ビジネス創出

アプリの不具合は即検知! 開発者を支えるFROSKの「B to D」の取り組み

記事内容の要約

  • アプリサービスを提供する事業者は多いが、どんなに内容のよいアプリであっても、クラッシュ率が高いと評価が低下し、ダウンロードされなくなる
  • FROSK株式会社が展開する「SmartBeat」は、アプリのエラー発生をリアルタイムで開発者に通知し、迅速なトラブルシューティングを可能にするサービス
  • 「SmartBeat」が属する「B to D (Business to Development)」という開発者に向けた領域は、スマホやアプリの進化に伴い、いっそう重要性を増す見込み
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スマートフォンと切っても切れない関係にあるアプリ。日々膨大な数のアプリが公開されているが、アプリを介してサービスを提供する企業にとっては、いかにしてユーザーとの関係性を高めるかが課題となっている。

そのような状況のなか、アプリの品質面から顧客エンゲージメントを高めるため、アプリ開発者に向けて国内唯一となる不具合検知ツールを提供しているのが、FROSK株式会社(*1)だ。同社は、自分たちのビジネスを「B to D(Business-to-Developer)」という概念で捉えている。では、「B to D」とはどのようなものなのか、またその考えは、具体的にどのような形で実現しているのか。同社の代表取締役である中尾憲一氏に話を聞いた。

重要度を増す「品質改善」によるアプリの顧客体験最適化

多くの企業が顧客とのエンゲージメント強化のため、積極的にアプリの開発を進めている。そして1人でも多くのユーザーに利用してもらうため、新規ユーザーの獲得や、アクティブユーザーを増やすための施策に力を入れている。

翻って、ダウンロードされたアプリの品質に関してはどうだろうか。

「アプリの品質は、ユーザーレビューの評価に反映されています」と語るのは、アプリのエラー検知や解析のためのツール「SmartBeat」(*2)を提供するFROSK株式会社 代表取締役社長の中尾憲一氏だ。

「『面白い、楽しい』というポジティブな意見があったとしても、『落ちる、エラーが発生する』、『先に進まない』など、ネガティブなコメントが増えてレビュー欄が荒れてしまうと、残念ですが自然とアプリの評価は下がります」

つまり、いくら魅力的なアプリでも、品質に問題があるとレビューの評価は下がってしまう可能性があり、それがダウンロード数の低下に直結しかねないのだ。

「ある調査では、アプリをダウンロードする際、レビューを参照するユーザーは約70%にのぼり、かつ、評価レベルが1や2のアプリにいたっては約90%のユーザーがダウンロードしないと回答しています」(中尾氏)

さらに、アプリの品質は「利用継続率」にも影響する。FROSKの調査によれば、アプリのクラッシュを経験したユーザーは、そうでないユーザーに比べて継続して利用する割合が低く、30日後には、両者の利用率には約10ポイントの開きが発生するという。

アプリ導入30日後の状況を見ると、クラッシュを経験したユーザーは、そうでないユーザーよりも継続率が10ポイント低い。

提供:FROSK株式会社

このように、新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの継続維持の両面において、アプリの品質は重要な要素となっている。アプリの品質を改善してクラッシュを減らしていくことは、開発者だけでなく、アプリを提供する事業者全体で考えなければならない課題なのである。

クラッシュ検知からアプリの品質を支えるSmartBeat

そこでFROSKが2014年から提供しているのが、アプリのエラー検知や解析を行うためのツールであるSmartBeatだ。SDK(ソフトウェア開発キット)(*3)としてアプリに組み込むだけで利用できるという簡便さとエラー検知精度の高さなどが評価されて、2017年5月時点で、導入しているアプリは1500以上にのぼり、それらの月間アクティブユーザー数は1.5億人以上、1日あたりのエラー検出数は1000万件以上になる。

アプリの継続的な機能拡張を担うツールを「攻め」とするなら、アプリの信頼性・安定性を高めるSmartBeatは「守り」を担うツールといえるだろう。

「現在、導入先のアプリは、ゲーム系が多いです。ゲームはプログラムが複雑で、また、課金や広告によるマネタイズなど、アプリ内でビジネスモデルが成立しているケースが多い。そのため、事業者側も品質問題に対する意識が高い傾向があるようです。ただ最近は、非ゲーム系においても、アプリの品質問題に対する重要性の理解が高まり、大手企業を中心に導入企業が増えてきています」(中尾氏)


FROSK株式会社代表取締役 中尾憲一氏

開発者やアプリ事業者にとっては、デバイスやOSのバージョンが多様化しているのも悩みのタネだ。中尾氏は「特にAndroidデバイスはバリエーションが細分化しており、利用者数が多い上位20種類の端末のシェア率を合計しても、国内で利用されているAndroid端末の40%にも満たないのです。つまり、それだけ、動作検証しなければならないデバイス、OSの数があるということなのです」と述べた。

国内で利用されているAndroid端末上位20種類
国内で利用されているAndroid端末トップシェアの機種でも2.9%であり、上位20機種のシェアを合計しても36.8%と、40%に満たない。

提供:FROSK株式会社

検証対象のOS、デバイスは膨大な数にのぼり、それらすべてを動作検証して、前もって不具合を解消するのは不可能に近い。そこでローンチ後に、アプリを利用するユーザーの手元で起きているトラブルを素早く検知し、影響範囲の大きいものから優先的に解消していくのが現実的な対応ということになる。

そこで有効なのがSmartBeatだ。これは利用中のアプリがクラッシュしたら、その情報をリアルタイムでアプリ開発者に通知するのが大きな特長だ。たとえば、エラーが発生した場合には、その画面情報を開発者に自動送信する機能を備えており、これにより、開発者はコンソール画面を確認して「どの画面で何をしたら落ちたか」を再現し、原因を探ることができるのだ。

アプリがクラッシュすると、SmartBeatのコンソール画面を通して、開発者はリアルタイムでクラッシュした状況などを把握できる。

提供:FROSK株式会社

またクラッシュというのは、1件だけ偶発的に発生するのではなく、複数のクラッシュが同時多発的に起きることがほとんどだが、SmartBeatは、同じ原因で起きているエラーをグルーピングし、発生頻度、影響範囲が大きい順に並びかえてくれる。

「原因がわかっても、エラーが大量に起きていたら、開発者はどこを優先的に解決すべきかわからない。その場合でもSmartBeatを利用していれば、コンソール画面から、解消すべき不具合の種別や優先順位が正しく判断できます」(中尾氏)

継続的な品質改善がアプリのキモ

もう1つ、SmartBeatの大きな特長は、「クラッシュ率」が可視化できる点だ。

「単なるクラッシュの発生頻度だけではなく、自社のアプリユーザーのうち、どれくらいがクラッシュの影響を受けているのか、コンソール画面から確認できます」(中尾氏)

クラッシュ率とは、アクティブユーザー数に占める、クラッシュを経験したユーザー数の割合だ。「平均的な数値として、ゲーム系アプリでクラッシュ率は3〜4%、非ゲーム系では0.5〜1%が指標となります」(中尾氏)

こうした指標をもとに、業界平均と比べて自社アプリのクラッシュ率が高いか低いかを判断できるので、適切な改善につなげていくことができる。たとえばクラッシュ率が平均を上回っていたときは、すぐに問題点を修正し、再度アップデートを行う。これにより、不具合を大きくしないような運用が可能となるわけだ。

また、マーケティング、カスタマーサポート側の取り組みとしては、クラッシュの影響によってユーザーが離脱することがないように、リテンション施策に活用できる。

「SmartBeatのコンソール画面では、クラッシュ情報と、アプリユーザーの情報が紐づけられるため、ユーザーから問い合わせがあったときに、どういう現象か、どこで起きているかをすぐに確認できます。これにより、不具合修正を迅速に通知できます。さらにおわびとして、ゲームであれば『アイテム』をプレゼントするなど、事後のきめ細かな対応が可能になるのです」

クラッシュ情報とアプリユーザーの情報がコンソール画面に表示され、クラッシュの影響を受けたユーザーの確認が可能。それ以外にも多くの機能が盛り込まれている。

提供:FROSK株式会社

このように、開発者だけでなく、マーケティング、カスタマーサポート、あるいはプロジェクトマネジャーなど、アプリに関わる関係部門全員が情報を可視化、共有でき、データに基づいてKPIを定め、品質面からアプリ運用のPDCAを回していくことが可能になるのだ。

BtoDにより、開発者を支援し、アプリビジネスの発展を支えていく

中尾氏は、B to Dを領域とした、スマホアプリ向けの開発、支援ツール、企画、開発、運営を手がける企業として、2012年にFROSKを創業した。ところで、あまり聞き慣れない「B to D」という分野に着目したのは、どのような理由があったのだろうか。中尾氏はこう語る。

「創業前に、アメリカで開発されたプッシュ通知機能をASPとして日本で展開したいという相談にのったことがありました。プッシュ通知というのは、開発側にとって有用なのはもちろんのこと、リリース後に、ユーザーとのコミュニケーションやマーケティングに利用できる。私も実際にそのツールを使ってみたのですが、アプリ開発者にとって、実にかゆいところに手が届く便利なものでした。プッシュ通知はあくまでも一例ですが、このように、開発者のビジネスを支えていくのがB to Dの領域です。当時、アメリカではスマートフォンが普及し始め、アプリ開発者向けのサービス、つまりB to Dへの投資が増えていました。そのような背景もあって、この分野はきっと今後伸びていくに違いないと注目していました」

こうした中尾氏の予想通り、その後、B to Dのツールは事業者の統廃合を繰り返しながらも増え続けており、いまや広告配信機能やクラッシュ解析、プッシュ通知などさまざまな機能を持つ、500以上のツールが国内外で存在するという。

現時点では「クラッシュ検知によるアプリの品質改善」という機能に特化したサービスを提供するFROSKだが、さらなるスマホやアプリの進化を受け、今後、どのような方向に進んでいこうとしているのだろうか。

「B to Dの領域では、さまざまな機能を統合したツールが増えていますが、あくまでも私たちはアプリの『品質改善』に貢献するサービスとして、強みや特長を伸ばしていきたいと思っています」(中尾氏)

中尾氏は、その理由についてこう話す。

「品質改善の分野は、デバイスの増加やOSのアップデートのたびに細かな対応が必要です。もちろん、開発者が自分でやろうと思えばできなくはないですが、そのような部分にリソースを割くのはもったいないと思います。品質改善の部分は、われわれのような専業にまかせて、開発者には本来のコンテンツ開発に専念してもらいたい。同じエンジニアとして、私は強くそう思っていますし、それがB to Dビジネスを進める私のモチベーションなのです」(中尾氏)

いまやビジネスに不可欠の存在となったアプリ。その品質向上のため、そして開発者を支えるオンリーワンの企業として、潔く王道を進むFROSKの存在は、今後一層大きなものになっていくことだろう。

注釈:
(*1)FROSK株式会社(外部サイト)
(*2)SmartBeat(外部サイト)
(*3)アプリケーションを作成するためにソフトウェア技術者が使用する開発ツールのセット

プロフィール

FROSK株式会社代表取締役 中尾 憲一氏

ソニー株式会社にて、スマートフォン携帯電話のソフトウェア開発に従事。3G端末の立ち上げ、海外向け携帯端末の開発などを行う。米国留学を経て、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。中国でのスマートフォン事業の立ち上げに参画。2012年8月、FROSK株式会社を創業。

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