、ウェアラブルデバイス、スマートウォッチなどを活用するイメージが強い。しかしヘルスグリッドは、これらのハードの製造へは踏み込まない考えという。その意図について、車田氏はこう説明する。

「スマートデバイスを活用したヘルスケアサービスの市場は、すでに多くの競合がひしめきあっており、最終的には数社しか生き残れない激烈な状況です。弊社は大資本があるわけでもないですし、参入しても勝ち残れるかどうかわかりません。それよりも、少ないリソースのなかでボディスコア診断サービスの強みを生かすためには、協業先企業とともにサービスの展開を図り、お互いに収益を得られるエコシステムを構築するという道を選択するほうが賢明だと考えています」(車田氏)

日本人全体の身体年齢を若返らせる

現在のボディスコアのサービス展開が本格始動したのは2016年。ヘルスグリッドでは、これからさらに協業先を増やし、ボディスコアや身体年齢を根づかせようとしている。

車田氏が、健康や運動というキーワードで期待しているのが、やはり2020年の東京五輪だ。国をあげて健康への意識が高まるであろう2020年に向けて、着実にボディスコアの計測経験者を増やしていきたい考えだ。車田氏はこう語る。

「ボディスコアの計測者は、まだ年間1000人程度ですが、2020年には年間1000万~2000万人まで増やすのが目標です。事業計画とするには大きすぎる数字と思われるかもしれませんが、大手企業や健康保険組合などと組めれば、一気に利用者を広げられる可能性が現実的にありますし、実際に協業の話も多数進んでいます。普及の課題は、一般的な健康診断ではカバーしていない、握力などの運動能力の測定を、どうやって定期的に行えるようにするか――いうなれば、ボディスコアの16項目を健康診断の補完的な測定項目として、いかに定着させるかという点です」

もし、狙い通りに国民的な広がりを見せたなら、その先には何を期待しているのか。

「国民が健康を意識するようになり、身体年齢が若返れば、医療や福祉に費やされている国の負担も兆円単位で節約できるかもしれません。実年齢では高齢社会だとしても、身体年齢では脱高齢化が可能なのです。『○歳以上はお断り』といった年齢による職務要件を見直すことは、貴重な労働力の確保という側面からも、企業の利益と個人の幸福につながるのではないでしょうか。身体年齢の若さが、企業、個人どちらにも経済的なメリットをもたらして、皆がより生き生きと暮らせる社会。そういう世の中に変えていきたいですね」(車田氏)

わかりやすく数値化することが困難だった「健康」を、身体年齢という指標によって可視化したヘルスグリッド。加速する高齢社会のなかで、個々人の健康維持のために、今後さらにその存在感を増していくだろう。

プロフィール

ヘルスグリッド株式会社 代表取締役社長 車田 直昭氏

東京大学法学部卒。1983年からの官僚(経産省)、2004年からの企業経営を経て、2017年5月からヘルスグリッド代表取締役社長。特許取得の「生体情報を数値化する技術」をもとにしながら、科学的根拠に基づく“健康情報基盤”を創造し人々の健康とQOLの向上に貢献することをめざす。

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